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ひもろぎ逍遥

ワダツミ30 クグマ2 津波



 ワダツミ30  

クグマ2 津波

 
  
 

ヌタから豊玉姫を預かったクグマがワダツミの神と交渉するという。
どうやって連絡するのか、尋ねてみた。

「どんな風に?」
「ワシ等は海に行き、産卵時期の亀の卵をそのまま海に流す。
亀の卵がワダツミとの交渉の合図。
ワダツミと話したければ亀の卵が必要。
亀の卵が鍵となる。
それが合図となる。

ワシ等は交渉した。
インドから大きな船がやって来る。
嵐や波にもまれることなく着けるようにと。
金を精製する道具が沢山乗っている。
ここの者たちは一つ一つ水でこさいでやっている。
そんな事をする必要はない。

その約束を取り付けるため『そなたの娘は預かった』とな。

それでどうなったか。

ワシ等は津波に飲まれてもろとも海の中。
あの呪は我らではなく、ワダツミの神が懸けたもの。

ワダツミの神があの地に豊玉姫を封じ込めた。
言う事を聞かぬ姫を閉じ込めた。
それだけのこと。

(戻ったとしても)大国主はここには入って来れぬ。
海は渡れぬからなあ。」

―豊玉姫にかけていた呪は父の仕業だという。
ワダツミの神が言う事を聞かぬあの地に封じ込めた?
状況がよく呑み込めなかった。

それでは大国主はどうなったのか、聞くことにした。

「大国主は?」 
「大国主の話?ヌタか」  

「ヌタは大国主なのですか」
「ヌタと名乗ったが、大国主と今では分かっておる。
『遠い異国の地から来た。我が名はヌタ』と言った」

「何処に行きたいと言ったのですか」
「島国から出ると本土に向かうと。
この島を渡り、この国の中心に向かう」

「この島とは九州ですか?」
「ああ」

「この国の中心とは何処ですか」
「宗像だ。
ワシ等の時代はほとんどが海。
陸が続いているのは宗像だった。
この九州の三分の一しか陸地が無い時代だ。

宗像を中心に栄え、鞍手は今で言う奥の院と言ったところか。
金が動き、外から船が入って来て出入りする。
栄える中心が宗像。

様々な力を持った者が集まる鞍手は不思議な所だった。
経済は宗像。政治は鞍手。
鞍手は外からは分からぬ。人を寄せ付けぬ。
むやみには入られぬ。猿田峠は関所だった」


鞍手にあるというシナイ山について菊如が尋ねた。
「シナイ山はご存知?」
「あそこには魔物が住むと、誰も近づかぬ。黒い山。誰も近寄れぬ」

「どうしてですか」
「魔物が住む。黒い狼が降りてくる。山に近寄ると、黒い狼が」
そう言うと「ここはきつい」と浄化された部屋を見まわした。
「すみません」
と何故か、謝る菊如。


「クグマさんは津波の時、どうされたんですか」
「もろともに、あの海に。
全部ワダツミの神のせいだ。
あの偉大なる力を何とかせねば、この地は栄えぬ。
この地を広げなければ。
この地はカネになる。」

「岡垣あたりですか」
「このあたり一帯、金は採れる、鉄は採れる、まだまだ鉱物が沢山採れる。
海に沈めておくのはもったいない。
もともと住んでいる者たちはキラキラするものが何かは知らない。
金がカネになることを。
鉄というものさえ知らない。
種を蒔いて作物を作っている。
もったいない。
噂は海賊に広まり、皆この土地を狙うようになった。
黄金の国ジパングはこの九州のことよ」

「津波の時、大島や沖ノ島も沈んだのですか」
「もっと大きかった。地震と津波で沈んだ。歩いていた」

私は尋ねた。
「螺旋階段のある四つの柱のことはご存知ですか」
「もともと上にあったのが地震で沈んだ」

「四つの柱の噂は聞いたことがありますか」
「沖ノ島の神殿のことか?
あの神殿。ワシは一度だけ見た。陸の上にあるのを。

腕の下にヒレのようなものがついた、ワシ等とは違う生き物がいる。
人の形はしているが、指に膜がある。
女は薄い服を着ている。
男は耳がギザギザで、手には薄い膜が張っているのを見た。
歩くとぺチぺチと足音がする。
聞いた話だが、海賊たちから、ワシ等とは体が違う、近寄るなと言われた。
毛は無い」

「それがワダツミの一族ではないですか」
「ワダツミの神と会ったわけではないからな。
海に卵を投げ入れ、大きな声で叫んだだけ」

「豊玉姫はどうなったのですか」
「津波でやられている時だ、豊玉姫のことは知らん。
水浸しで一週間は水が引かなかった。
-ああ、体が楽になった」


「ワシの中のヘビもどっか行ったんだろう。体が楽になった。
食べ物も何もかも流され、塩水を呑めば命を縮める。
意識が遠のく中で見たのは水の上の死体と、きれいな朝日の光。
まるで、ざまあみろ、とワダツミの神が笑っているようだった」

菊如が尋ねた。
「出雲は何処にありましたか。九州ですか」
「先程から言っておる」

「鞍手ですか」
「政治には暦を読む者、星を読む者、月を読むものがいる。
それは今でも続いているではないか」

私は尋ねた。
「インド人がいたのですか」
「いろんな国のやつら。それこそ黒い目、青い目、陣地を取り合うように。金が採れるからな。いろんな国から来ておった。
   
もらった玉から、あれは豊玉姫かと思ったが、本物かどうかはワシ等には分からん。
ただ二つ泡が見えた。これが話に聞く珠かと思った」

菊如はビジョンに見えていた人のことを尋ねた。
「占いをしていた人はどんな方?」
「オバアのことか。ワシ等の村のオバアのことか。石占いのオバア。
石とこれくらい(十センチ)の竹で占う。
竹は「→」の形をしていた。
石は12個だった。鞍手に住んでおる。会ったことはねえ」

「大国主神社となっているんですよ。あなたのいた所は。
何故、豊玉姫、大国主を語る者がおったか分かりませんか?本物ですか?」

男は必死に思い出していた。
「オーアガタノヌシ。
あのヌタがそう言われていた事を思い出した。
ここいらには、よそ者はあまり来ないからな」

私は尋ねた。
「ヌタは津波の後、戻って来たんでしょうか」
「どこもかしこも水。何を目印に探す。
土を掘る仕事。全部大きな津波に飲みこまれた。
真っ暗な中にゴーッと聞こえ、まず大風が吹いた。
地響きがし、地震かと思ったら、爆音と共に大水がすべてを押し倒し、流していった。

あっという間じゃ。そして水が引いた。
飲み水さえない。どうやって生きる。
これがワダツミの神の怒りかと改めて思ったよ」

そう言うと、しばらくしてクグマは去った。


―クグマ族が日本に来た頃、宗像が中心として経済で栄え、鞍手は政治の地として人を寄せ付けなかったという。そこが出雲だとも。

岡垣の大国主神社は山付きにあるが、標高を見ると、当時は海が側まで来ていたようだ。そこにやって来たヌタは船を頼み、女を預けて去った。

ヌタはオオアガタヌシと呼ばれていたが、それがのちの大国主のことだろうという。

女が渡した珠を、クグマは干珠満珠と思い、女はワダツミの娘と思った。
そこでインドから道具を載せて来る船の安全を保障してもらうために、ワダツミの神と交渉したら、地震と津波が起こり、クグマらは飲み込まれてしまった。
以上が概要だ。

結局、アリサの魂の物語までは到達しなかった。
呪に引かれて出て来たクグマの話で終わってしまった。


20181029

「ワダツミ」の前の部分を読む時には、
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by lunabura | 2018-10-29 21:11 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

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