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観世音寺2・初代管長 満誓沙弥・梵鐘と水城


観世音寺2

初代管長 満誓沙弥
梵鐘と水城


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満誓(まんぜい)沙弥は笠(かさの)麻呂の法名である。斉明帝(655~661)の菩提寺としてしられる太宰府観世音寺の初代管長であった。養老7(723)年2月のことである。鐘の銘文の上三之(かさの)麿(まろ)はその雅号である。
万葉集巻三 沙弥満誓(643~733)作
  世間(よのなか)を 何に譬(たと)へむ 
  朝びらき 漕ぎ去(い)にし船の 跡なきがごと
は、水城の上を島廻りする船を眺めての詠歌であった。
『儺の国の星』p72

この観世音寺の初代管長は満誓。旅人と同時代。
鐘の銘文は意見が色々あるようですが、「上三之(かさの)麿(まろ)」すなわち、笠麻呂の雅号だと伝えています。

さて、満誓を調べましょう。
大辞林 第三版の解説
まんせい【満誓】
奈良前期の官人・僧。俗名,笠朝臣麻呂(かさのあそみまろ)。右大弁のとき,元明上皇の病気平癒を祈願して出家。勅命により723年筑紫観世音寺を造り別当として太宰府に住し,大伴旅人らと親交。万葉集に短歌七首を残す。生没年未詳。沙弥満誓。


筑紫万葉歌壇にいたんですね。その歌には水城の景観が読み込まれていました。
  世間(よのなか)を 何に譬(たと)へむ 
  朝びらき 漕ぎ去(い)にし船の 跡なきがごと
世間とは男女の仲。
夜が明けて水城の門が開かれると船が漕ぎ出し、その跡もやがて消えてしまう。

朝になると二人の契もすっかり忘れてしまったかのように立ち去る男の後ろ姿が重ね合わされています。

そんな男のつれなさを僧が詠むのですから、僧と男女の恋―このギャップが歌壇では喜ばれたんでしょうね。

さて、この光景は水城の上流域に水が溜められていなくては詠めない光景です。

昔、水城が湖であった頃の渚に沿って沼あり丘あり、雑木の林あり、まことによい景観と展望の地が連なっていた。
『『儺の国の星拾遺』p202


現在、福岡での各研究者の公での発表を聞くと、水城は水を下流に溜めるという説が主流です。

が、水城の断面は上流域の水の圧力を分散させるようになっているので、上流域に溜めると考えるのが合理的です。

工学系の研究者には後者の意見を持つ方がいらっしゃいます。




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水城は人が立っている地点は中腹。ずっと下まで築造されている。左が博多湾側。右が都府楼側。勾配が緩くなって水圧を逃している。



さて、疎水の証拠を探していたのですが、水城の真ん中、道路が交差する辺りで石敷きが発見されました。瓦も出てきました。その上流域には矩形の遺跡跡も見つかっています。それが天智帝の造った疎水ではないかと睨んでいます。

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天智天皇(662~671)は、かつて筑紫の国造(くにのみやつこ)磐(いわ)井(い)(418~528)がひらいた水城なる瀦水塘を、玄界灘から有明海に疎水式に船を通す湖にきりかえる大工事を完成された。
『儺の国の星拾遺』p140


疎水式とはスエズ運河のように、水門で水を溜めて航行する方法です。



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イギリスではナローボートと言って、狭い水路を沢山の水門を通りながら旅をしていますね。




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この程度の幅で充分疎水の働きをします。



天智帝は都府楼に自らの開発に成る時計を据え、玄界灘と有明海の潮刻(しおどき)をみはからって水城の上を往来する舟人に太陽暦の時鐘を響かせ給うた。後にこれは御母斉明帝の菩提寺に建てられた観世音寺に移されたともきく。『儺の国の星』p68


この疎水の開通式の時にはきっと厳かな梵鐘の声が響き渡ったことでしょう。
それが、後に観世音寺に移されたと伝えています。


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長洲宮の行在所で、筑紫の観天望気にふかい大御心を寄せられた天智帝(662~671)と天武帝(673~686)は笠朝臣(かさのあさみ)の家系の叡才を信じたまい、もって有明海と玄界灘を結ぶ水城の監理を托されたと聞く。
(儺の国の星)p72

この水城の通行税で観世音寺が経営されたとも真鍋家では伝えていました。









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by lunabura | 2015-07-13 21:36 | 太宰府政庁跡・水城周辺 | Trackback | Comments(0)
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