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ワダツミ4  豊玉姫 志登



 ワダツミ4  

豊玉姫 志登

 
糸島の伊都と志摩の中間にある志登(しと)。

かつては糸島水道があったという。そこに安曇の寄港地と天文観測所があった。
今は志登神社が鎮座している。

祭神は豊玉姫命。
相殿に和多津見神、彦火火出見尊、息長帯姫命、武内宿禰命。
(豊玉姫の父、夫、神功皇后、武内宿禰)

11月11日の17時ちょうどに着いた。
冬の低い太陽が傾き始め、太陽光線が参道をまっすぐに通り、神殿を照らしていた。


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丸い輪になった光が神殿の中央より少し左に当たり、中央に移動しつつあった。
「これがサインよ」と菊如が言う。

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太陽の光がまっすぐ参道を進んで神殿に到達する。
これだけでも奇跡的な瞬間だった。


参拝を済ませて写真を撮っていると、菊如が私を呼んだ。
「豊玉姫!」と小声で言う。

崋山に豊玉姫が懸かっていた。そばで菊如が声を掛けている。
光が二人を照らし出した。

豊玉姫は気品のある女性の姿だった。片手を軽く胸の前に挙げて神殿に向かってたたずんでいた。

菊如が「お久しぶりです」と姫に声を掛け、続けて「るなさん、聞きたいことはある?私は歴史の事分からないから」と言った。

そんなあ。私、別に用は無いけど…。
でも、何か聞かなきゃ。
そうだ。
豊玉姫は何故、子を残して綿津見宮に戻らなくてはならなかったのか。
神話の真相を聞こう。

「山幸彦と分かれた本当の意味は何ですか」
すると、豊玉姫は静かに答え始めた。
「私はあの時、二人の子を生みました。ところが、双子は縁起が悪いと言われて一人は殺されてしまいました。わが父は腹を立てて、私を連れて帰ったのです。

「人間と海の者の間に生まれたウガヤフキアエズには海の者の加護を」
と父は玉依をお側に付かせました。玉依は海に帰ることを許されず、神社に入ってこの国を守っているのです。

「豊玉姫と玉依姫は姉妹ですよね」
「私は一人でございます。兄弟姉妹はいません。
が、七人ほどで兄弟として育てられました。
ワダツミの力を持った者。
海とこの地をつなぐ者など。
合わせて七人、これをすべて玉依と申します。
海とこの地のつながりを保つ者たちでございます。
私は父に会いに海に戻る事もできますし、山幸彦と暮らしたことは後悔していません。物の考え方が違っているだけなのです」

菊如が尋ねた。
「玉依に庸(よう)という名の者がいますね」
「庸もまた、ワダツミの力を持つ者と人間との間に生まれたる者。庸は乳母のようにして育ちました」

私は尋ねた。
「ウガヤフキアエズを育てた人ですよね」
「玉依とは、海からの言霊を聞く者」 

「玉依がウガヤフキアエズと一緒になって子供を生みましたよね」
「一緒という考えは今とは違います。この世に子孫を残す。それだけ。愛されたり愛したり、慈しんだりというわけではありません。愛より、尊敬する思いが強いのです」

菊如が尋ねた。
「姫はウガヤフキアエズを見守ってこられたのですか」
「私は祈る事しかできない。封印されて動けなくなったところで、あなた(菊如)に助けられました。ウガヤの底の底に眠る龍は私が守っており、動くときには目が覚め、その力を発揮します」
そう言うと、白皇を見て語りかけた。白皇はウガヤフキアエズの転生者だという。

「わたしを恨みますか?
どう生きるか。
授かった宿命は変えられません。
ただ海には帰れない」

菊如はさらに尋ねた。
「大国主神社に何故おられたのですか」
「大国主と共にあの場所にきました。そして何者かにあの場所で封印されてしまいました。大国主の仕業ではありません。

海の門を無理に開けさせ、入ってはならぬ者を入れようとした者がいたのです。
私を封印して父に掛け合ったのです。

封印されたのは私の分御魂(わけみたま)でしたが、私の思いがあそこに残ってしまったのです」

私は尋ねた。
「対馬にお墓がありますよね」
「対馬にずっとはいませんでした。そこに埋められてもいません。燃やされて灰になって海に流されました」

「何処で燃やされたのですか」
「島。石が沢山ある島。
役割が終わり、亡骸(なきがら)がこの地に留まることを、私は拒否しました。
私は玉依に頼みました。
燃やしてくれ。海にまいてくれと。
潮に流されて志賀島に帰れるようにと。
風に乗って。波に乗って」

石が沢山ある島といえば相島(あいのしま)だ。安曇の墓所と聞く。

スマホで相島の一番大きな積石塚を見せた。

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「これですか」
「そうです。そこです。
それは祭壇です。
私は石の上で燃やされました。
私たち海の者は土に埋められることは好みません。
燃やされて灰になり、天に帰るのです。
石の上。
暗い空。星しか見えぬ夜に」

暗い空というのは新月の頃のことだろうか。
海の者たちは満天の星の元で昇天していくのか。

相島の長い百合ケ浜は掘っても掘っても石だけしか出ないという。
古墳が造られる前の時代からあの地は葬送に使われていたのだろうか。

相島の積石塚で一番大きな120号墳は四角い積石塚の上に石囲いの石室がある。
そして手前には祭壇がある。

今見るものは崩れたものを再現したものだ。原形はまた違ったものかもしれない。

結婚について、私はもう一度尋ねた。豊玉姫が答えた。
「結婚のため、何度も通って夫と逢います。
安曇の婚姻は反発する者も多かったのでございます。
しかし、新しい時代、種族を増やし、それぞれの良き所を伸ばして増やしていく。
それが必要だったのです」

「糸島で暮らしたんですね。二人の住まいの跡は何処ですか」
「染井の山の麓です」

――あの染井の井戸がある所か。意外な場所が出て来た。

豊玉姫はもう一つ大事な話をした。
「天と地、海と空、八百万の神と仏教の神々、すべてが一つにならねばなりませぬ。
それぞれが別々に働く時は終わりました。
海から攻撃するものがあります。海の力を借りて防ぐ時がきているのです」

最後に菊如が「何かお願いすることがありますか」と尋ねた。
すると、豊玉姫は
「わたくしの分御魂をこの子に」
と言った。
長い時を越えて転生したウガヤフキアエズに分御魂が与えられた。


それから豊玉姫は去った。


崋山が後で話をしてくれた。

豊玉姫は一人っ子だった。陸の竜宮城とは志賀島のこと。

日本という島国に外から入ってくるものを、鬼神一族が守っていた。しかし、自然破壊で鬼神一族が日本を守れなくなっている。鬼神とは荒魂のようなものだという。


姫の心には志賀島への思いがあった。
海の民の血を引くものたちは土の中に埋める感覚がない。
それで土に埋葬するのはいやだが、海に帰る方法として灰にしていた。

昔、相島の人は火葬をしていた。当時、いろんな種族がそこに集まっていた。
相島は終わりの島。亀が死ぬところだと語った。




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気が付くと、40分以上経っていた。
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もうすぐ太陽が正面に来ようとしている。
時間の感覚がなくなっていた。


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龍が太陽の珠を抱えているかのよう。
豊玉姫は龍女とも言われていた。









染井神社 『神功皇后伝承を歩く』下巻63


20180922



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by lunabura | 2018-09-22 19:49 | 「ワダツミ」 | Comments(4)
Commented at 2018-09-22 20:46
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lunabura at 2018-09-22 22:28
奇しくも今日行かれたのですね。
Commented by tosaka312 at 2018-09-23 19:41
以前桜谷神社も探して行きました。プロペラがありましたよね😃いつも楽しみに読ませて頂いています。次の小城カフェには是非参加したいです
Commented by lunabura at 2018-09-24 21:51
ありがとうございます。
小城鍋島家Tenカフェは前回参加者が少なかったので延期しました。また機運が生まれたら再開することになりました。その時はよろしくお願いします。
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