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ひもろぎ逍遥

ワダツミ26 庸2 秘められたウガヤの出生



 ワダツミ26  

庸2 

秘められたウガヤの出生

 
  
 
2018年6月2日 。私たちは再び集まって結願をした。
竜宮祭から一月経っていた。

菊如は宙から庸(よう)のカケラの一部を取り出し、崋山の額に入れた。

すぐに庸が現れた。

菊如はきさくに語り掛けた。
「庸さんお久しぶりです。あれから足は良いですか?」
庸はなかなか答えない。首を振り、うつむいて右手で畳をかく。

「どうされました?」
しゃべれないでいた。

「舌がないのね」
菊如は倶利伽羅龍王の術で舌を戻し、聖水を飲ませた。

すると庸は話せるようになって、
「私が姉に渡した子はウガヤではございません」
と言った。

庸の話はその死の直前から始まった。
庸は瀕死の状態で子を姉に託したのだ。

「その子は誰の子?」
「姉にウガヤとして渡したのは私の子です」

「あなたの子をどうして?
豊玉姫様と山幸彦様のお話ではない?
庸さんと山幸彦さんのお話?」

「豊玉姫には子がいたのですか?」
庸はうなずいたが、菊如は真実を見抜いた。「本当は庸さんのお子様…?」
庸はたまらず、うなずいてしまった。

「ご心配されないでください、過ちなどは誰にもあることです」
そう言って慰めると、菊如は白皇を指して、
「ここにいるのは本当のウガヤですか?」
と確認した。
「そうです」

「あなたの子ですか?」
「そうです」
庸はしっかりと答えた。

「どうしてそのようにしてしまわれたのですか?」
「…。話します」

菊如の前では嘘をつき通せないと観念したのだろう。
庸は真実を語り始めた。


「実は豊玉姫には子はいません」
皆が驚き、息を呑んだ。

そして、私は質問をした。

「どういうことか良く分かりませんが」
「豊玉姫には子はいません。
海と陸を結ぶには、どうしても豊玉姫とあの方の御子が必要で…。

でも、豊玉姫には子ができませんでした。

それで豊玉姫は
『私の代わりに子を生んで、その子を身代わりに。
その代わりにあなたのことを血を分けた姉妹としましょう。未来永劫』
と言われたのです」


「それでは本当のウガヤは?」
「本当のウガヤは、豊玉姫の子ですが、私が生んだ子です」

「あなたの子に違いないのですね」
「はい。豊玉姫の子ではありません。
そのことを言ってはならぬ、と私は舌を切られました。
他言してはいけないと。
そうしないと、また海と陸の戦が始まると…」

「豊玉姫と山幸彦は結婚し、あなたの子を養子にしたということですか。
豊玉姫と山幸彦の結びはあったのですか?」

「ありました。
豊玉姫は一人ぼっちでした。子が出来ぬから。
人間たちと交わることができず…。

海の者は子が出来ずとも気にしませんが、陸の者は違っていました。
それでは海とこの地は永遠に戦い続けなければならない。
ずっと、せかされ、追い詰められました」

「豊玉姫があなたに頼んだのですか」
「はい。豊玉姫が私に頼みました。
『この国、我らの海を守るため、そなたの力を貸してくれないか』と。

私は生まれてからずっと豊玉姫と一緒でした。
豊玉姫の苦しみも分かりました。

でも、山幸彦様はこの事を知りません。

子が生まれる半年前から、豊玉姫は山幸彦様に逢っておりません。
お腹が大きくなると共に、豊玉姫のお腹も布で大きくしていきました」

懐妊したように見せかけることは出来ようが、男女の契りはどうしたのだ。
豊玉姫の寝所に庸がいて、山幸彦が気づかなかったというのか。
敢えてそこを尋ねることにした。

「でも、契りはどうされたのですか?」
「暗闇ではわかりませぬ」

そうか。
現代の夜と古代の闇ではその差は大きいのかもしれないが…。

庸が続けた。
「豊玉姫も私もこの国の為の事でした。
ただ、山幸彦様のことは私も嫌いではありませんでした。

これは誰にも話してはならぬと言われ…。

ただ自分の子を自分で育てたかった、それだけでした。
それは許されぬことでした。
私が連れ去らなければウガヤにはまた違った未来があったと考えます…」

誰にも話せぬように舌を切られても、庸は我が子を胸に抱ければそれでよかった。
しかし三日育てると情愛は極まり、手放せなくなってしまい、
我が子として育てたくなった。

四日目に竜宮から子を抱いて逃げ、陸に向かい、
途中でサメに足を喰われ、浜に打ち上げられた。
姉に子を預けて亡くなってしまった。

「だから、この前は話せなかったですね。それを」
菊如は言った。




20181014


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by lunabura | 2018-10-14 20:05 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

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