2018年 10月 08日
ワダツミ20 ウガヤフキアエズ2 名も無き人として死んだ
ウガヤフキアエズ2
名も無き人として死んだ
七つの珠をすべて奉納し、七つの宝具を手に入れた夜、菊如たちはそれを精査し、翌日、その結果を崋山が知らせてくれた。
まず、途中で訪れた貴布祢神社について話してくれた。
小倉駅の東にあるこの神社で、白皇が頭が痛いと言い出した所だ。
企救の長浜という白砂清松の地だった。
そこに祀られていた八大龍王は青い龍だったそうだ。
1300年頃にここに祀られ始めたのだが、汚れて朽ちかけていた。
それを癒すと本来の姿に蘇ったという。
そして、ウガヤフキアエズについて結願をしたらしい。
なんと、この企救の長浜で起きた事件が出て来たという。
サワラビメのミコトが志賀島に攻め入り、本物のウガヤフキアエズを見つけ出して殺したという話をしていたが、やはり人違いだったという。
確かに、誰が王子なのか判別は困難な時代なので、一理ある話だ。
崋山によると、
本物のウガヤフキアエズは船に乗って陸伝いに東に逃げた。
黒い衣装で、短い烏帽子のようなものを被っていたという。
そうして着いた所がこの小倉の企救の長浜だった。
ところが、そこでは二部族の間に戦いが起きていた。
何も知らずに船でやって来たウガヤフキアエズは戦いに巻き込まれてあっさりと死んでしまったのだという。
名も無き人として。
この戦いから、そこは赤坂という地名になったとも。
実際、赤坂海岸と言う地名がある。
歴史的に考えると、ウガヤフキアエズにはその功績が伝わっていない。
名も無き人として死んでしまったとしたら、確かに伝わるものはない。
ウガヤフキアエズの記憶を持つ白皇が貴布祢神社の境内に入ったとたん、頭痛を訴えたのはこの時の記憶だったのだろうか。
崋山が言うには、当時、海の民と陸の者の争いも起きていた。
陸の者からみると、ワダツミの神は津波や竜巻、台風をもたらす悪神なので封印されたのだという。
なるほど、そういう事か。
しかし、謎が一つ解け、また一つ増えてしまった。
この日分かったのは、サワラビメのミコトが殺したウガヤフキアエズはダミーで、本物は北九州に逃げて現地の戦いに巻き込まれて死んでしまったという事だ。
それは分かったのだが、宇土に逃げたウガヤフキアエズは何だったのか。
これもダミーと言うのか。
宇土の方も子供が出来ていない。
歴史的にはウガヤフキアエズは玉依姫と契って神武天皇が生まれている。
赤坂のウガヤも早々と死んでしまったなら、神武は生まれていないことになる。
まあ、異世界にアクセスしているのだから、歴史と同じ必要はないのだが。
しかし異世界は異世界で矛盾無い世界があるはずだった。
20181008
異世界小説