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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ42 第二代ヤマトタケル1 スクネの最期の真実は

脇巫女Ⅱ

42 第二代ヤマトタケル1 

スクネの最期の真実は




この日、菊如が第二ヤマトタケルではないか睨んでいる人物も居合わせていた。
この人がそうなら、セオリツの行方を知っている。
その時代の魂の記憶を取り出して崋山の第三の目に入れた。

崋山は男の姿になった。
男は胡坐を組むと片膝を立ててニヤリとした。
「何か聞きたい事があるのか」

菊如が尋ねた。
「お名前は?」
「ヤマトタケルだ。第二代目のな」

「鞍手に居られたんですよね」
「ああ。あのころは楽しかった。一番楽しかった」

「なのにどうして出て行かれたんですか」

「私にはせねばならぬことがある。一つの地域に留まれない存在だ。心はどこにも置かぬ。
まだまだこの国を直さねばならぬ。そのために私は造られた。私のそばには仲間がいた。

使命を受けて訓練された仲間が。幼い頃集められ、教えられ、使命の為に生きる者たちだ。
そう、私は今では私を祀ると剣が強くなると言われておる。しかし私は剣などは信じておらぬ」


「戦略を立てるのが得意だったのですね」

「ああ。戦いは理に合わぬ。
スクネは私を人タラシと呼んでいた。

戦略といってもほとんどはスクネが立てていた。それに乗っかれば良かった。私の方が人に好かれた。

私たちは考えた。交渉の場はスクネが前に出て、私は後ろから見つめるだけにしようと。戦は戦の上手な者がすればいい。
顔色一つ変えず、どんなに窮地に置かれても、私が平静にしておれば、皆は安心して盛り返す。私が慌てれば兵たちは心を失う。

私はいつなんどきもこの姿勢を崩さず。一番トップの者が一番先に出て戦うのはいけない。
それじゃあ駄目だ。微笑んで馬に乗っておれば良い。あとはスクネが整える。私を慕う騎馬兵たちが沢山いる。

あの日は、私の発動命令が出て、行ってみると死体でいっぱいだった。戦のあとだった。

その情勢を把握するため、馬に乗って見廻ると、あのカネモチが膝を尽き、最期の力を振り絞って私を見て驚いていた。

私は何故驚くのか分からなかった。不思議であった。
私はそれを見て、この地を後にした。私はこの地ですることは何もない。

あちらの山の方で強い男が戦っている。兵が進まんと聞いて、その山に向かった。
鞍手を後にした。鞍手はその時が最後だ」


「どの方向、西の方ですか。佐賀の方ですか」
「ああ。石占いの女に聞いた。三本の道がある。どれがいいかと。一本の道を教えられた。そこを進むと良いと。怖いものなどなかった」

「一つぐらいは、あったと思いますが」
「楽しかった。戦が楽しかった。思うように事が進む。私は一つ心残りと言えば、最大の友を失くしたこと」

「それはどなたですか」
「ここで私に申せというのか。・・・最大の友を失くした。この手で殺めた。スクネを殺した」

――あのサンジカネモチが登場した。第二ヤマトタケルが見たのは物部同士の戦いの後だった。
第二ヤマトタケルは幼い時から戦う人間として徹底して仕込まれた。
そして、スクネを殺したことも認めた。

私は尋ねた。

「スクネを何故殺したのですか」

「スクネは信頼の友、最大の友だった。何故かと?使命のためだ。私が任務の為に最大の友をこの手で殺めた。
この任務を遂行するために私は呼ばれた。後悔はしておらぬが、心にぽっかりと穴が開いた」

「つらかったのですね」

「つらい?つらいという心を持てば自分が苦しい。我々のような者は心を持たぬ方が生きていける。スクネも同じようなものだ。ただ一つ、スクネは人間の心を出してしまった。人としての私情をこの任務に挟んでしまった。それ故、亡き者にするしかなかった。私は後悔などしておらぬ」

「どうやってスクネを殺したのですか」

「スクネの最期か」

「舟に乗せたんでしょう」

「二人でセオリツを迎えに行こうと誘った。暗闇の中、沖ノ島に舟を進めた」

「それは偽りの誘いだったのですね。セオリツを迎えに行くというのは」

「そうだ。スクネの最期を見ぬため、暗闇を選んだ。夜なら、皆の目にさらされない。スクネの遺体が人目にさらさずに済む。そして私はスクネに対して刀で斬ることは出来なかった。刀を握れなかった。

知っておるか。
刀を抜くというのは、斬ったとしても、すぐに死んだりできない。一日、二日と苦しんで死ぬ。
上手な位置を切れば一瞬で死ぬが、私にそんな腕は無かった。

沖ノ島に行こうと誘い、二人で行った。舟を漕ぐ者もいた。 
沖ノ島に近づくと、船の底に石が当たるようになった。スクネが灯りを持って先端に立ち、前を見ているところを、後ろから丸太で殴った。スクネの頭をぶち割った」

――タケルの言葉はスクネの言葉と呼応していた。ただ、セオリツについては、名が出て来なかった。

「スクネはセオリツと共に沈んだと言っていましたが、セオリツを抱いていましたか?そのセオリツは違う者ですか」
「スクネは赤子を手にしていなかった」

「でも、一緒に死んだと言っていますが」
「私はセオリツを殺すことはせぬ。スクネと一緒に赤ん坊の命を取ることはせぬ」

――そうすると、赤ん坊と一緒に沈んだというのはスクネの記憶違いだったのか。
セオリツの行方はタケルしか知らない。ここで突き止めないと二度とチャンスは来ないかもしれない。
(つづく)

<20200102>





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脇巫女Ⅱ42 第二代ヤマトタケル1 スクネの最期の真実は_c0222861_18414040.jpg

by lunabura | 2020-01-02 15:07 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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