2018年 11月 13日
ワダツミ35 ヤキター村のマクロ―1
ヤキター村のマクロ―1
この物語の始まりが2017年10月10日だった。
それから一年経って、2018年10月10日に、菊如と崋山は再び気になる所を回る事にした。
菊如は、大国主が動き始めている、という。
そして、「朝倉の大己貴神社はどうかしら」と私に尋ねた。
私は、
「大国主なら、飯塚に「出雲」があって、最近の統廃合で地名が失われたけど、信号機にかろうじて名前が残っているから、そこはどう?」
と言った。続けて、
「その南の土師(はじ)には老松神社があって、そこに大国主と少彦名がやって来たという、大変珍しい縁起があるの。
大国主の足跡を伝える神社はめったにないのよ。
そこから山越えしたら朝倉の大己貴神社にも行ける。
出雲に行ったなら、一度は王塚古墳を見たらいいよ」
そんな話をした。
菊如は「大国主神社にもう一度行こうかな」と言った。
「それはいいね!」
そうだ、再びそこから始めて思いつくまま南下すればよい。
二人は導かれるまま必要な所に行くだろう。
そして、二日後、10月12日に私たちは結願のために再び集まった。
そして、一人の男が崋山に懸かった。
その男は両手首が縛られているようにみえた。
そして、しきりに自分の左肩を示す。
菊如は尋ねた。
「どうされました?手が結ばれているんですね。」
男は言葉は返さず、右手でやはり左の肩、正確には上腕を掴んでみせた。
「そこ、どうされたんですか。どういう意味ですか。お話しください。肩をどうされたのですか」
「肩に二本の線があるやつらが攻め入って来た」
「どこに?10日に行った川ですか、遺跡ですか」
「遺跡」
それは王塚古墳を指していた。
「集団で来たのですか」
「色は浅黒かった」
「私は菊如と申します。あなたさまのお名前は?」
「私の名前か…、私の名前…は、マクロ―。肩に二本の線が…。
あの辺りには我らの村があった」
「何という村ですか」
「我らの村はヤキタ―」
「あの一帯に集落があったのですね。今は王塚古墳となっている所ですか」
「我らの村はあの反対側の山の麓だ。もともと鉱山があった。様々な集落が集まって奥深く金を掘っていた所だ」
「(王塚古墳は)立派な方のお墓だったみたいですよ」
「私は誰が入っているか知らん。私の時代は金を深く掘っているしかない」
「あなたがいた頃からあったのですか」
「あの場所は我らが掘っていた場所。深く掘っていた場所。山ではなかった」
どうやら王塚古墳が出来る前の話だ。この古墳には石炭の層があり、それを掘ろうとして見つかった古墳だ。危うく壊される所を、一人の男が命を張って守った。
この石炭層のさらに下に金鉱脈があったのだろうか。あるいはピンポイントではなく、その付近一帯の話なのだろう。
マクロ―は山側の方に住んで、金を掘っていたという。そのヤキター村に、ある日浅黒い顔の集団が襲って来て、マクロ―は捕えられたようだ。その集団は左肩に二本の線を彫っていた。入れ墨だろうか。
(つづく)
(この記事、2012年10月10日にUPしてた(*_*)
ヤキタ―の村は左手の山の麓かな?
(今の考えとは少々違っていますねえ。想像の部分は思考の過程と思って読んでください)
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