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ひもろぎ逍遥

脇巫女57 三折の剣


脇巫女57

三折の剣



これまで仲間だったフルベは、
サンジカネモチの行動に対して反発し、亡き者にせんと、剣で迎えた。

カネモチはその剣をさばいたが、多勢に無勢。
ついに、最期を迎えようとしていた。

◇◇ ◇
このとき、若いモノノベが懐に飛び込んできた
この者は以前、夢に見た者だった

サンジカネモチの動かないはずの右腕がその男の襟元を掴んだ
「この幸せ者よ
そなたは、このサンジカネモチが奪う最後の命」

そう言うと、左腕に持ちかえた「三折の剣」を
その男の下腹部から突き上げた

――この剣を敵に渡すことは出来ぬ

若者の身体を鞘として、剣をその身体に隠した

束を握る左手に力を入れ直すと
剣を抜きやすいようにするために、若者の腹を大きく切り裂いた



どれぐらいの時が過ぎたのか
身体はもう動かない

ところが、その時、身体に温もりを感じた

――この温もりは?

膝の温もり・・・頭を支えてくれている
左腕をさすってくれる・・・優しい手のぬくもり

それは月守の巫女の温もりだった

――約束を覚えてくれていたのか
  戦場で倒れたときの約束を・・・
  我が剣をいずこかに隠せ
  そんな、辛い約束を・・・

――月守の巫女よ
  剣を頼む
  我が左腕は動かない・・・
  切り落としてくれ・・・
声が出ない

――月守の巫女よ
  最後にそなたの笑顔が見たい
目が開かない

月守の巫女は約束どおりに
左手を切り落とし、若者の身体から剣を抜き
衣に隠して去って行った

――すまない
  辛い思いをさせて・・・
  すまない

  守れなくて・・・
  月守の巫女よ・・・すまない
  ・・・許してくれ・・・

  俺は何も守れなかった

  すまない

  モノノベの者達よ

  俺は、この地を守りたかっただけなのだ

  解ってはもらえないだろうか・・・

  多くの者達に詫びねばならぬ

  この地の者達に
  モノノベの者達に


そして、今、ふたたびこの地に生まれた
この地を守るために

◇◇ ◇

サンジカネモチの最期は同じモノノベの若者の剣によるものだった。

それは、この「脇巫女」の冒頭に出てくる
「星読の夢のシーン」でもあった。

星読がこの物語を紡ぎ始めたときに、
最期のシーンを夢で見せられていたのがここで分かった。


サンジカネモチは味方の集うフルベに馳せ参じる時に、
木月の月守の民の脇巫女に草薙剣を預けた。

そして、自分の三折剣を万が一の時には預かってくれと頼んでいた。

カネモチは最期の時に、若者の身体に剣を突き通し、
その肉体の中に剣を隠した。

月守の巫女は瀕死のカネモチとの約束を守るためにやって来た。

束だけが外に残ったが、カネモチの指が握り締めたまま硬直していたために、
手首を切り取って、剣を取り出したという。


薄れる意識のなかで、カネモチは巫女に感謝した。


そして、自らの行動を振り返った。

それは、この地を守るため。
ただ、それだけの思いからだった。

そして、六ケ岳の黒だまの秘密を守るため。


それから1800年経って、
カネモチは再び六ケ岳の麓に生を受けた。
それが星読だった。


サンジカネモチは「三師金持」と書く。
「三師」(さんし)とは周代に初めて設置された身分で、
のちの宰相に相当したという。

カネモチはモノノベを統括する身分だったのだろう。

(つづく)
  





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by lunabura | 2016-04-19 21:47 | 「脇巫女」 | Comments(0)

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