2018年 10月 02日
ワダツミ14 ワダツミの神1 竜宮の門を開けよ
ワダツミの神1
竜宮の門を開けよ
その翌日、3月14日のことだった。
緊急の案件があって結願に参加することになった。
五つの珠に関して確認をし、それから、ある問題解決のための結願をした。
無事にそれを終えて休息していると、語り掛ける存在があった。
それは祭壇に置かれた二つの石を通して現れた。
そして崋山に懸かった。
その存在はゆったりとアグラをかき、上機嫌で拍手をした。
パチパチパチパチパチ。
「あわてぬとも良い。良き、良きこの時のため、この場所にいた。
今から始まる。
さあ、何が聞きたい」
菊如は既に誰なのか分かっていたようだが、改めて尋ねた。
「どなたさまでしょうか」
「ワダツミの神のほんの一部だ。
竜宮の門を開けよ。大島の竜宮だ。
わが本体はあの日しか、あの門を開けることはできぬ。
あの海より船で渡り、七つの道具を我が血筋、投げ入れよ。
集める物をあの門より投げ入れよ。
ワダツミの神の復活。
そのままでよい。いずれ本体をつなぐ役割をする。
和布刈(めかり)に行き、わが杖を。
そして最後に竜王崎に豊玉姫を迎えに行き、預けた竜宮の門の鍵をもらい、玉手箱の中にすべてを入れ、門の鍵を上に置き、投げ入れよ。
すべてのワダツミの祠(ほこら)にワダツミが戻る。
海より来たる敵、我が国を滅ぼさんとする者、封じることとなる。
あとは任せればよい」
「和布刈神社ですね。金と銀の扇を持った人と行った所ですか。九州と山口の間の波が回る所の下ですね」
「杖はそこで。午前中に行けばよい。白皇がすること。手を広げればよい。その手に私の杖が乗る。縮めれば小さくなる」
そう告げると、しばらくして石に戻って行った。
その石は数年前、菊如たちが志賀島の勝馬(かつま)すなわち、沖津宮のある浜からもらってきた物だった。
その時、神事をしたら、丸い光が降りて来たので、この石に入れて持ち帰ったという。
その石は二つあった。一つは船、一つは帆のような形をしていた。
組み合わせるとまるで帆掛け船のような形になった。
このワダツミの神の言葉を聞いて私はいささか驚いた。
これから困難があるのかと思っていたが、いともあっさりと二つの奉納先が告げられたからだ。
一つはやはり和布刈神社だった。
そして、もう一つは糸島。道に迷って偶然に行った例の船越の綿積神社だ。
それから、揃った物を持って行くところは大島。
そこにある竜宮の島。
それが何処にあるのか。
候補はあったが、これまた行ってみないと分からなかった。
持っていく日は5月3日。
その日に竜宮祭が行われるのは分かっていた。
既にその祭に参加することを決めていた。
連休なので、宿も早くから押さえていた。
決行するのはその日だ。
場所はきっと現地で分かるだろう。
多分、厳島神社から見える海だ。
その前に、あと二つを奉納しに行こう。
四人の日程を合わせればよい。
時計を見ると、既に22時になろうとしていた。
これで終わりだと思ったが、話そうとする別の存在が現れた。
20181002
異世界小説