2018年 09月 30日
ワダツミ12 再びの志登神社 五つ目
再びの志登神社 五つ目
3月11日。17時25分。
再び志登神社に着いた。
前年の参拝の11月11日からちょうど四か月目だった。
季節は一つ進んでいた。
が、今回も神殿に光が当たるタイミングに到着した。
珠を奉納する、豊玉姫とワタツミの神の神社ならここを外せなかった。
神殿に届く光はそれが正解だと知らせていた。
「何かを貰うなら豊玉姫の石の所よね」
と白皇に言うと、白皇も同意する。
11月に来た時、私はその石に白皇を案内していた。
菊如は行かなかったっけ。
ここでも菊如は神殿にて祝詞を捧げ、珠を捧げた。
それから、やはり豊玉姫が髪をくしけずった石の方で受け取ることを伝えた。
目印は畑の中の一本の木。
もう地元の誰もが忘れている豊玉姫の石。
傾いた石碑がわずかに史跡だということを示している。
この木と石碑が無かったら、消え去っただろう。
かつては豊玉姫の石ももっと高かった。
畑を作る時に土入れをして、ギリギリ残ったと思われた。
せめて案内板を設けてはくれまいか。
と願うばかりだ。
作物を踏まぬように気をつけて近づく。
菊如は石の上に大きく手を広げてみせて、白皇に真似をして宝具を受け取るようにと言った。
白皇は受け取ると、「布団みたいなの!」と声を挙げた。
何?
そんなの?
あとで精査した崋山の話では、それはワダツミの神の乗り物で、泡で出来ているものだという。
その泡は後部が立ち上がり、ひさしのようになって、神の翳(かざし)になっていた。
ワダツミの神は男性の姿をしていて、左肩から布を垂らした筋肉質のポセイドンのイメージだと言う。
「何故、七か所に宝具がバラバラになっていたの」と尋ねると、「七人の白い発行体の人が七つをパーンと飛ばした」と言った。
「泡と七」で思い出す夢があった。2月8日の夢だ。
ある男が海に半身浸かり、空手のように拳を突き出しながら修行していた。
その浜の左手には崖があって上の方にテラスがあった。
そこは泡で真っ白になっていたが、七人の白装束の神が並んで泡を蹴飛ばしながら拳法の修行をしていた。
テラスの下には洞窟があった。
そんな夢だった。
けったいな夢だったので良く覚えている。これと宝具の話がつながるかどうかは分からない。
が、今再びこうして読み直していると、七人が泡を蹴って封印している姿の象徴だったのかとも思われるのだった。
さて、この日はここで上がりだった。
今日は五つもの珠を奉納し、宝具も受け取った。
残りは二つだ。以外にも順調に事を終えた。
私たちは近くの櫻井神社に挨拶して二見ケ浦に出て帰途についた。
二見ケ浦を通りながら「ここはよく来たあ」と白皇が言う。
三苫の海でも奈多の海でも同じことを言っていた。
白皇と海は切っても切り離せなかった。
それは私にとっても同じだった。
20180930
異世界小説