2019年 11月 03日
脇巫女Ⅱ 24 スクネの最期
脇巫女Ⅱ
24 スクネの最期
2016年12月5日に話を戻そう。
鞍手を廻り、鞍手について結願をするので、誰が語るのか話し合うように、と告げた日のことだ。
この日はヤマトタケルが最期のようすを語ったが、その直後にスクネが出て来た。
菊如は語り掛けた。
「初めまして。ご用件は何でしょうか」
「我は武内宿禰。この有様を見よ。この足を」
「いつそうなったのですか」
「サラシナの沖合で船から落とされた」
「誰からですか」
「我を消そうと思う者」
「神功皇后ですか」
「我は用無しじゃ。神の子を授かった。この事態は調べるでない。いい話として収めることはできない。人間は心を痛めるだけじゃ」
「生まれ変わっていますよね。何処かではかりごとをされていますよね」
「どう語られようが、我は何とも思わない。しいて言うなら、この国のため」
「何処で亡くなったのですか」
「海。我の骸(むくろ)は何処にあるか知りたいか。業を正さないと同じだ。何度も繰り返す。
これからの時代、別の方向に使っていける。執着するのはもったいない」
「左肩はどうされたのですか?木で打たれて落とされたのですか?」
「小舟で我を入れて三人。先に様子を見てくるように言われ、明かりを持って船の先頭に立っていた我に、後ろから一突き。暗い海に落とされた」
「何かを受け取りに行ったのですか」
「そう。取り換えるためじゃ」
「何を?」
「赤子を取り換える。島に幽閉されていた赤子を取り換えに。
しかし赤子もろとも海へ。
…わが子。セオリツ。
沖ノ島に向かっていた」
「何故迎えに?」
「時が来た。セオリツと落ちた。我と神功皇后と…神の力を得た子。
我の力を受け継いだ子。何としても守りたかった。
我は暗い海に引きずり込まれ、セオリツは我が手から離れて…
どうなったか分からぬ」
こうして、この日スクネもまた自分の最期の様子を語った。
私はスクネが何故いきなりこの話をするのか、その意図が分からなかった。
そこで私はスクネに、この話をブログに書いていいのか、尋ねた。
スクネは「どちらでも構わぬ」と言った。
だから、私は書かないことにした。
しかし、一年半後に再びスクネが現れた。
その時は、殴打された時の痛烈な痛みを崋山に経験させる、というやり方だった。
私はスクネの話を再び聞くことになった。
しかし、この時も、書く気にならなかった。
私はその時既に「脇巫女」を終わらせていた。
しかし、ブログの読者のヒカリが鞍手に来た時、大きな、犬のような耳のある女性が現れた、と聞いて、六嶽の犬神が守っていた六角形の箱の話を思い出した。
これと関係があるのだろうか。
そんな疑問が生まれ、スクネの話を記録することにした。
<20191103>
異世界小説
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