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脇巫女 24 ミルザム


脇巫女 24
WAKIMIKO
ミルザム


ミルザム星はシリウスと同じ大犬座にあり、
シリウスよりほんの少し先に昇ってくる。

初めて聞く星の名だったが、真鍋はその倭名を伝えていた。
それは鐸石別星(つくしわけのほし)という。

鐸石別の名の皇子がいた。

『古事記』に出てくる伊登志別王(いとしわけのきみ)のことで
筑紫(ちくし)では鐸石別命と言ったそうだ。

この命は垂仁帝(すいにん)(前29~後70)の皇子で、
筑紫の人々は蹈鞴(たたら)の元祖として敬っていたという。

鐸石別命は豊前足立山(あだち・北九州)に祀られていたそうだ。
足立山は龍体だと、友人が言っていたことを思い出した。
実際に登ってみると、ところどころに露出した岩は
まるで龍のウロコのように見えた。

足立山の名の由来は、そこで和気清麻呂(わけのきよまろ)が
追っ手に足を切られたが、幸いに治ったことからついたと聞いた。

この和気清麻呂こそ、
弓削道鏡(ゆげのどうきょう)の天皇即位を阻んだ人だ。

宇佐での託宣事件は当ブログでも紹介した。
そこでは占星術が行われていたという。
脇巫女たちが逃れた先で伝えていたのだろうか。


さて、タタラの元祖・鐸石別命は和気清麻呂にとって祖に当たるという。
和気氏の拠点は備前国藤野で、鉱産氏族であり、医家でもあったという。

ゆえにだろうか、鐸石別命は工人や医人の元祖として拝まれていたが、
天平の世から薬師如来になり、
行基菩薩の石像が祠に安置されるようになったと真鍋は言う。


冬の凍てつく夜にオリオンの後を追って昇ってくるミルザム星を見て、
工人たちは仕事の出来を祈ったのだろう。
その直後、全天一の明るさを誇るシリウスが昇ってくる。
その輝きは工人が作り出した鉱物の輝きと重ね合わされたのかもしれない。

ふと、そう思った。

そして和気氏の活躍を知る人は「医術」の神としても祈ったのだろう。


このミルザム星を見て「ささらのほし」という人たちもいた。
「さざれいし」の古語だ。
「さざれいし」は「細石」とも書くように、砂鉄(磁鉄鉱)のことである。

これを鉄に還元する名匠は伊迹師(いとし)、五十氏(いそし)、
後に万葉の頃は石上(いそのかみ)と呼ばれた。

そう、糸島の五十迹手(いとて)の話の時にもよく出て来た名だ。
あのシリウスの輝きが込められた名でもある。

そうすると、ミルザムは砂鉄。シリウスはその結晶。
そう見立てて仕事の成功を祈ったというストーリーも生まれてくる。


思えばここ、鞍手は石炭が採れる所だ。
「燃える石」に関しては古文書に登場するのは中世頃らしいが、
当然ながら古代人たちはそれを知っていたことだろう。
物部たちがこの地を制したのはこの「燃える石」も一因だったのかもしれない。


ミルザム星にはさらに真金星(まがねのほし)という名もあったという。

   真金吹く 丹生(にふ)の真朱(まそほ)の 色に出て
   言はなくのみそ 吾が恋ふらくは
                (万葉集巻14 詠み人しらず)

「まそほ」の色はサイドバーにある下巻の帯の色だ。
デザイナーが私のために、日本の色から選んでくれた色だった。


ミルザム星にはさらに吉備星、気比星という名もあった。
ここで再び「吉備」の和気清麻呂にループした。


他にミルザム星は相模星(さがみのほし)、さねさしの星とも言った。

  さねさし さがむのをのに 燃ゆる火の
  火中(ほなか)に立ちて 問ひし君はも

  (古事記景行紀 弟橘比売(おとたちばなひめ)の御歌)

「さねさし」とはタタラの火の勢いを加減調整する名匠のことだと真鍋は伝える。
そうすると、意味不明とされた初句二句には
産鉄の名匠の見つめる炎のような熱い恋が詠み込まれていたことになる。

まさか、ここでヤマトタケルのために海に身を投じた姫の歌が
出てくるとは思ってもいなかった。


そして、今回は行基の名も出て来た。

鞍手には長谷寺がある。
奈良より古いこの古刹(こさつ)の十一面観音が行基の作とも言われている。

この長谷寺が長遠寺別院(じょうおんじべついん)の真北6キロの所にあるとなると、
ここにも解き明かされることを待つ謎が残されているようだった。



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by lunabura | 2015-12-24 22:25 | 「脇巫女」 | Trackback | Comments(5)
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Commented by 星読 at 2015-12-26 19:39 x
六嶽神社でのシリウスとの出会いいかがでしたか?
シリウスが昇るほんの少し前に何かが輝いたような感覚、峰を這うように昇るときに山の峰全体にオオラを放つように見える一瞬
現地で寒い中お疲れ様でした。

次回も楽しみにしています

多くの方に、現地で「オリオンとシリウス」に接していただきたいですね
Commented by ふみまろ at 2015-12-26 19:51 x
お問い合わせの「鞍手郡十市郷」について

若宮町(宮若市)の旧山口村、中村、福丸、水原、金丸および宮田町の芹田の一部あたりとのこと・・・ネットからの情報です
Commented by 七色 at 2015-12-26 20:50 x
るなさん こんばんは
先程はありがとうございましたm(_ _)m

鞍手郡十市郷 昨夜 現地入りしてスタートしました
まずは犬鳴連山山崩れにて犠牲者を祀る「清水寺」辺りから笠松神社辺りまでを頑張ります
「熊襲のせつなる想い」をアップしたいと思います
今日はありがとうございましたm(_ _)m
Commented by 七色 at 2015-12-26 20:54 x
ここのところ夜空を見上げると「流れ星」をよく見ます
それも夜空を見上げた瞬間に見ちゃうので願いを言う間もありませんでした(笑)
流れ星がよく流れてる場所はオリオンの所です⭐
Commented by lunabura at 2015-12-26 23:26
◆星読さん、昨日はありがとうございました。
想定外の神秘の現象に、心が洗われる思いがしました。
天気予報をにらみながら、もう一度見たいと思います。

◆ふみまろさん、十市郷についてありがとうございます。
神功皇后の古道、物部の手配ではないかと上巻に書いているのですがまさか山口村もまた物部とは思いもよりませんでした。

◆七色さん、十市郷に入られたんですね\(◎o◎)/!
「十市」は「南十字星」の倭名です。鞍手郡とあったので、どこなのか、ふみまろさんにお尋ねしたところでした。
まさか。ここでもシンクロとは(^^;
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綾杉るなのブログ 神社伝承を求めてぶらぶら歩き 『神功皇后伝承を歩く』『ガイアの森』   Since2009.10.25


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