ひもろぎ逍遥

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カテゴリ:甕の音なひ( 3 )

神楽か能か




あれから二日になるのに、まだ私の中では「甕の音なひ」が
満ちています。

口寄せの山崎阿弥さんとイソラの上杉満代さんの
あの絡みをどう表現したらいいのか、
言葉を探しながら料理をしていると、
夫が全く同じシーンの話をし始めました。

いただいたコメントもそのシーンに関して、
それぞれの思いが綴られています。

「今日はどんな神が降りられるのか」
そんな藤枝守氏の意味深な言葉は、
当日より、時間が経った今、効きはじめました。

私の中でも発酵、熟成が続いていたようです。


イソラが後ろから口寄せを抱え込むシーンは新聞にも掲載されました。
だれもが静かな衝撃を受けたようです。

「あれはリハーサルの時と同じなんですか?」
と、山崎阿弥さんに尋ねると、違っていたということでした。

後ろから迫るイソラにギリギリまで気づかなかったそうです。

あれこそ観客の熱と共に発酵されたシーンだったようです。




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「能舞台は特別な場で、
時や思いや空間などのものが積み重なっているのです」
と笙(しょう)を吹いた石川高氏は宙を観ながら話をされる。
出演した皆さんも全く同意見で、それら見えないものとの交歓をしながら
瞬間、瞬間、創り出されていくものであることを、
受け入れ楽しんである様子でした。

「能舞台は冥界に通じていますし」
と言う石川氏。

この言葉もまた衝撃。
そうだった。
能の世界は死霊が出現して己が思いを吐き出すものだった。

「イソラを世阿弥は描いていますか?」
と尋ねると、それは見たことはないと、皆さん。

今、思えば、「甕の音なひ」は神楽なのに、
何故か能的な世界をみんな感じている。

イソラは神なのか、死霊なのか。

それは能舞台の持つ、冥界とつながる宿命が
神の舞を覆ってしまったからかもしれない。

それは融合とはちょっと違う。

右足はあちらの世界で、左足はこちらの世界。
そんな近寄り方。

プログラムを見るとはやりどちらにも足を突っ込んでいる。

藤枝守氏こそ「神楽か能か」という命題を
誰よりも考え抜かれたのだろう。

どちらとも分けることが出来なかったこの舞台の印象は
イソラがもう一度演じられるのではないかという予感となって
自分の中で膨れ上がっていく。

いや、あくまで期待だ。

それは、筑紫の古代史が多くの人に醸し出された後かも知れない。
誰もがイソラのことを知るようになった時。
その時、イソラは明確な輪郭を取って出現するのだろう。


四時開演という時間も計算しつくされていたものでした。
高い窓から差し込む冬の日差しは観客の顔を照らしていましたが、
しだいに陰りを見せ、舞台の灯りだけになっていきました。

ここもまた、昼と夜の「あわい」。
精霊や神々が「音なひ」始める時が選ばれていたのでした。



「もう一度、この能楽殿で演じたいですか?」
とイソラを舞った太田垣悠さんに尋ねると、
「何度でも、何度でも」
といとおしそうに言われた。

「最後、三度、回ったでしょ。」と私。
「そうです。イソラ舞が三度回るって知ってたから、そうしたんです。
実際はどう回ったんですか?」
「実際は氏子さんで年配の方が、鞨鼓(かっこ)を胸に下げ、
白い布を顔につけて、右回りに回るんです。
「舞能の岸の根松や。まいのうのきしのねまつや」と言いながら、
ぐるんってね。
でも、春日大社では数歩歩きながら四つの方角を回っていく。
八乙女の舞も、その場に留まって右回りに四方を向いて回っていくんです」

太田さんのしなやかな手は舞台をなぞるように宙を回る。
まだ能舞台の気を纏っているかのように。

「この三回まわり、もしかして私と太田さんだけが知ってるかも」
そんな話を酔っ払いながらしたのでした。

酔っ払いの記憶なので、あいまいな部分ばかりですが、
それでも創作のお話を聞くのが大好きなので、
ここにメモしておきます。

登場した方、そんな事言ってません、ということでしたら、
いつでも訂正するので、遠慮なく言ってくださいね。 ^^

そして、今日、志賀島の歴史講座での話の依頼がありました。
もちろん、話します!
「安曇なら何でも」と言われました。
「それなら、イソラを話しましょう」

「イソラの行方」
そんなタイトルが浮かびました。
今、読み込んでいる「高良玉垂宮神秘書」をお伝えしたいなと思います。
1月17日です。





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by lunabura | 2015-12-14 20:53 | 甕の音なひ | Trackback | Comments(8)

出現




昨日は、『甕の音なひ』の公演がありましたが、
前回とは全く趣向が異なっていました。

というか、テーマがついに打ち出されたのかな。

前回は巨大な甕が出て来て、
その発酵に関わる精霊(神)がテーマの一つでした。

で、今回は能楽殿の舞台は狭いこともあって
小さな甕を五つ準備されたのですが、
それに水引作家の長澤宏美さんの「白い水引」が掛けられた時、
藤枝氏にはそれが磯良のマスクに見えたそうです。


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それを聞いてしみじみと見ると、
確かに、白い布が水引に昇華されたように思えてきて、
いよいよその素顔を出される時を告げるものになるのか、
と期待されるものがありました。

「イソラを世界に出したいのです」
そのようにメールで語られたのが、それは驚きでもありました。

私がガイドブックを書いているときには謎だらけの神だったのが、
仕上げた時には、実は筑紫に安曇磯良という王がいて、
歴史から消されていたという事が私の中で形を成しました。

これと同時進行で藤枝氏は甕を通して神との交流を始め、
ついに磯良出現というテーマの現代神楽を創作されたのです。


水引を見ていると、扇が前面に出されています。
扇は神功皇后が磯良に渡したもので、この地紙を着物につけたことから
紋付が始まり、また舞に扇を使うことが始まったと、
江戸時代の本に書かれていました。

この時から「扇」は安曇の紋になったそうです。
それを志賀島で話したばかりでした。

その話を知らずに「扇」のモチーフを「白」で造った長澤さん。

それぞれが磯良の出現を表現し、この日、一堂に会したのでした。






神楽で謡われた「阿知女作法」(あぢめさほう)という曲目は
宮廷に伝わる「みかぐら」で、磯良の出現を促すものと言われています。


その正式な歌を伝承する石川高氏が直接唄われると聞いて、
ドキドキしました。

これはネットでも聞くことが出来ますが、
直接その響きに触れることは望外の喜びでした。

しかも、神楽の中でそれが重要なモチーフになっていると気づいたのは、
多分、海神商店さんぐらいかも。

そう思って楽屋で、「アフタートークでもう一度謡って貰えますか」と
石川さんに打診すると、「よろこんで!」と笑顔が戻ってきました。
藤枝氏も「それはいい!」とノリノリ。

で、「阿知女作法」だけ切り出して、お披露目となりました。
これで皆様にも、この神楽のテーマが汲み取れたのではないでしょうか。

過去には誰でも知っていたイソラのことを、もう誰も知らない現代では、
少し解説が必要だったようです。





神楽に戻りましょう。
四方の結界として護る「つむぎね」が
中央の甕に「あぢめ」の言霊を繰り返すと神が出現しました。

これこそ甕の「音なひ」です。

呼び出された神は未分化のまま、息づきはじめ、人間の形を取り始めます。
それを演じた太田垣悠さんはスイスからこの日のために里帰りしました。

狭い上に、結界として四方に人がいるという特異な環境の中、
笙(しょう)の響きを取りつつ、
観客の息吹と交感しながら舞っていたと後で教えてもらいました。


あの不思議な音声を出していた山崎阿弥さんもまた、
神の出現を声のパフォーマンス(口寄せ)で表現していました。

その神は長い間、甕の中にいたので、
いろんなものを抱え込んでいました。
まるでパンドラの箱のように。

そして、人間の形を取ったもう一人のイソラ。
上杉満代さんの迫力のある舞が口寄せと絡み合ったのでした。

そうして、神の遊びは終焉し、直会(なおらい)へ。

中川佳代子さんが香椎宮の琴で酒楽の歌を謡いました。
これは古事記に書かれている詩で、
神功皇后や武内宿禰が酒を寿(ことほ)ぐ歌だったんですね。

これに藤枝氏がメロディーをつけられました。
不思議な音色です。

この酒のこと、真鍋は葡萄酒だったと言います。
ちょっと信じられなかったんですが、焼酎の社長の話では、
火を使うことを知らなかった時代の酒だそうです。
焼酎のような発酵物はすごく近代的なものなんですね。
それなら、あの歌は真鍋の言う通り、葡萄酒だったのかも。



そうして、私は今「高良山玉垂宮神秘書」の研究を進めています。

高良山は「玉垂」すなわち「干珠満珠」で始まったと書かれています。
磯良が玉垂命となって数百年後に物部氏が取って変わり、
最後には住吉が上書きされていく。
その長い歴史の中で、九州年号が書かれている部分を整理している所です。



私もまた、「脇巫女」でビンビンに張った感性を、
今、少し鎮めないといけない時が来ていました。
数字と格闘しながら (^^;





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by lunabura | 2015-12-13 23:19 | 甕の音なひ | Trackback | Comments(4)

現代神楽「甕の音なひ」12月12日 のお知らせ



現代神楽「甕の音なひ」 


12月12日 のお知らせ




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               (クリックすると、少々大きくなります)




志賀島でご縁を頂いた藤枝守氏による現代神楽が
福岡の至宝、住吉神社の能楽殿で催されます。

内容も能楽殿バージョンということで、新たな装いで行われます。

演目は

キヨメ
アチメ
イソラ
ツクヨミ
イワト
オクリ
酒楽歌

となっています。



「アチメ」とは宮廷に伝わる神楽であり、「アヅミ」の音が変化したものです。
「イソラ」とは、当ブログや拙著で追求した安曇磯良。
「キヨメ」は沖津宮の前の「御手洗」の海でのイザナギのミソギを思わせます。
     (たぶん、藤枝氏はこの伝承の存在はご存知なかったと思う)

圧巻の音霊とともに。


これらからは、藤枝守氏と安曇の深い縁を思わずにはいられません。
前回、音楽、舞、音霊によって、神と人の営みの根源を究極的に表現されていました。
今回の能楽殿バージョンも心から楽しみにしています。

今回、私も、アフタートークで少し話をさせていただくことになりました。

一期一会の現代神楽、是非、足をお運びください。





焼酎の醗酵音響による 現代神楽「甕の音なひ」

日時:2015年12月12日(土)16:00開演(開場15:30)
会場:住吉神社能楽殿

チケット:
一般2,000円(前売)/2,500円(当日)
学生1,500円(前売/当日)

【作曲・構成】
藤枝守
【出演】
笙+声:石川高
和琴+声:中川佳代子
舞:上杉満代
舞:太田垣悠
声(地謡/コロス):つむぎね〜宮内康乃、森戸麻里未、ArisA、浦畠晶子
声(口寄せ):山崎阿弥
土笛:渡辺融

【主催】九州大学大学院芸術工学研究院附属ソーシャルアートラボ
【後援】福岡県、福岡市
【舞台監督】内田正信(アクトワン)


【お問い合わせ】
九州大学大学院芸術工学研究院附属ソーシャルアートラボ
 092-553-4552





チケット購入法

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by lunabura | 2015-12-12 07:34 | 甕の音なひ | Trackback | Comments(6)
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綾杉るなのブログ 神社伝承を求めてぶらぶら歩き 『神功皇后伝承を歩く』『ガイアの森』   Since2009.10.25


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