ひもろぎ逍遥

lunabura.exblog.jp ブログトップ

大嶽神社(5)ウケモチの神から五穀と蚕が生まれた・ハイヌウェレ神話と日本の神話


大嶽神社(5)

ウケモチの神から五穀と蚕が生まれた
ハイヌウェレ神話と日本の神話


さて、今日は最後の祭神、「保食神」です。「うけもちの神」と読みます。
字から分かるように食べ物の神さまです。日本書紀に出て来るので訳してみます。
天照大神が天上にあって、言いました。
葦原の中つ国保食(うけもち)の神がいると聞いています。
そなた、月夜見尊(つくよみのみこと)、行って見て来なさい。」と。
月夜見尊は命令を受けて降りました。そして保食神の所に行きました。

保食神は首を回して国土を見ると口からを出しました。
又、海を見ると、のひれの大きいもの、小さいものを口から出しました。
又、山を見ると、毛の荒い動物、柔らかい動物を口から出しました。
その各種の物を全部揃えて、沢山の机に並べて饗応しました。

この時、月夜見尊は顔色を変えて怒って言いました。
「けがわらしい。いやしい。どうして、口から吐き出したものを、
あえて私に食べさせようとするのか。」
と言って、即座に剣を抜いて、殺してしまいました。
それから天上に戻って、詳しくその状況を話しました。

すると、天照大神は大変怒って、
「お前は何と悪い神だ。もう会わない。」と言いました。
そこで月夜見尊と、一日一夜隔てて離れて住むようになりました。

この後、天照大神はまた天の熊人(くまひと)を遣わして、
どうなっているか見に行かせました。この時には保食神はすでに死んでいました。
すると、その神の頭頂からは牛と馬が生れていました。
額からは(あわ)がなっていました。眉の上には(かいこ)が生まれていました。
眼の中には(ひえ)が生まれていました。腹の中にはが生まれていました。
陰部からは麦と大豆や小豆が生まれていました。

天の熊人はこれを全部持ち帰って、献上しました。
天照大神は喜んで、
「これはこの世の青人草(人間―青い目の人とも言う)が食べて生きるものです。」
と言って、粟(あわ)稗(ひえ)麦豆を畑の種子としました。
また稲は水田の種子としました。
また天の邑君(むらきみー農民の長)を定めました。
そこで、その稲種を初めて天の狭田(さなだ)や長田に植えました。
その秋に実った穂は大変長く垂れて、豊作でした。
また口の中に蚕を含んで絹糸を引き出すことが出来るようになりました。
これから初めて養蚕が始まりました。

ウケモチの神を訪ねた月読尊(つくよみのみこと)は、
その神の口から食べ物が出て来るのを見て、殺してしまいました。
その為にアマテラスと絶交状態になります。
これが太陽と月が一緒に空にいられない理由となっています。
いかにも神話らしいですね。

ところが思いがけない事に、ウケモチの神の死体から五穀の種と蚕が生まれました。
これが倭人に豊かな作物を与えてくれました。
この話は一見残酷な話のようですが、
殺された神や女神から食物が生れるパターンの神話は
ハイヌウェレ伝説といって、東南アジアなど各地の神話に見られるものです。
作物は国によって違います。
インドネシアでは身体をバラバラに土に埋めると、タロイモが生まれて来ます。
なんだか、縄文土偶がバラバラに壊されて埋められる話を連想しませんか?
次の写真は三内丸山遺跡(縄文時代)の出土状況です。
c0222861_152184.jpg

(写真提供:青森県教育庁文化課)
土偶がわざわざ壊されてあちこちに埋められているのは、
この保食神やオオゲツヒメの神話で説明できるのではと思いました。

対応していた朝鮮語
驚いたのは、岩波文庫の訳注に朝鮮語の事が書いてあった事です。
この保食神の神話が朝鮮語で読み解かれるというのです。
岩波文庫の訳注を写します。
牛馬・粟・蚕・稗・稲・麦・大豆・小豆が生るとあるが、
これらの生る場所と生る物との間には、朝鮮語ではじめて解ける対応がある。
以下、朝鮮語をローマ字で書くと、(aは逆様のaですが、aで書きます。)

頭(mara) と    馬(mar)
顱(cha)  と    粟(cho)
眼(nun)  と    稗(nui白米に混じった稗類)
腹(pai古形はpari)と稲(pyo)
女陰(poti) と    小豆(pat)

これは古事記の場合には認められない点で、書紀の編者の中に、朝鮮語の分かる人がいて、人体の場所と生る物とを結びつけたものと思われる。
(金沢庄三郎・田蒙秀氏の研究)

なるほど。すごい研究ですね。
(韓国語は一日で挫折したルナです。その重要性は分かるんだけど…。
それはさておき)
日本書紀の編者に朝鮮語が分かる人がいるのは当然じゃないかな。
当時、仏教も寺院も仏像も壁画も全部朝鮮半島経由ですもん。

日本書紀を開いて驚いたのは、百済・新羅・高句麗の人たちが
あちこちに登場する事。ひょいひょいと玄海の荒海を越えて、
行ったり来たりしている。
だから『日本書紀』という歴史本を中国語(漢文)で書こうとする時も、
正史の書き方、中国風の年代の計算なんかは、
中国や百済の人たちなんかから習いながら書いたんだろうなと思います。
古代日本って、今より国際的みたい。

話を戻しましょう。まとめです。
このウケモチの神の神話は、モチーフは南方から、
こまかい作物の対応は北から来たのが分かりました。

古事記にも似たのがあるけど
あれ?もう一つ気になるのは、古事記に出てくるオオゲツヒメ
同じような話だけど…。混乱しそう。
こっちも訳してみよう。
高天原から追放されたスサノオの命は食べ物をオオゲツヒメに乞いました。
すると、オオゲツヒメは鼻や口や尻からいろんな食べ物を取り出して、
いろいろと料理を作りそろえて献上しましたが、
スサノオの命はその様子を覗き見して、汚らわしいものを献上すると思って、
即座にオオゲツヒメを殺しました。
こうして、殺された神の体からは、頭から蚕が生じ、両目からは稲の種が生じ、
両耳からは粟が生じ、鼻からは小豆が、
陰部からは麦が、尻からは大豆が生じました。
これを見て、カミムスビノミオヤの命はこれを取らせて種としました。
やっぱり同じモチーフの話でした。
殺されたオオゲツヒメからも食べ物が生れるのですが、
眞鍋大覚氏はその語源を大月氏胡語に見つけていました。
大月氏(だいげっし)って聞いた事あるけど、どうなってるの?
月氏
秦・漢の時代、中央アジアに拠ったイラン系またはトルコ系の民族。
前漢の初め、甘粛省敦煌地方から匈奴に追われてイリ地方に、
紀元前2世紀ごろ、さらに烏孫に追われてアム河畔に移り、
大夏を征服して一大国家を建てた。
紀元前1世紀の中葉、その諸侯の一人によって滅ぼされた。
匈奴に追われて西走したものを大月氏、故地に残留したものを小月氏という。
(広辞苑)

前漢の初めって、紀元前3~4世紀?
あの敦煌壁画のある辺りにいた民族が追われ追われて移動したんだ。
その人たちの使った言葉の一部が古代日本にも伝わって残っていたとは。

今回は保食神やオオゲツヒメという古い神話のルーツを見て来ましたが、
東南アジアからやって来たモチーフに、
遠くは中近東から、近くは朝鮮からの言葉が重なって、
新たな日本神話が形成されたのが分かりました。

古代の日本では、春分の日に五穀豊穣の神・オオゲツヒメを祀ったそうです。
ですから、この大嶽神社ウケモチのカミもかつては
春分の日には作物の神さまとして、
シナツヒコと共に盛大に祀られたかも知れません。

ウケモチノカミウカノミタマの神とも同一視されています。
ウカノミタマはお稲荷さんと呼ばれて人々の暮らしに密着しています。
それで、この神社は古代祭祀と稲荷信仰が融合したように見えるのですね。
c0222861_15263964.jpg

これで一件落着と思ったのですが、二日後に、人から預かった書類の束に
とんでもないメモが紛れ込んでいました。
朝鮮古代語研究家 I先生
イナリ=稲荷とは鉄器保管庫(兵器)の司をして農民に農機具として貸し与え、
使用が済んだら又保管していた所。
使用者(農民)はそのお礼に農作物(米、麦…)を差し出していた。
それで稲荷となった。つまり兵糧(代金)米である。

うっ。また古代鉄。そうか、古代は貴重品だからレンタルだったんだ。
これで多くの謎が解ける!ここの稲荷も、鉄器が置かれていた?
実は近くの名島神社には、そんな伝承の小島があるのです。
戦後の鉄不足の時代、みんなそこに拾いに行ったそうです。

あちこちに散在する鉄の伝承。
ルナの頭の中には少しづつ古代の地図が出来て来たのですが、
記事にするには力不足です。
でも、今日コメントで面白い情報貰ったから、また頑張ります。

ブログ「徒然なるままに、、、」さんに、
その鉄器と農具が埋納状態のまま出土した写真が掲載されているので、
紹介します。

  だれも埋葬されていない古墳
http://jumgon.exblog.jp/14827713/
 





気が向いたら、ポチっと応援してくださいね。
にほんブログ村 歴史ブログ 史跡・神社仏閣へ
にほんブログ村
c0222861_15184581.gif


[PR]
by lunabura | 2010-10-16 15:41 | 大嶽神社・おおたけ・福岡市 | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : http://lunabura.exblog.jp/tb/15336975
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by jumgon at 2010-10-24 19:41
イナリ=稲荷とは鉄器保管庫(兵器)、この説はとても新鮮です。関西の稲荷神社、これから鉄器と関連があるか注意してみて生きます。
Commented by lunabura at 2010-10-24 22:35
これは、私も目からウロコでした。私も古い稲荷神社を見たら、気をつけてみようと思っています。
line

綾杉るなのブログ 神社伝承を求めてぶらぶら歩き 『神功皇后伝承を歩く』『ガイアの森』   Since2009.10.25


by lunabura
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー