2018年 10月 01日
ワダツミ13 ワダツミの龍
ワダツミの龍
さあ、これで七つの珠の内、五つは思いがけずスムーズに奉納できた。
その返しに手にした宝具は
「太陽の鏡」太陽の光を海に反射する
「玉手箱」黒い漆塗りの縦長のもの。赤と金のひもが掛けられている
「黄金の扇」海底から波を起こす
「黄金の矢」普通の矢とは少々違う
「泡の乗り物」ワダツミの神の乗り物
そのついでに「繁栄の種」。これはイワナガ姫のお使いだ。
想像を絶する形状ばかりだった。
残るはあと二つ。何処に行ったらいいか。いくつかリストを挙げた。
まずは北九州市の和布刈(めかり)神社。
豊玉姫が夫の彦ホホデミと子のウガヤフキアエズと共に祀られているので、固いだろう。
そこでは干珠満珠の秘儀が和布刈神事の形で伝えられている。
関門海峡を前にした磐座の宮でもある。
神功皇后の本を書くとき、百社を選びながら、ラストの百番目は絶対これだと思った思い入れのある宮でもあった。
もう一か所は?
神功皇后が干珠満珠を奉納した下関市の干珠満珠島か。
それを見晴らすのは豊功(とよこと)神社だ。
これまた拙著の冒頭を飾っている。
しかし、福岡県外にあった。福岡県内という条件からはずれていた。
そうすると、もう一か所の候補地。
新宮町の相島の若宮神社か。
豊玉姫と玉依姫が祀られている。一説にはウガヤフキアエズも一緒だという。
しかし、崋山は「ここではない」と言った。
では、残る一社は何処なのか?
ここまで絞り込んだ時、菊如から連絡があった。
それは糸島に行った二日後、3月13日の夜だった。
糸島の日以来、崋山と菊如そして白皇たちは持ち帰った宝具を精査していた。
その結果が上記の五つの宝具だが、どれもが目的の物で間違いないという。
これを聞いて安堵した。
宝具を精査した後、染井神社の龍が出て来たという。
菊如が「ここには龍がいる」と言った神社の龍だ。
左半身をケガしていた。
この龍はワダツミの神に仕えていた龍で、染井神社で祀られていたのだが、350年前に池を作った時に置いた石が、龍の左肩にクイを打つ形になってしまい、大蛇になってしまったという。
菊如たちが龍のケガを癒すと復活し、「ワダツミの龍」と名乗った。
その礼なのか、話をしていったという。
ワダツミの神が封印された時、宝具が七つの方向に散らばったのだが、これが再び揃うと、海の中から嵐を起こすことができるようになるという。
「ワダツミの神の復活」
これが七つの珠の奉納の目的だったのだ。
これは染井神社の社前の池。右手に三角の石がある。
これなのだろうか。
崋山はもちろん、この池を知る由もない。
これは社前から見えた木。不思議な形をした白い木。
神功皇后伝承を歩く 上巻 1忌宮神社 付記豊功神社 干珠満珠島
下巻 63染井神社 糸島
100和布刈神社 北九州市
20181001
異世界小説