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ひもろぎ逍遥

スサノヲ(2) 蹈鞴の神

スサノヲ(2) 蹈鞴の神 

今日も、スサノヲ命の過去記事からです。

高天原でのスサノヲの問題行動に関して、真鍋の独特の視点で神話を読み解いています。

稲の民と鉄の民。
別の文化が出会ったとき、どんな問題が起こったのか、またどんな利点があったのか。

そんな視点で読み返すと、まったく別の世界が見えてきました。

自分で過去記事を読み返すと、まだまだ推敲の余地があるなと、反省するのですが、
今日はそのままUPしなおします。




アマテラスvsスサノオ(1)

神話の暗号 スサノオの暴虐


「鉄穴流し」(かんなながし)は下流に土砂を流しこんで田畑を埋めてしまう。
そんな問題について、真鍋大覚は「玄海灘の海上気象」で、
高天原でのスサノオの狼藉(ろうぜき)を、製鉄における問題の神話化として読み取っています。

まずは、鉄穴流しにはどんな問題点があるのか、「和鋼スポット解説」
http://www.wakou-museum.gr.jp/spot1.htm
から引用します。

< (前略)
このうち、山土に微量に含まれる(0.5~10%程度)山砂鉄を採取する方法として、中国山地では、とくに宝暦年間から「鉄穴流し(かんなながし)」という方法が行われるようになりました。

幕末期の記録(「芸藩通志」「日本山海名物図会」「鉄山秘書」など)にのこっている鉄穴流しの方法は大雑把に分けると採取と洗鉱の2つの仕事からなります。

 その作業は、まず適当な地質の山を選び、花崗岩系の風化した砂鉄母岩を切り崩し、予め設けてあった水路(走りまたは井出という)に流し込みます。

この走りを押し流される間に土砂は破砕されて土砂と砂鉄は分離され下場(洗場、本場ともいう)に送られます。

下場では、一旦、砂溜り(出切り)に堆積されたのち、大池、中池、乙池、洗樋と順次下流に移送しますが、その際、各池では足し水を加えてかき混ぜ軽い土砂を比重の差で砂鉄と分け、バイパスで下流へ吐き出しながら砂鉄純度を高めて下流の池に移送し、最終的には80%以上の砂鉄純度にしました。

 一方、この方法は多量の土砂が下流に流出し、農業かんがい用水に悪影響を与えることから、一時期、農民の嘆願を受けて城郭の堀が埋まるとの名目で禁止されましたが、鉄山師の強い要請と藩財政を維持するために操業期間を農閑期である秋に彼岸から春の彼岸までと定めて解禁となり、逆に農民の冬場仕事ともなって農民にとって良い収入源であるとともに、鉄山自体もこれらの季節労働に大きく依存しました。

 また、鉄穴流しの跡地や、土砂流出によって膨大な土砂が下流に堆積して生じた平地は田畑として耕作され、山内(さんない:たたら集団の部落)の食糧の一部を補いました。今日、中国山地で棚田として残っているものはこのようにして形成されたものが多いのです。>

赤字で強調した所を書き抜きます。

1 多量の土砂が下流に流出し、農業かんがい用水に悪影響を与える
2 鉄穴流しの跡地や、土砂流出によって膨大な土砂が下流に堆積して生じた平地は田畑として耕作され、
3 棚田として残っているものはこのようにして形成されたものが多い

これは江戸時代の話ですが、
山を削って土砂を流すことで、土砂が灌漑用水を埋めてしまう被害が生じています。
一方で、跡地には平地が生まれて田畑となっていくという長所がありました。

真鍋はこの話が神話にシンボライズされて伝えられていると示唆しています。

それはアマテラスとスサノオが誓約(うけい)をして、
スサノオに邪心が無いことが証明されたあとの話に出てきています。

その部分を、るなの訳で御紹介。

<こうして、スサノオの命がアマテラス大御神に言いました。
「私の心は清く、正しかった。だから、私の生んだ子は手弱女(たおやめ)でした。
ウケイの結果から言うと、私の勝ちですね。」と言いました。

それからは、スサノオの命は勝者としての振る舞いの度が過ぎて、アマテラス大御神の耕作している田のあぜを壊し、その溝を埋めて、またその大嘗(おおにえ…最初に収穫した米)を召し上がる御殿に糞をし散らかしました

スサノオの命がそんなことをしても、アマテラス大御神はとがめずに、
「糞をしたのは酔って吐き散らしたんでしょう。私の大事な弟がしたんだから(大目に見ましょう)。

又田んぼのあぜを壊して、溝を埋めたのは、土地が惜しいから広くしたいと思ったんでしょう。私の大事な弟がしたんだから(考えあっての事でしょう)。」
と、悪い事も良い方に解釈してかばいましたが、その悪い行為はやまずに、ますますひどくなりました。>

神話の赤字の部分「田のあぜを壊し、その溝を埋め」
というのが鉄穴流しによる弊害を暗示しているという訳です。

びっくりですね。
でも、よく考えると、スサノオって鉄の民です。
稲の民であるアマテラスと鉄の民のスサノオの出会い。

稲の民の田を台無しにする鉄の民の生業。
しかし鉄のお蔭で鍬の先に鉄をつけて、生産力が上がるし、平地も増える。

両者の出会いにはそんな問題がありました。

さらに大嘗祭の時の直会でスサノオが糞をし、吐き散らかすことも、
真鍋には、酔っぱらいの所業ではなく、別の意味が見えていました。

<天叢雲(むらくも)剣は、素盞嗚尊の手づから天照大神に捧げられたのであるが、顔をそむけさせる暴状は、仕事熱心のあまり、一酸化炭素あるいは熱射病の不慮の中毒に罹り、一時失神状態に陥って、嘔吐と排便を寛容しているものと解釈できぬこともない。

有明海特有の「へどろ」は膠質(こうしつ)性軟泥を指し、反吐(へど)から由来するものと聞いている。溝埋や畔放は砂鉄洗別による放出土砂の被害と解釈すれば、従来の水稲栽培田のことがらと別の意味が現れてくる。屎(しき)は鉄滓(かなくず)であり、反吐は炉の熱灰であった。>


スサノオが神殿で吐いたり排便をしたのは、一酸化中毒や熱射病などの病状であったと考えると、なるほど、と納得できます。

溝を埋めたり、畔(あぜ)を壊したりするのは、砂鉄洗別のための土砂の被害だというのも、うなずけます。

さらに、スサノオは罪を重ねていきますが、
これについても真鍋には別の世界が見えていました。


20150128

(つづく)


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山鹿市 薄野神社(一ツ目神社)



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by lunabura | 2019-01-22 23:51 | 真鍋大覚ノート | Comments(0)

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