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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ 17 ミヤズ姫


脇巫女Ⅱ

17 ミヤズ姫


別の日、結願の時にサンジカネモチが現れた。
星読は前世の自分であるカネモチに「イチキシマ姫すなわちサヨリ姫」について尋ねた。

(サンジカネモチに)「イチキシマ姫」のことを尋ねてみた

われわれは、かの地から一族で海を渡ってきた
この地は、土地は痩せており、農耕には向かない

そこで暮らす「やまとの民」は貧しい暮らしをしていた
しかし、われらは知っていた
この地で採れる「黒だま」の価値を

われらの「たたら衆」の技術は「やまと」のものとは比べられないほど
優れていた

われら一族は、この地を奪いに来たのではない
この地に、ただただ住みたかった
われらの農耕の術も優れていた
だが、われらの風貌は「やまとの民」には異様に見えた
体は大きく
身に着けているものは鮮やかな色彩をしておる
言葉も通じない

当時、壱岐は貿易の要衝であった
壱岐・対馬は危険な場所でもあったがな

そこの「姫」はわれらの言葉を操ることが出来る
この地に暮らす「やまとの民」にわれらのことを説得してくれた

われらは、直ぐに打ち解けることが出来た
「姫」のおかげじゃ

だが、言葉が分からん
「姫」はわれらに「やまとことば」を教えるために残ってくれたのじゃ

この「姫」のことを
われらは「壱岐・対馬の姫」じゃから
「イチキシマ姫」と呼んでおった

本当の名は・・・確か・・・「さより姫」と言っておった
心優しい姫だった
いつも「黒だま」では武器は造らぬように、と言っていた

「サンジカネモチ」は「熱田」をまとめる者であった


懐かしそうに話すと、「サンジカネモチ」は戻っていった

◇◇◇

やはりムナカタ物部の言うように、熱田モノノベは後から渡来した。
そして、新しい農耕技術と黒玉の精錬技術を鞍手にもたらした。

サンジカネモチらは大きな体で鮮やかな衣装を身に着けていた。
サヨリ姫は通訳としてヤマトの民との間を取り持ったおかげで、渡来した時、戦いは起きなかった。

この後、結願はミヤズ姫の件に移った。

熱田のミヤズ姫はヤマトタケルと政略結婚の為に小牧辺りに屋敷を構えた。警固はフルべモノノベの兵が行っていた。

サンジカネモチはヤマトタケルと戦う時、ミヤズ姫をフルべモノノベの拠点に連れて行って預けた。

2016年3月10日。

私はこの時の関連者だろうということで、私の胸から魂の記憶の一枚が抜かれ、崋山の額に入れられた。

崋山は急に身を縮めて辺りを見回した。恐怖に満ちた声で語った。

「ここはどこ?
誰も帰ってこない。このような所にいつまで。
タケル様はどこじゃ。
何があった。
タケル様に何があった。
こんな所に閉じ込められて。
外がざわついている

こんな蔵に閉じ込めて置いて。
カネモチは何処に行った。
皆、武器を持って固めておる。
戦が始まるのか」

崋山が語るのを見ていた星読は急に胸を押さえて苦しみだした。
菊如はそれを観て、星読を崋山の前に座らせた。

星読の過去生・サンジカネモチが現れて苦しんでいた。

崋山に懸かったミヤズ姫と星読から現れたサンジカネモチが語り合う形になった。

ミヤズ姫が詰問した。
「タケル様は何処じゃ」
「姫…」

「何をした」
「タケルの命、もはや…。
姫を苦しめただけのタケルは在らず。
姫のため、この手で…。
姫を守るため。

ご安心なされ。
カネモチがこの手で…。
姫、もう心配いらぬ。
姫、我に続け。
この地を去りましょう」

ミヤズ姫は何が起きたのか、悟った。
「わらわは待つ。タケル様を待つ。死んだりなんかせぬ」
「タケルは二度と現れませぬ」

ミヤズ姫はサンジカネモチにきっぱりと言った。
「わらわの前から去れ」
「何とぞ我と共に」カネモチは両手をついて言った。

「わらわの前から去れ」
「それほどまでに…」

「わらわの前から去れ」
「お許しくだされ。タケルと共に居ることができます」

一瞬、サンジカネモチの剣がミヤズ姫の喉を切った。

ミヤズ姫は何が起こったかもわからず、座ったまま絶命した。


しばらくして、ミヤズ姫の魂が語った。
「わらわはカネモチに刺された。喉をやられた。
人を思ういちずな気持ちが、何故、このような次第に流されねばならぬかのう。

遠い異国の地から来て、やっとこの地に根付き、このようなことになろうとはのう。
何故、タケル様はわらわの元に来ぬ…」

サンジカネモチが答えた。
「戦のことで心がいっぱいだったのです。
人を思う気持ちの余裕がなかったのです」

「しかし、ジングウと会っているではないか。
「密談をしていました」

「わらわよりジングウと会っているのではないか。
そんなにジングウはすごいのか」

「姫を苦しめる者をカネモチが…。
姫は誰にも渡しませぬ。
生まれ変わられて、また一緒に」

「我はいくぞ。わらわの命を奪いし者よ」

こうして、ミヤズ姫は崋山から去って行った。

過去において、星読は私を殺した。

<20191020>



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by lunabura | 2019-10-20 16:51 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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