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ひもろぎ逍遥

宗像大社 辺津宮・千木が外削ぎなのは何故?結末編


宗像大社 辺津宮

千木が外削ぎなのは何故? 結末編 

福岡県の宗像大社は三女神を祀る宮ですが、
「辺津宮の千木が外削ぎなのはどうしてだろう」というコメントをいただきました。
神社の屋根にある千木は内削ぎが女神、外削ぎは男神を祀ると言われているからです。

宗像大社 辺津宮・千木が外削ぎなのは何故?結末編_c0222861_2253106.jpg

辺津宮の写真を見直すと確かに千木は外削ぎです。
祭神は女神ではないのでしょうか。
この謎をある人が宮司さんに尋ねたけど、答えが得られなかったという事でした。

何か隠されているのだろうか、などと噂をしていたら、
私たちのコメントのやりとりを見た方がその理由を宗像大社に直接、メールで尋ねてくれたんです!
なんと有り難い!

神社から丁寧な返事があったそうです。
その内容を公表してもいいだろうかとその方と話し合いました。

神社が見知らぬ人に返答をくれたのは、「それが公になってもいい」という事を
含んでいるのではないかという結論を出しました。

考えてみると、何人もの人が同じ質問を神社に尋ねるより、
ここで公表した方が神社にも迷惑がかからないのではという事で、
今回のテーマは「女神を祀る宮に男千木と言われる外削ぎが何故使われているのか」
という件についての顛末です。

事の始まりは
楯崎神社(2)大己貴と宗像姫の連合軍が異敵と戦った の記事からでした。

楯崎神社は宗像市の隣町にある断崖絶壁の上の神社で巨大な盤座がある宮です。
その祭神は大己貴命と少彦名命。
この宮には大己貴命が宗像三女神の姉妹を二人、妻にした伝承があります。
(古事記では妻は一人なので、とても珍しい伝承です。)

その時、Bさんからコメントを頂きました。
まずはBさんと私のやりとりを一部紹介します。

Bさん
「宗像大社も謎が多いですね。以前ボランティアの方にお聞きしたんですが、
宗像大社辺津宮の千木は垂直に切ってあります。
一般的には千木が垂直の場合は、男神を祀ってあるんだそうです。
ちなみに沖津宮・中津宮両方とも千木は水平なんだそうです。
ひょっとして辺津宮の神様は男性なんでしょうか。」

るな 
「そうなんですか~!千木が垂直とは、大発見ですよね!!
宗像の御祭神は古くは大国主だという方がいました。
すると、この大己貴命がその人ですよね。
英彦山にも降臨したという話なので、これまでの神社史は大幅見直しが必要かも知れませんね。
なんだか大変な事になりました。」

Bさん
「千木のことを教えてくださったボランティアの方は、千木のことを直接大社の宮司さんに聞いたそうですが、結局何も教えてくれなかったとのことです。」

るな 
「写真の通り、垂直でしたね!!本当に驚いています。
宮司さんに訪ねても答えがなかったのなら、深い意味があるのでしょう。
これまでの宗像宮観が完全にくつがえる話ですが、これで深層に下りて行けるような気がしてきました。
教えて下さってありがとうございます。」

ま、こんなやりとりなんです。
気にはなっても、それ以上は踏み込めずにいたのですが、
このやりとりを読んでくれたTさんが宗像大社に直接質問をしてくれました!
そして結果を私に教えてくれました。(感涙)



次の文はTさんと私のメールのやりとりの一部です。
Tさんは「千木について」と「道主貴と道主命の違いについて」を質問されたようです。

Tさん
「宗像大社・辺津宮の千木の件ですが、宗像大社へ直接問い合わせてみましたところ、
以下のご回答をいただきましたので、ご報告させていただきます。」

宗像大社
メール有難うございます。
お待たせいたしました。折り返し御返答申しあげます。
まず、千木に内削ぎ外削ぎがあり、御祭神の性別を示すとの説があります。それを
以って男千木・女千木とも言いますが、それは俗説です。

全国の神社を巡ってもそれにあてはまらない神社は多くあります。別の角度から見た場合、たとえば夫婦神を祀る神社は片方が外削ぎ、もう片方が内削ぎとならなければなりませんが、その様な形の神社はありません。

・もう1点の「命(ミコト)」と「貴(ムチ)」について御返答申し上げます。
「貴」とは貴い御存在という意です。「命」とは別であると思います。よって、「道主貴」と「道主命」は別の神様と解釈致します。

ちなみに『日本書記』崇神天皇十年の条によると各地平定の為に遣された四道将軍(四人の将軍)の一方に丹波道主命の名がみえます。それが、玉置山の道主命と同一かどうかは分かりませんが、今ではその方を御祭神とする神社があってもおかしくありません。

他にも道主命と崇められた神様や功績のあった古代豪族が当時あり、その伝承を今に残しているのかもしれません。

何れにしても「道主貴」とは違うものと思います。道主命については、これ以上は当方にとって専門外となりますので重ねての御質問は御容赦願います。以上御返答申し上げました。   
宗像大社  祭儀部

Tさん
「私の妄想にまで、ご丁寧にお答えいただきました(笑)
内削ぎ=女神・外削ぎ=男神とは、研究していく上で
『もしかしたら、こういう事なのでは??』と考えた事なのかもしれませんね。
宗像大社側からご指摘いただいたとおり、全ての神社で性別と千木の形が
当てはまるわけではないようですし。

でも、沖津宮と中津宮は内削ぎなのですよね?
同じ宗像大社のお宮なのに、辺津宮だけが外削ぎなのって気になりませんか?
というわけで、お礼のメールとともに、早速質問してみました(笑)」


それから数日後。
Tさん
「宗像大社から再び回答が届いたのでご報告します。」
御返答申し上げます。
沖津宮は外削ぎ、中津宮は内削ぎとなって居ります。その理由については、特に伝承されて居りません。現在の御社殿(建物)は、沖津宮が江戸時代後期、中津宮・辺津宮が戦国時代後期でそれぞれまちまちです。
宗像大社  祭儀部
Tさん
「どうやら、宗像大社のご神殿は、中津宮だけが内削ぎのようですね。
沖津宮と辺津宮が同じ時代に建築されたのなら、実はその時代の流行でした~って
話も出るかもしれませんが、実際には中津宮と辺津宮が同じ時代ですから、
何故違う形にしたんだろう??と疑問に思います。
が、伝承されていないと言われたら、それ以上聞けないですね(^^;)」

以上、Tさんのメールの一部でした。
私もTさんと全く同意見なので、その感想の部分も掲載させていただきました。
Tさん。本当にありがとうございました。

宗像大社の説明では「男千木・女千木については俗説で、
辺津宮が外削ぎだという事について説明する伝承もない」とのです。

し・か・し、ころんでもただでは起きない、るなさん。
実際に「千木と祭神の関係はどうなっているのか」
これまでのストックから8神社ほど調べてみました。

宗像大社 辺津宮・千木が外削ぎなのは何故?結末編_c0222861_2257072.jpg

赤司八幡宮 
主祭神 道主貴 三女神 宗像大社と同じ女神たちです。同じように外削ぎでした。

宗像大社 辺津宮・千木が外削ぎなのは何故?結末編_c0222861_22571983.jpg

大善寺玉垂宮
主祭神 武内宿禰 もしくは 高良玉垂命とあいまいで、一部では女神だとも伝えられています。
外削ぎです。

宗像大社 辺津宮・千木が外削ぎなのは何故?結末編_c0222861_2257401.jpg

伊野天照皇大神宮
主祭神 天照大神 アマテラス女神で、内削ぎです。

宗像大社 辺津宮・千木が外削ぎなのは何故?結末編_c0222861_22581141.jpg

天照神社
主祭神は天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊。
いわゆるニギハヤヒで男神ですが、内削ぎです。

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宮地嶽神社
主祭神は神功皇后。内削ぎです。

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香椎宮
主祭神は仲哀天皇。千木はありません。

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志賀海神社
主祭神は綿津見三神。千木はありません。

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風浪宮
主祭神は少童(わだつみ)命。千木はありません。

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現人神社
主祭神は住吉三神。千木は外削ぎです。

という事で、確かにバラバラで、法則性は見当たりませんでした。
宗像大社の辺津宮が外削ぎだからといって男神が祀られているとは言えません。
宗像大社の言われる通り、男女の千木は俗説だというのが分かりました。

Bさん。これで如何ですか?
Tさん。協力ありがとうございました。(^o^)/


この記事は
楯崎神社(2)大己貴と宗像姫の連合軍が異敵と戦った 

宗像と出雲
の続きです。


地図 宗像大社





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Commented by ばってんハカタ at 2012-05-01 13:23 x
ルナさんこんにちは

ルナさんの行動力さすがです!!
やっぱり自分で行動しないと
何も解決しないですね。

千木のこと教えてくださったボランティアの方
にもお教えしたいのですが、お名前を忘れてしまいました<(^ー^ι)
Commented at 2012-05-01 16:58 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lunabura at 2012-05-01 21:25
ばってんハカタさん。こんばんは。
今回は私でなく、Tさんのお蔭なんですよ。
とても面白いテーマでした。
お互いにフランクに質問をぶつけあいましょう! (^-^)
Commented by lunabura at 2012-05-01 21:59
非公開さん、コメントありがとうございます。
私の聞き取りは、地名研究会での講演の一部を書いたものと、
古墳の中で聞きとったものと二つあります。
神官さんが別の人なのでニュアンスが違っています。

コメント欄に書かれている話は古墳の中で聞いた分だと思いますが、
講演会の時の話は更に深くつっこんだもので、幾分ニュアンスが違っているのです。

オフレコの話もあり、コメント欄に書いて頂いた文では、上手く伝わっていません。
私のブログからよりも、直接講演のテープを書きとられた方が良いかと思います。
久留米市の地名研究会の事務局に尋ねてみて下さいませんか?

オフレコの部分があるので私もブログには詳細を書けなかったのです。
内容も一行では済まない内容です。
会報に書かれるとすると、きちんとしたものを書いた方がいいなと思っています。
よろしくお願いします。
Commented at 2012-05-01 22:31 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lunabura at 2012-05-01 22:39
私は第三者からの話も聞いています。
とてもデリケートなので、いつかお会いした時に直接お話します。 
Commented at 2019-12-27 20:31 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 宗像大社 at 2019-12-27 20:32 x
宗像大社
Commented by 稲田梨乃 at 2019-12-27 20:34 x
不老祐介
Commented by 荒岡めぐみ at 2019-12-27 20:35 x
吉見衣世
Commented by 小田 剛一 at 2020-01-06 15:42 x
ちょっとずれますが、
地元の観光資源として古代史をPRされている
福岡県HP “「ご来福」しよう” の更新がずっと
なされていません。

すごく楽しみにしているのに残念です。
Commented by lunabura at 2020-01-06 22:34
そうですね。私もどうなったんだろうかと思ってました。
一年だけの企画だったのでしょうか。
また続きがあるといいですね。
by lunabura | 2012-04-30 23:10 | 宗像大社・むなかた・宗像市 | Comments(12)

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