ひもろぎ逍遥

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出現




昨日は、『甕の音なひ』の公演がありましたが、
前回とは全く趣向が異なっていました。

というか、テーマがついに打ち出されたのかな。

前回は巨大な甕が出て来て、
その発酵に関わる精霊(神)がテーマの一つでした。

で、今回は能楽殿の舞台は狭いこともあって
小さな甕を五つ準備されたのですが、
それに水引作家の長澤宏美さんの「白い水引」が掛けられた時、
藤枝氏にはそれが磯良のマスクに見えたそうです。


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それを聞いてしみじみと見ると、
確かに、白い布が水引に昇華されたように思えてきて、
いよいよその素顔を出される時を告げるものになるのか、
と期待されるものがありました。

「イソラを世界に出したいのです」
そのようにメールで語られたのが、それは驚きでもありました。

私がガイドブックを書いているときには謎だらけの神だったのが、
仕上げた時には、実は筑紫に安曇磯良という王がいて、
歴史から消されていたという事が私の中で形を成しました。

これと同時進行で藤枝氏は甕を通して神との交流を始め、
ついに磯良出現というテーマの現代神楽を創作されたのです。


水引を見ていると、扇が前面に出されています。
扇は神功皇后が磯良に渡したもので、この地紙を着物につけたことから
紋付が始まり、また舞に扇を使うことが始まったと、
江戸時代の本に書かれていました。

この時から「扇」は安曇の紋になったそうです。
それを志賀島で話したばかりでした。

その話を知らずに「扇」のモチーフを「白」で造った長澤さん。

それぞれが磯良の出現を表現し、この日、一堂に会したのでした。






神楽で謡われた「阿知女作法」(あぢめさほう)という曲目は
宮廷に伝わる「みかぐら」で、磯良の出現を促すものと言われています。


その正式な歌を伝承する石川高氏が直接唄われると聞いて、
ドキドキしました。

これはネットでも聞くことが出来ますが、
直接その響きに触れることは望外の喜びでした。

しかも、神楽の中でそれが重要なモチーフになっていると気づいたのは、
多分、海神商店さんぐらいかも。

そう思って楽屋で、「アフタートークでもう一度謡って貰えますか」と
石川さんに打診すると、「よろこんで!」と笑顔が戻ってきました。
藤枝氏も「それはいい!」とノリノリ。

で、「阿知女作法」だけ切り出して、お披露目となりました。
これで皆様にも、この神楽のテーマが汲み取れたのではないでしょうか。

過去には誰でも知っていたイソラのことを、もう誰も知らない現代では、
少し解説が必要だったようです。





神楽に戻りましょう。
四方の結界として護る「つむぎね」が
中央の甕に「あぢめ」の言霊を繰り返すと神が出現しました。

これこそ甕の「音なひ」です。

呼び出された神は未分化のまま、息づきはじめ、人間の形を取り始めます。
それを演じた太田垣悠さんはスイスからこの日のために里帰りしました。

狭い上に、結界として四方に人がいるという特異な環境の中、
笙(しょう)の響きを取りつつ、
観客の息吹と交感しながら舞っていたと後で教えてもらいました。


あの不思議な音声を出していた山崎阿弥さんもまた、
神の出現を声のパフォーマンス(口寄せ)で表現していました。

その神は長い間、甕の中にいたので、
いろんなものを抱え込んでいました。
まるでパンドラの箱のように。

そして、人間の形を取ったもう一人のイソラ。
上杉満代さんの迫力のある舞が口寄せと絡み合ったのでした。

そうして、神の遊びは終焉し、直会(なおらい)へ。

中川佳代子さんが香椎宮の琴で酒楽の歌を謡いました。
これは古事記に書かれている詩で、
神功皇后や武内宿禰が酒を寿(ことほ)ぐ歌だったんですね。

これに藤枝氏がメロディーをつけられました。
不思議な音色です。

この酒のこと、真鍋は葡萄酒だったと言います。
ちょっと信じられなかったんですが、焼酎の社長の話では、
火を使うことを知らなかった時代の酒だそうです。
焼酎のような発酵物はすごく近代的なものなんですね。
それなら、あの歌は真鍋の言う通り、葡萄酒だったのかも。



そうして、私は今「高良山玉垂宮神秘書」の研究を進めています。

高良山は「玉垂」すなわち「干珠満珠」で始まったと書かれています。
磯良が玉垂命となって数百年後に物部氏が取って変わり、
最後には住吉が上書きされていく。
その長い歴史の中で、九州年号が書かれている部分を整理している所です。



私もまた、「脇巫女」でビンビンに張った感性を、
今、少し鎮めないといけない時が来ていました。
数字と格闘しながら (^^;





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by lunabura | 2015-12-13 23:19 | 甕の音なひ | Trackback | Comments(4)
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Commented by フーサ at 2015-12-14 00:07 x
昨日は素晴らしい体験をさせていただきました。
舞台を拝見しながら感じていたものを、ルナさんが言葉にしてくださいました。
不思議な音、息遣い、抑制されつつ激しく感情を呼び覚ます動き、それらに混じる発酵の音が神を感じる太古の時間を体感させてくれた気がします。また、呼び出されて海から現れ、一時人となり、送り返されるイソラの後ろ姿に哀しみを感じるのは間違っているのかなあ、などと考えつつ、あっという間に神の時間は終わってしまいました。
それと、和琴を聞きながらしきりに香椎宮で神のお告げを聞いていた仲哀天皇を思い出していたら、本当に香椎宮の和琴とわかり、驚きました。
取り留めのない言葉にしかならず、すみません。本当にいろいろな刺激を頂けた良い時間でした。後半のお話、時間が短くて、もっと皆さんからお話を伺いたかったです。
Commented by こけこま☆ at 2015-12-14 12:44 x
先日は急に挨拶してすみませんでした

イソラなので演ずる方はてっきり男性かと思ってましたので驚きと
国内外の儀式とか神託や呪術を考えても凄くリアルな表現だったんだろうな。

だんだん演ずる女性と皇后の神託が重なって見えて
皇后が神託を受けて神の声を話す時もあの様な動きや声の空間だったんだろうなぁと

現代神楽ではなく更に古代の神楽を見る事が出来たのかもしれませんね
Commented by 侑子 at 2015-12-14 16:52 x
公演を紹介してくださってありがとうございました。
おかげで貴重な場面に居合わせることが出来ました。
錚錚たる方々による、なんとも豪華で贅沢な時間でした。

神籬・依り代・四神といったセオリー通りの展開の先にコンテンポラリーなイソラが現れた時は驚きましたが、橋懸かりからの登場も破綻が無く、さすがでした。これからの祭事のヒントを戴いたように思います。

また、二十絃を自在に弾かれる中川佳代子さんが、素朴な和琴を指で心を込めて弾かれていたのが印象に残りました。後で香椎宮のものと聞き、びっくりです。イソラに繋がる魂がいろいろなところから集っていたのですね。

山崎阿弥さんのパフォーマンスの中で、私には噛み酒を作っている仕草に見えた場面がありまして、そういえばどんなお酒だったのだろうと思っていたところへ葡萄酒というお話。なるほど、です。

そしてもうイソラそのものでいらっしゃった上杉満代さん。
口寄せとともに圧巻のパフォーマンスでした。
海中からようやく海面に姿を出された時は見ているこちらもほっとして、待ち人が来た時の喜びが少しわかったような気がいたしました。

アフタートークでは「阿知女作法」の独唱をリクエストしてくださってありがとうございます。思わず「ナイスリクエスト!」と手をたたいてしまいました。けれども、もう一度聞きたいと思っていた方はたくさんいたはず。それがあの拍手だったと思います。

コメント欄を借りて自分の感想ばかり書いてしまいましたが、また魅力的な催しがありましたら紹介していただけると幸いです。
この度はお疲れ様でした。そしてありがとうございました。
Commented by lunabura at 2015-12-14 23:28
◆フーサさん、こんばんは♪
素敵な時間を共有出来てうれしいです。
呼吸までも神楽に取り入れられていて私も驚きました。
つむぎねの皆さん、呼吸の鍛錬の片りんを見せていただきました。
アフタートーク、藤枝氏のリードがお上手で、安心して話が出来ました。
でも、正座、限界でした(^^;

◆こけこまさん、ありがとうございます♪
あの神楽は観客の中でストーリーの続きが見られるような仕組みがあったのかもしれませんね。
それぞれの感想を述べあったら面白そうな余韻のある舞台でした。

◆侑子さん、おっしゃる通り、そうそうたる顔ぶれの共演を見ることができる格別な舞台でした。
真鍋は葡萄酒と言いますが、噛み酒の可能性も高いと思います。
お酒一つでも調べていくと楽しくなりそうですね。

阿知女作法、確かにもう一度聞きたかったです。

◆皆様のコメントに引かれて、もう一つ記事を書きました。
お酒の場で聞いた話も書いてます^^

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