2011年 01月 12日
外国のオオカミ導入計画を知っていますか?
外国のオオカミ導入計画を
知っていますか?
狼はイノシシやシカだけを食べてくれるだろうか。
そんな素朴な疑問に誰が答えてくれるのだろうか。
「害獣を駆除するためにオオカミを山に放つ計画」が進められています。
まずは2011年1月の西日本新聞から。
オオカミ構想に熱視線
豊後大野市の害獣駆除策
害獣による農作物被害に悩む大分県豊後大野市が、対策として提唱する「オオカミ導入構想」が全国に広がりを見せている。同じ状況に置かれた地方自治体による連絡組織をつくる動きが出ているほか、国政の場でも勉強会が始まった。生態系に及ぶ影響や安全性など多くの課題が指摘されているものの、決め手となる害獣駆除策がない中で「オオカミ」論議が熱を帯びている。
山に囲まれた豊後大野市はシカやイノシシ、サルによって、食い荒らされる樹木や農作物の被害額が年間約3000万円に上る。募る被害にたまりかね、海外のオオカミを導入して山野に放つ計画を進めており、来年度予算でオオカミ研究者らによるプロジェクトチームの設置費を計上。その後「オオカミ研究センター」を開設して研究する方針を10月に打ち出した。
同市の「オオカミ構想」が明らかになると、市には長野、三重両県の市町から「一緒に研究を」と申し出があった。ほかにも四国などからも問い合わせがあるという。
反響の大きさを受けて、「日本オオカミ協会」(会長=丸山直樹東京農工大名誉教授)は、同市など全国数カ所に「研究センター」を設置し、データを共有する協議会設置を全国の自治体に呼び掛けた。10前後の自治体から打診があるという。
波紋は国政にも広がっている。11月にツルネン・マルティ参院議員(民主)が呼び掛け人となり、川口順子元環境相(自民)や江藤征士郎衆院議員(同)ら、超党派の国会議員が名を連ねる「オオカミを復活させる勉強会」を発足。日本オオカミ協会の会員を講師に、絶滅したニホンオオカミや、害獣駆除のためのオオカミを導入した欧米の実践例の説明を受けた。
豊後大野市によると、オオカミ構想に対して地元では賛同の声が大半という。橋本祐輔市長は「今後は賛同する自治体と連携して、オオカミ導入に向けて取り組みたい」と話している。
以上、新聞記事をそのまま書き写しました。
私自身、大分県の豊後大野市の近くのなずな農場で、昼、イノシシが数頭、走っていくのを見たことがあります。「もののけ姫」のアニメそのままに、突進するスピードに驚きました。
また熊本県の阿蘇の畑の大根がサルの被害を受けたのを見ました。200坪一面の大根を一本ずつ引き抜いて、一口かじっては捨てていました。商品価値ゼロです。
このような被害を実際に見ていますが、それがオオカミ導入に発展しているのを知って驚いています。
山に放つのは輸入オオカミであって、ニホンオオカミではありません。生態系の問題はどうなっているのでしょうか。
有名な生態系の破壊として、マングースとハブの例があります。ハブを絶滅させるためにマングースを導入したら、絶滅危惧種の卵や子供を食べてしまったという、残念な話です。そんな問題を素通りして、計画を進めるのは残念です。
こんな疑問が生まれました。
オオカミはイノシシと鹿と猿だけを食べてくれるだろうか。
オオカミは豊後大野市だけで仕事をしてくれるだろうか。
豊後大野市にいる害獣の個体数はいくつで、オオカミ導入後はいくつになるか、
きちんと数字が出ているのだろうか。
人間の希望通りにイノシシと鹿だけを食べてくれたとして、
オオカミが増えて新たな生態系が出来た時には、
オオカミの個体数もかなり増えているのだろうが、オオカミは群れにならないのだろうか。
野犬より安全だろうか。
山道でオオカミに会ったらどうしたらいいのか?
大分県は登山のメッカです。
オオカミは観光客の与える餌を食べないだろうか?ゴミをあさらないだろうか。
イノシシもシカもサルも人間の食べ物の味をしめて、人間を襲うようになっています。
熊でさえも、人間の家の中に入って食べ物を求めています。
オオカミは子供や犬猫のペットを絶対襲わない保障があるのだろうか。
家畜は襲われたデータがあるようです。
農業被害を抑えるために、家畜農家の被害への配慮は無し?
オオカミは鳥インフルエンザで死んだ鳥に決して近づかないだろうか。
口蹄疫で進入禁止エリアが出来た時、決して侵入しないだろうか。
こんな素人の疑問にも、きちんと答えを出してほしいと思います。
また、全国の人が知らない内に輸入オオカミが放たれる事のないように願います。
外来種の導入はよくよく慎重にしてほしいものです。
続きはコチラです。
「輸入オオカミ」記事へのコメントをいただきました。2011年1月18日
http://lunabura.exblog.jp/15785599/
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その解決方法として外来のオオカミを使う事を考えてたとは知りませんでした。
反省もなく同じことを繰り返すんですね。
例えこれがうまくいったとしても賛成はできません・・・
勿論我々より学識豊かな先生方が、検討されるのでしょう。
でも、心配ですね。だって、こんどはオオカミがお腹をすかせて、人家にやってくるのではないでしょうか?
おちおち、登山やハイキングにも行けませんね。
オオカミの専門家ではありませんが、学生時代からオオカミ関連書籍をいくつか読んできました。少ない知識ではありますが、わかる限り、疑問の答えを挙げさせていただきます。
まず、導入する「輸入オオカミ」ですが、これはハイイロオオカミという種類です。たいていは2頭から数頭の群れで行動しますが、1頭の場合もあります。ニホンオオカミは残念ながら、明治時代に絶滅してしまったため、もう地球上には存在しません。しかし、ニホンオオカミはもともとハイイロオオカミの亜種なので、ハイイロオオカミが日本に根付けば、ニホンオオカミに近い形になる可能性があります。
家畜被害に関しては、放牧していなければ被害はほとんどありません。また、きちんと被害補償の検討がなされていますのでご安心ください。
私が応えられるのはこの程度ですが、不明な点は専門家に伺われてはいかがでしょう?疑問がハッキリしていらっしゃるので、専門家の方も回答のしがいがあると思いますよ。
長々と失礼いたしました。
きちんとした説明が伺えて嬉しいです。
ニホンオオカミ協会のHPを見ても、生態などが分かりませんでした。
これで、自分なりに考えることができます。
よかったら、コメントではもったいないので、記事の方にUPしたいと思います。よろしくお願いします。 (^-^)
「九州の山は杉の植林ばかりなので、まず植物相を豊かにする事から始め
ないと、どんな動物も山から下りて来ると思います」というところに一言。
植物層を豊かにしようとして広葉樹の苗を植林しても今の状態ではシカが
片端から平らげてしまうのが現状です。
生態系或いは生物の多様性というのは固有の種や個々の動植物のことだけを
考えていても発展的な解決は得られないのではないでしょうか?
森林の改造を行うのであればシカの食害への対処もセットで考えないと
片手落ちに終わるのではないかと懸念されます。
しかしサアサさんの仰るとおり同じ種のハイイロオオカは世界中に生きて
いて、現在各国が保護に力をいれています。
人や家畜が襲われるとすれば、それは不用意に人間の側から接触を試みた
結果ということになると思います。
考えても見てください。たった百年前まで私達日本人はオオカミと共存して
きたのです。しかも「大神(大口眞神)」とまで奉ってきたのです。
その頃と今とでは環境が違うと仰る方も居られるかもしれませんが、そう
いうことだけ言っておいて有効な代替策が出てこないというのは如何なこと
なのでしょうね。
未だ広範囲には発表されていないかもしれませんが、本年の5月1日から15日
まで「大口真神(オオカミ)式年大祭」が開催されるそうです。
一部の情報によると1月7日付けの毎日jpに記事掲載されたらしいのですが、
先程確認したところ既に消えていました。
日本の古来種のニホンオオカミが失われたのは本当に残念な事です。
武蔵御嶽神社では神さまのお使いだったんですね。このような大祭を通して、野生の動物の環境を守る大切さについて、語りあうきっかけとなったらいいなと思います。
武蔵御岳神社の起源を見てびっくり。武渟川別尊が初めて大己貴とスクナヒコナを祀ったとは。
ちょうど、この記事の前後で、武渟川別尊が福岡の黒男神社の近くに来た事をUPしたばかりなんです。彼は日本中動いてるんですね!
大口真神式年祭も今回が初めての公示とは。タイミングがすごいですよね。
サアサさんがほぼ回答し尽くしていたと思っていたのですが、次の点に補足
します。
>オオカミの個体数もかなり増えているのだろうが、オオカミは群れにならない
のだろうか。
>野犬より安全だろうか。
>山道でオオカミに会ったらどうしたらいいのか?
サアサさんもオオカミは「たいていは2頭から数頭の群れで行動しますが、1頭の
場合もあります。」と仰っていますが、オオカミは元々社会的動物です。
パックと呼ばれる群れを形成しますが、これは主に親類縁者の集まりです。
成熟したオスはその群れを離れます。これがサアサさんの仰る1頭の場合で俗に
一匹狼などといわれます。新しい自分のパックを作るために放浪するのですね。
これはテリトリーを守るための知恵なんです。パックの仲間が増えすぎてしまえば
分け前が減るし、近親交配が進んでしまいます。
そう、オオカミそのものなんです。
オオカミは自分のパックの権益をまもるためには一丸となって闘うのです。
獲物が減ってくれば生きていくためにテリトリーを広げなくてはなりません。
そうなるとパック同士の鬩ぎ合いも激化して、弱いパックは追い払われることに
なります。
従ってオオカミばかりが増殖するということはあり得ないと思います。
犬は人は人を恐れないので不用意に近づいてきます。家畜にも同様に近づいてき
ます。 そして被害を出します。
数年前に道北の畜産試験場を訪ねた事がありましたが、そこで聞かされた話では
野犬が徒党を組んでヒツジを追い回し狩りだけのための狩り、食欲を満たすのでは
なくゲーム感覚で殺戮を行うそうです。
一旦人に慣れた犬は、逆に人を馬鹿にもします。それがこのような虐殺劇を呼ぶ
のでしょう。
一方野生のオオカミは人間を警戒します。従って無闇に人の痕跡(臭い)のある
牧場を襲うことはまずあり得ないでしょう。
尤も、ヨーロッパの方では人とオオカミとが近隣に共存している地域もあるよう
ですが。
しれません。まずはオオカミと出会えることはないでしょう。
野生のオオカミは野犬と違って人を恐れます。嗅覚を筆頭に人よりも五感に優れ
ているオオカミは山道を歩いてくる人を察知すると巣の近くであったりしない限り
身を隠してやり過ごすことを選ぶと思います。
送りオオカミという言葉もありますが、これも別にオオカミが見送ってくれて
いるのではなく、テリトリーへの侵入者が悪さをせずに出て行くかどうか見張って
いるだけなんです。
最近思うのは、ニホンオオカミは何故絶滅したのかなという事です。
環境のせいなのか、人間が殺したのだろうか。殺したのなら何故なのだろうか。次々にあらたな疑問が生まれてきます。
オオカミの事を考えるのは、ひいては人間と自然環境を考える事でもあるのですね。
ます。
元々日本にはオオカミ信仰があり「大口眞神(オオグチマガミ=オオカミ)」と呼び
奉る神社もあるということは前にも述べましたが、農耕民族であった日本人は田畑を
荒らすイノシシやサル、里山を荒らすシカから村を守ってくれるオオカミを神様の
使いと考えたのでしょうね。
私の聞いた話では、明治時代になって欧米人が多数入って来た時に彼らはスポーツ
シューティングも持ち込みました。
彼らの狙いは立派な角を生やした牡鹿達です。 そこでオオカミと獲物が競合する
わけです。
彼らは自分達の行為を正当化するために「赤頭巾ちゃん」のお話も持ち込みました。
そうしておいて毒物を使って競合相手を一掃してしまいまたということです。
また彼らが連れて来た猟犬が狂犬病やジステンパーを持ち込む結果となり、免疫の
ないニホンオオカミはなすすべもなく死んでいったようです。
「赤頭巾ちゃん」のお話そのものは寓話としてよいのですが、子供の頃から刷込み
でオオカミは怖くて悪い奴だと思い込ませてきてしまったことは、これもひとつの
功罪なのかもしれません。
スポーツシューティングで思い出したのが、オーストラリアのケース。これも外来種が多く持ち込まれて、生態系を壊しているとのレポートでした。
病気の問題は大きいですよね。本州のみならず、四国や九州にも伝染してしまったのでしょうか。人間の移動と、動物の移動。
最近の渡り鳥の鳥インフルの話といい、グローバル化の功罪をまざまざと見せられています。
(ミ^ェ^ミ) さん。丁寧な説明をありがとうございました。 (^-^)
元の話から大分ずれてしまいますので簡単にしておきますが、オーストラリアの
生態系というか、種の系統は他の多くの国の動物層と全く異なります。
よく知られたコアラやカンガルーに代表される有袋類(お腹の袋状の器官で子育て
する)がオーストリアの野生動物の大半を占めています。
そこへ他の国に生息をしている有胎盤類(胎盤で子供を育てる動物)を持ち込むと
いうのは完全に外来種の移植ということになります。
一つの問題を掘り下げると、多くの課題を人類が抱えているのが見えて来ますね。詳しい話をありがとうございます。