2019年 01月 15日
ゾロアスター教(2)天変地異を知らせる聖なる火
ゾロアスター教(2)
天変地異を知らせる聖なる火
<拝火教はZoroasterゾロアスター(前660~538)に始まり、Maniマニ(215~277)によって再興された西域の信仰であって、青は草木、赤は火焔に対応させた。>
これは前回の最後の一文です。
ゾロアスターは紀元前660年生まれ。日本なら縄文から弥生へ移行する時期。
マニは215年生まれ。日本では弥生時代末期、神功皇后や卑弥呼の時代。
ゾロアスターとマニの関係に関して、ウィキぺディアを見ると、
ゾロアスター教はマニに影響を与えた一つと考えられているようで、
真鍋のいう、ゾロアスター教の「再興」とはニュアンスが違っています。
そして、前回の記事に「月氏が宮殿や霊廟の装い」で華厳の寺院を彩ったというので、
華厳を調べてみましたが、「華厳経」という言葉しか見当たりません。
「華厳経」はアヴァタンサカ・スートラと言い、3世紀頃に中央アジア(西域)で
まとめられたもの、とありました。
ですから、マニとほぼ同時代のものとなります。
聖なる色は「赤と青」のうち、青が草木の緑に変化したので、「赤と緑」という組み合わせになり、
寺院を飾る色となったことになります。
画像出典 http://www.yunphoto.net/jp/photobase/yp13944.html
月氏の建築の装いとはこのような配色を表しています。
次はゾロアスター教の画像です。
画像出典http://shinsengumi3.seesaa.net/article/144960592.html
右の黄金のオーラに輝く人がゾロアスターです。白い衣装が特徴です。
中央には火が焚かれています。これが拝火教のシンボルです。
真鍋の文を読みましょう。
<拝火教は、元来は砂漠の中に現れる自然発火や蜃気楼をみて、天地の安穏を祈る信仰であった。
夢幻のごとき描写を砂上の楼閣というのは、時ならぬオアシスの蒸気の噴出が空中に無人境の彼方の部落を映し出す光景であって、その気配を一目見て、天地の異変を吠えたてる犬を従者に侍らしていた。
神社の高麗狗(こまいぬ)の石像の発祥と、華厳の寺院の建立が時を同じくする所以である。
『儺の国の星』142>
拝火教の火は単なる焚火ではなく、砂漠の中の石油の自然発火によるもので、その蒸気などから天変地異を察した。だから拝火教はそれが無事であるように祈る信仰だと真鍋は言います。
テレビで砂漠に滲み出た石油が燃えている映像を見たことがあります。
大地が直接燃えている印象です。
また、中東の洞窟の中に実際に入ったことのある絵里さんは、人々が石油の炎に祈りを捧げているのを目撃したと教えてくれました。
「砂漠の火」と「天地の異変」がどう関わるのか、さらに真鍋の説明がありました。
<大地の岩漿が沸騰し始めると、その上にある石油の地層は、激しい噴気を高熱高圧をもって砂漠の砂礫の間から地上にあふれさせる。
これに日中の直射、すでにオアシスまで昇華させる熱気が瞬間に引火させて昼夜の別なく燃え続ける。
近東の民族はこれを聖火と拝し、天地の潰滅がいささかでも多からぬことを大地にひれふして必死で祈ったのである。『儺の国の星』143>
石油が地上にあふれ出すのは地下の岩漿、即ちマグマが沸騰し始めた影響だといいます。
その後には大地震や噴火が起こる恐れがあるのを経験的に知っていたので、
近東の民は大地にひれふして祈るというのです。
<これが拝火教で、唐代には祆教(けんきょう)として、光仁帝(七八一年)に長安の都にまでおよんだ古代民族の信仰であった。>
拝火教は善悪二元論で説明されているようですが、
大地に燃えだす火を天変地異の前兆として畏れる信仰がもともとの姿だと伺えます。
(つづく)
20150205