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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ 20 ヤマトタケル ふたたび


脇巫女Ⅱ


20 ヤマトタケル ふたたび




その年の冬、12月5日に再び結願をすることになった。
その前に鞍手をまわった。
新延大塚古墳の石室を見学し、それからヤマトタケルの墓所に行った。

菊如はそこで祈ったあと、宙に向かって語り掛けた。
「今夜、鞍手のことについて結願をします。多くの方が待ってありますが、全部伺うことは出来ぬゆえ、誰が話すのか、皆さんで話し合ってください」

そう伝えた後、私たちは夜に集合した。

結願が始まると、ヤマトタケルが再び現れた。
「何を我に聞きたいのか」
「今日は何ゆえに来られましたか」

「そなたが聞きたいのではないか」タケルは左腕を押さえていた。

「痛みますか」
「ああ。いや。いろんなことが起きた」

「ここにミヤズ姫がいます。何か話すことはありますか」
「そういう時代に巻き込まれ、我は様々な物を犠牲にした。
我がメイ(命)はこの地を治めること。
我が生命尽きる時、メイを受け継ぐものあらば良し。
それゆえ、我、心をこの地に置かず。人に置かず。
我がメイを行うのみ。

ただ、そなたは我の事を慈しみ、我を求めた。
その思い、我は心に留めし。
ただ、その瞳、その瞳を見ること、我はせず。
我、ゆめゆめ、そなたの瞳を見ることをせず。

ただ生命尽き、そなたの思いを…。
我、そなたを迎えにいくこともせず。

そなたが考えるヤマトタケルは、本当のヤマトタケルにあらず。

我、あの地に眠る。
あの地に眠る我から七代、ヤマトタケルは代わる。知人は無し。

一人は病に臥し、一人は山を通りし時、民のイノシシの罠に落ちた。
青い目のヤマトタケルは四番目まで。
五番目のタケルは薄い茶色、あとは皆黒だ。目だけは隠せぬ」

このように、ヤマトタケルは私に語り掛けた。
私は、タケルが何を言っているのか理解できず、遠い世界の話として聞いた。

しかし、タケルの言葉が一段落すると、菊如が
「るなさん、何か聞きたい事は?」と促した。
聞きたい事は何もない。しかし、口から出た言葉は意外なものだった。

「木月で神功皇后と会っていたのですか」
恨みがましい言葉だった。

それを聞いたタケルは溜息を付きながら、頭を振って応えた。
「神功皇后はすごい方。私のような者はとてもとても。足元に及ばぬ方。
神功皇后は私の代わりのヤマトタケルが発動することも知っておられた。
そばにはスクネがおる。
三人の計画。
この三人に仲哀天皇は入らず。仲哀天皇はお飾りだった。
それを良く思う訳はないはずだが、何故仲哀天皇が表に出ないのか。
表に出られぬ訳がある。

仲哀天皇は殺された。二代目の仲哀天皇はヤマト国の者ではない。
今の中国。
応神天皇が生まれてすぐに薬を盛られて亡くなった。
仲哀天皇はいつも前に御簾(みす)を掛けていたので、誰も気づかなかった。
神功皇后はのちに唐と呼ばれるようになる国との繋がりもある」

「神功皇后は?」
「神功皇后はヤマト国。
唐と手を結ばねばならなかった。
仲哀天皇が殺されねばならない理由を知っていた。
あの姫を連れていたのは二代目ヤマトタケルだ」

「二代目仲哀天皇はいつまで生きていたのですか」
「スクネと共に行動した。スクネのはかりごと。二代目は42歳まで。
ドウジマと呼ばれる島に幽閉された。
神功皇后とは最期まで会わずじまい」

「どうして、あなたはミヤズ姫の目を見なかったのですか」
「目を見れば、受け入れてしまうではないか。
ヤマトタケルはこの国を一つにまとめるための者。統率者」

「日本書紀には名前は小碓(おうす・こうず)と書かれていますが」
「私は小碓(こうず)ではない。
自分の人生をヤマトタケルとして終わらせることが我がメイだった。
何事も深くあいまみえることなく、我がメイのために生きることが幸せか。

我は神功皇后に『我は何ゆえ、ヤマトタケルとして生きて行かねばならぬのか』といつも言った。
神功皇后は「メイのために生き、メイのために死す」と言われた。

我は未熟ゆえに生命を落とした。
あの時、信じたばかりに。
サンジカネモチは『我らに従う。和平を結ぶ』と言ったのだ。

あの刃(やいば)。
不意打ちだった。
前から堂々とな。

今、崋山の身体に入りし時、神功皇后の言葉を思い出した。
『この世に信ずるものはない。自分だけだ。
この世は力を持つ者と裏切られる者がいる』
神功皇后は我に『考えが甘い』とよく叱られた。

月の民と暮らす神功皇后を愛していたか?
いくつ違う。
私の八つ上だ」

「仲哀天皇は生まれた子がスクネの子と知ったので、殺された。
神功皇后と仲哀天皇の子は流れた。

『神の子』
この世界に起こる嵐。この世の嵐を収める。
初めは応神が神の子と思っていた。
その前に生命を落とした。

『はかりごと』
仲哀、神功、スクネのはかりごと。
神功と唐のはかりごと。
中心にいるのが神功皇后。

サンジカネモチは忠義のある者だったが、ミヤズ姫のことになると熱くなった。
一つの事に集中すると熱くなる。
そういう者こそ国を治めるのに適した者と思ったが、荒ぶる心を押さえられぬ所があった。

サンジカネモチは『我を信じよ』と言った。民に向けて。
我はカネモチを信じた。

そこをどう捉えるか。
信じた者を討つも、敵であっても、すべてあの時代の流れ、と。

ヤマトタケルとして死に、このように表に出る。
そなたらが知っておるような立派なものではない。
沢山の者を殺した。
それらが上がらねば、我も上がれぬ。
六人のヤマトタケルも同じ思いを引きずっている。

サンジカネモチはこの地を守るため、国を守るため、やり方は違えど、繰り返してはならぬ。

何が足りなかったのか。
あの頃出来なかったこと。今は出来る。
手を組んでいる者と。

神々は、しかと土の中より立ち上がり、出て来ておる。
もう最後じゃ。
最後の固め直し。

サンジカネモチは申し訳ないと思う前に、出来ることがある。
我の代わりに国を治め、手本となる道の歩き方をせよ。
そなたから歩き出せ。

ミヤズ姫はケタケタと笑う明るい姫だった。
我が死んだことを伝えたかった。
友好の証しだった。

二代目ヤマトタケルは久山(ひさやま)を通り、長崎の方に回った。
クマソから挑んで来た。
あれを収めねば、収まらない。
スクネも華奢(きゃしゃ)な身体付きで、淡い薄い布を巻くだけで女と思われる。
スクネの案で二人で行った。妙な力があった。相手の考えの裏の裏を読む力があった。

亀甲で占ったのはスクネだ。興味があった。

『新日本司』
船が着く。
鉱山の岩に船が着く。
武器を求めて他国からも来た。岩山―キラキラと輝く。
岬になっていた。

鞍手の白山には二代目が入った。

長谷観音の地は、我らの言葉をしゃべらぬ者たちが住む場所だった。赤い色が付いている。我らが行く所ではない。

我が鞍手にいたのは、3年3か月ぐらいだ。鞍手を本拠として移動した」

「始まったばかりだ」
そう伝えると、ヤマトタケルは去って行った。


<2019023>




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by lunabura | 2019-10-23 21:19 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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