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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ 1 馬上の武人

脇巫女Ⅱ 




もう一度「脇巫女」(わきみこ)。

四年前に記した「脇巫女」は謎解きバージョンでした。
まだまだ謎は続いているのですが、ある程度、流れが分かったので、今日から新しいバージョンを書こうと思います。
同じ内容ですが、物語として、以前書かなかったことも加えて行こうと思います。
タイトルは「脇巫女Ⅱ」。
小説です。


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2015年11月6日。

私と七色と星読が出会った時から、この物語は始まった。

七色は鞍手町に住む女性で、見えない世界との関係で苦しむ人たちを祈りで助けていた。
星読も同じ鞍手町に住み、町の繁栄のために尽力していた。

七色はこのブログの読者だった。
ある日、星読に出会った時、私の噂をしたらしい。
星読は私に会いたいと言い、それを聞いた私は三人で会う事にした。

その日、私は一枚の写真を見せられた。

それは白黒の写真で、古代の衣装の女性が立つ姿が写っていた。黒く長い髪に冠を付け、白い衣装を身に着けていた。飛行機の中から外を撮った時のものだという。いわゆる騎龍観音像に構成が似ていたが、それを写したものではない。

私はそれを見た瞬間、ある女神の名が浮かんだ。
「誰だと思いますか」と尋ねられるままに、「イチシキマヒメ?」と答えると、七色は「そうです」と言った。

このイチキシマヒメは宗像三女神の一柱として知られている。

宗像大社の姫神だが、もともと三女神がこの鞍手町の六ケ岳(むつがたけ)に降臨した話が風土記逸文に書かれている。三女神神話の故郷がこの鞍手(くらて)町だった。

私たちは鞍手の古代の話をした。

三女神が六ケ岳に降臨したこと。
日本武尊が来たこと。
その子の仲哀天皇が神功皇后を連れて来たこと。
熱田神宮の神剣が新羅の僧侶によって盗まれたが、その剣が古物神社(ふるもの)に落ちて来た事。
などなど。
随分長く話し込んだ。


その翌日の朝だった。私はあるヴィジョンを見た。

朝のまどろみの中、馬上の武人が現れた。

馬は栗色。武人も同じ色だ。低い連山を後ろにして、稲を刈り取った田んぼにたたずんでいた。
――武人の幽霊だ。
私は一瞬ひるんだが、受け入れた。

するとその姿が近づいて来た。私は何か声を掛けたかったが、かわりに水を差し上げた。
武人は無表情で馬に乗ったまま、私のすぐ横を通り抜けていった。

「私たちは国のために戦ったのだ」
そんな思いが流れ込んできた。

次に現れたのは破壊されようとする古墳だった。
クレーンが巨大な石室の石を持ち上げる映像が迫ってきた。
せめて死者の尊厳と敬意を忘れなかっただろうか。

こんなヴィジョンだった。


その数日後、私は所用で再び鞍手に出かけた。

ナフコというホームセンターが見える田んぼの畔をブラブラと歩いた。
戻ろうかと思い、立ち止まって目を上げると、そこにヴィジョンで見た丘陵があった。

緑色で低く、なだらなか丘。あまりに似ていた。
まさしく私はここに立っていた。

そして丘の方に馬上の武人が現れて私の側を通り過ぎていったのだ。
まさに、ここだった。

馬上の武人はこの鞍手の古代の人だ。そう確信した。




一方、星読は三人が出会った夜、突然、言葉が出て来たという。
それが一週間続いているというので、三人は再び会う事にした。

星読が言葉を記した紙を見せてくれた。次のような文だった。

2015年11月6日 (一)

この地に眠りし者たちよ、われはこの地に住むものなり

この地に眠りし者たちよ、われは眠りを妨げる者にあらず、眠りを守るものなり

この地を守りし者なり

力をあたえよ、財を与えよ

この地を守り、深き永き眠りを守らせたまえ


「われ」とは星読自身の事だという。
この鞍手に眠る者たちに、自分は眠りを守る者だと告げていた。

星読が呼びかけた「眠りし者たち」と私が見た古墳の破壊のヴィジョンは同じものを指しているのだろうか。奇妙な符合だった。

鞍手には古墳が多い。銀冠塚古墳のように重要な古墳も既に破壊されていた。

私は鞍手の地図を広げると、馬上の武人が現れた場所を示した。

「馬上の武人が現れた場所は鞍手インターチェンジの近くにあるナフコというホームセンターの近くなんです。正面に連山があるでしょ」
と私が言うと「星読」の顔色が変わった。
「分かった。その場所は開発されようとしている所ですよ」

「もう土地が売られたんですか」
星読はうなずいた。

「誰が購入したんですか」
星読は頭を左右に振った。

「何が建つんですか」
「分からない」
「アマゾンみたいなものらしいですよ」と、七色が言った。

馬上の武人の背景に広がる低い連山はすでに開発されようとしていた。そして、そこにはおびただしい古墳群があるという。
「ユンボを入れれば、ザクザクというくらい出るそうですよ」
と七色が言った。

馬上の武人はそれを知らせようとしていたのだろうか。
星読はそれを守る人ということか。

古墳に眠る者たちは鞍手のご先祖さまなのだ。その眠りを妨げることが町の発展に良いとは思えなかった。それを知らせようとしているのだろうか。

この町の丘陵という丘陵には古墳か遺跡があると言っても過言ではなかったが、町では古墳の分布図は作成されていないという。古代には海が入り込んでいたこの地では、人々は丘陵地帯で暮らし、祈り、埋葬したので、現代の生活域と遺跡群が重なるのは致し方なかった。

しかし、団地や商業施設はたかだか50年のスパンで不要となっていく。それに対して古墳は1500年もの間、鎮まって末裔たちを見守って来た。

ここは「物部の里」なのだから、朝廷に関わっている所なのだ。ここを明らかにすれば、古代史が明らかになるような重要な地だった。



<20190813>



「脇巫女」はコチラ  
「脇巫女Ⅱ」を始めから読む⇒コチラ





Commented by hoshiyomi at 2019-08-16 04:46 x
なつかしい・・・・・

ありがとう・・・・・
by lunabura | 2019-08-13 20:41 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(1)

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