ブログトップ

ひもろぎ逍遥

ワダツミ27 和葉 玉依 ウガヤを預かる



 ワダツミ27  

和葉 玉依 

ウガヤを預かる

 
  
 
封印されていた秘密を語った庸(よう)に、菊如は尋ねた。
「この中にお姉さまはおられますか?」
「おります」

「どの方でしょうか?」
庸は琴音(ことね)を指した。
琴音も既に自分の事だと分かっていた。
そのまま立ち上がって鈴音の側に行き、手を取り合って寄り添った。

菊如は庸に尋ねた。
「お姉さまのお名前は何とおっしゃるんですか?」
「姉の名は和葉(わよう)といいます」
そう言うと、鈴音は泣き崩れた。
そしてあふれる感情のまま、泣きながら謝った。

「私の我儘で全てを台無しにしてしまいました。
豊玉姫を傷付けてしまいました。
姉上の未来を壊してしまいました。

本当に申し訳なく思うております。
姉上の未来を台無しにして、申し訳なく思うております。

姉上はあの後、私を砂に埋め、ウガヤを抱きかかえ、暗い山の中に走り去りました。

姉上はそれから人目を避け、ウガヤを守ろうとしましたが、海ではなく、人間たちに捕えられました。

ワダツミの神は怒り、そして気付いてしまったのです。
豊玉姫の子ではないと。

それから海と陸の門を閉じました。

そして姉上も海には帰れず、でも陸の人間とも違う、そういう生き方になりました。
すべて私の我儘のせいで…」
庸は泣いて泣いて泣きながら謝り続けた。

「母心やもんね」
と菊如はやさしく慰めた。

そして尋ねた。
「お姉さまは知っていたのですか」
「姉上は全部知っていました。ただこれは人に言われると大変なことに。
私たちが考えても、結局のところ戦は起こってしまいました」

「長いから幸せでもなく、その時、一生懸命生きた事が大切ですよ。
素晴らしい人に生まれ変わっていますよ。」
と、菊如は諭すが、庸は泣き止まない。
「すべてをひっくり返してしまいました」
と嘆く。

「恵まれた人生がいいとは限らないのです。
何回も生まれ変わっています。
色々な経験をなさって、現世で素晴らしい方になっていらっしゃる。

あなたは世の中に貢献していらっしゃいます。
ウガヤの生まれ変わりは良い子に育っていますよ。

結果が良ければ良いのです。
今日、会えて良かったですね」

これを聞いて庸も少し心が晴れたようだった。
「これが私の罪、それを明らかにする事、それが条件でした。

ワダツミの怒りはおさまり、新しい時代に入っていきます。
私がこれを話すこと…。

私は姉上に謝りたかった、もうそれだけです。
私は罪を償いました」

「ウガヤの生まれ変わりに霊力があるのは何故ですか」
「もともと玉依の一族。巫女みたいなもんですから」
ウガヤの生まれ変わりの白皇は菊如たちと行動するうちに霊力を目覚めさせ始めていた。

ワダツミの神の直系ではない事が明らかになったが、玉依の一族も霊力が高い集団なので、その力を受け継いでいるという。

「ウガヤに伝えたい事はありますか?」
「私の我儘でこういう形になってしまいましたが、私の子としてより、豊玉姫の子として生きた方が幸せだったと思います…。
豊玉姫の子ならワダツミの孫。
それを何度も考える日々でございます」

「どっちが良かったかなんてわからないですよ。
あなた無くして生まれた子ではないのですから。

ところで、今ここに、関係する人々が集まっているのは何故でしょうか?」
「重要だから海の者たちが集まっているのです」



庸は海から打ち上げられたが、そこには姉の和葉が待っていた。
そして子を預かり、庸の亡骸を埋め、山に入っていった。
その後、人間に見つかってしまったという。

一方ワダツミの神はウガヤが豊玉姫の子ではないことを知った。

そののち海と陸の門が閉じられたという。

この物語の場所は志賀島の勝馬(かつま)。
勝馬には沖津宮と仲津宮と表津宮の三社が海を囲んで建っている。

その海の近くに洞窟があり、神々はそこから時々この海に姿を現すことから、神遊瀬とも呼ばれた。

その浜にワダツミの神の陸地の神殿があったと、崋山は語った。



20181015

『神功皇后伝承を歩く』下巻71志賀海神社



異世界小説 


[PR]
by lunabura | 2018-10-15 20:50 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

綾杉るなのブログ 神社伝承を求めてぶらぶら歩き 『神功皇后伝承を歩く』『ガイアの森』   Since2009.10.25

by lunabura