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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ 5 六ケ岳のシリウスの出


脇巫女Ⅱ


5 六ケ岳のシリウスの出


 

星読は町の危険地域のチェックに乗り出した。

それは実際に三年後に大雨警報が出た時に役に立った。大雨の中、チェックした現地に入ると、民家に大水が流れ込もうとしていた。星読は水の進路を土のうで塞いで流れを変えて浸水を食い止めた。



さて、話を戻すが、タツが計算して見つけ出した「六嶽神社から見えるシリウスの出」を星読は実際に確認しにいった。そして、メールで実況中継のように刻々と連絡をくれた。12月8日だった。

20:20
「三女神はオリオン座の三連星に関係あるのでは」
20:26
「別の星が山頂から上がった」

私はパソコンにフリーソフトのステラ・シアター・ライトを立ち上げて、星図を見ていた。
それはミルザムという星だとすぐにわかった。

真鍋大覚によると、和名は鐸石別星(つくしわけのほし)で、蹈鞴(たたら)に関連する星だった。

いくつもの和名を持つ星だが、「ささらのほし」と呼ぶ民もいた。これは「さざれいし」の古語で、砂鉄を指す。ポツンと「砂鉄の星」が出て、その直後に「白金色に輝くシリウス」が出てくるのだ。蹈鞴の民はきっと、砂鉄が見事な白銀色の鉄となることを祈ったのだろう。

この後、シリウスが出ると、星読は直接電話で興奮したようすで状況を説明した。
「シリウスは山の稜線に沿って山頂に昇っていった」

私もシリウスを見にいく予定にしていたが、その年の冬は雨や曇りが多く、12月25日にようやく天気予報に星マークが出た。
この日は満月だった。
古代人は月の朔望の日に併せて神事をするのではないか、と狙った日だった。

私は星読と神社の前で合流して観測地に向かった。最初は六嶽神社の正面から参拝するつもりだったが、冬の漆黒の参道はライトを持っていても恐ろしげだった。

民家の間の車道を通って拝殿の裏手に上がり、そこから参拝した。

拝殿の上を見るとオリオンの三ツ星が縦になっていた。確かに、意味ありげな位置だった。

ここからは六ケ岳は拝殿が邪魔をして見えない。その裏手の公民館の脇に出ると、ほんの一箇所、六ケ岳が見える所があった。

タツの予測した時刻は20:30。
山頂に達する時刻だ。シリウスが出るのはその10分前。

満月に照らされて山の稜線が良く見えた。
二つのピークが見える。
その左手の山にシリウスは昇る。
そしてその山こそ崎戸山(さきとやま)だという。
そう、三女神が降臨したのは六ケ岳の内の「崎戸山」なのだ。


外気温は5度。
満月に照らされる崎戸山を見つめた。宙でピカッピカッと何かが光った。そしてその真下からついにシリウスが出て来た。

樹木の間からクリアなプラチナ色がぽつんと見えた。太陽と違って光芒がないのでクリアだ。色は赤、青、緑、黄色、白と変化しながら光彩を放っている。白銀色ではあるが、チカチカと変化していた。
星の全体が出ると、稜線を昇り始めた。速い。シリウスの動きが目で観測できた。

木のてっぺんを一つ一つ辿りながら動いているのがよくわかる。まるで意思を持つ者のように。

三分の一ほど稜線を辿るとシリウスは上を見た。そしておもむろに稜線を離れていった。
離陸した飛行機より大きな角度でぐんぐんと頂上を目指す。

シリウスが頂上のラインに達した時には山頂からかなり上の位置にいた。
タツが計算した通りだった。

そして、私たちは更にその上で淡く輝くオリオンの三ツ星も気にしていた。

この後、山頂と三ツ星とシリウスが一直線に並ぶのではないか。

シリウスがガンガン昇ってくるのを三ツ星は歩調を緩めて待っていた。
それはまるで三女神がセイリオスを待つ姿に見えた。

シリウスの別名、セイリオス。

これがセオリスと変化したのなら、まさしくセオリツ姫を三女神がお守りするような位置関係だった。だから、六つのピークのうち、三女神が降臨したのは「崎戸山」でなければならなかった。三女神が降臨したというのはこの瞬間ではないか。

「周囲の四つの星は三女神を祀っているように見えるね」
と星読が言った。

まるで四天王のように三つの星を囲んで四方に鎮座する星々の位置関係は仏教の曼荼羅とそっくりだった。阿弥陀の両脇を脇侍仏が固め、四天王が四方の睨みを利かす。四天王の発想もまた、オリオン座から生まれたのかもしれない。

崎戸山の稜線は黒く神奈備山のシルエットを描いていた。シリウスを追う間、白い雪のようなオーラが山を覆ったり、雲のように下がったりした。不思議な現象だった。

そして、私たちは拝殿前に戻って三ツ星を見上げた。ようやく三ツ星が拝殿の真上に移動してきた。シリウスがあれほどの距離を移動した間に三ツ星はほんの少ししか移動していなかった。

それから後のことだが、ヨーロッパの狩人オリオンの絵と六ケ岳のオリオン座を並べていて、はっとした。
オリオンの三ツ星はベルトで、その下にオリオン大星雲がある。その星団がオリオンの剣だ。

そう、日本神話では、三女神はスサノヲの剣から生まれていた。
ギリシア神話のオリオンとスサノヲの剣神話が重なった瞬間だった。

<20190818>



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Commented by hoshiyomi at 2019-08-18 21:47 x
思い出しますねー

シリウスの美しく輝く光
今年もまた会えるかなー

あの輝きに・・・・・
by lunabura | 2019-08-18 21:00 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(1)

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