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ひもろぎ逍遥

ウーナⅡ8 ガードゥ3 何が起きた


ガードゥが裏切られ、苦しんでいることは分かったが、いったい何が起きたのか、明らかにせねば、力になることもできない。

ここからは、バトンタッチして、私が質問することになった。

「12人の男女の比は分かりますか」
「姫を除けて女5人対男7人」

これほどクリアに答えが出てくるとは思っていなかった。もう少し詳しく尋ねてみよう。

「あの三人。二人の男が一人の女を争ったと言いましたが、その三人は?」
「?」
――質問の意味が伝わっていないか。

「転生した人の中に、思い当たる人がありますか。残った二人はカップルになっているか」
「ああ」
――この日集まった中にはいないようだった。

シナイ山での出来事も明らかにせねばならなかった。
「ガードゥは一人で六ケ岳に登ったのですか」
「共に登った者がいる」

「あなたはどうやって死んだのですか」

「祈りをして天からヤコブの杖を手に入れるため六ケ岳に登った。杖を手に入れた瞬間に背中を刺された。
雷が鳴った。
倒れながら杖を埋めた。私を刺した男は山を下りた。雨に打たれながらこんなものか、と思った。逆に我を恥じた。人をやすやすと信じた我を恥じた」


「一緒に登った人は誰ですか」
「当時、ウメルと言った。物部だ。道案内に必要だった」

「六ケ岳、あなたの言うシナイ山はどんな山だったのですか」

「巨大な岩山で、登るのに3日かかった。我らには使命があった。ヤコブの杖を手に入れるという。
この地を狙う者がいた。だから、高い山に登りヤコブの杖でこの地を覆い尽くす結界を張るため、杖を降ろさねばならなかった。ヤコブが手に持っておった石板を手にして。

あの地で杖と石板をもってヤハエの復活を願ったが、叶わなかった。石板は天に戻し、杖をあの山に埋めた」


「道案内の物部は私たちの周りにいますか?」
ガードゥは否定はしなかった。

「その魂の確認ができますか。誰なのか」
「私がか」
「ええ」
しかし、答えはなかった。

ここまでで、ガードゥは物部のウメルに道案内を頼み、三日かけてシナイ山に登ったことが分かった。ガードゥは結界を張るためにヤコブの杖を手に入れ、石板と共に神の復活を祈ったが、ウメルから刺されて倒れ、雷の中、杖を埋めて死んだ。

ウメルは何故ガードゥを刺したのか、動機が分からない。またのちに明らかにせねばならないだろう。

もう一点。エジプトから救い出したシュメールの姫、ウーナはこの時、何をしたのだろうか。

「石板を降ろすのはウーナの役目ですか」

「ウーナはその前に殺された」

――!!!何と、ウーナは殺された?
え?え?
ウーナをここに連れてくるのが目的ではなかったのか。
いったい何が起きたのか。

私は気を取り直して尋ねた。

「誰に」
「一緒の船で来たサマルだ」

「なんで殺されたのですか」

「あいつはもともと自分の村が貧乏で、母一人でサマルの帰りを待っておった。どうしてどうして、なかなか人の良い男だったが、ウーナの首飾りに惹かれた。

私は金品欲しさに狙ったのかと思ったが、魔に憑かれておったと分かった。ウーナの首飾りを持っていた」

「ウーナの首飾りをサマルが?」

「シナイ山に登る前、夜に儀式をして、おのれで首飾りを取り、背中の霊体を本体に移す予定だった」

「その首飾りが欲しくてサマルはウーナを殺したのですか」
「首飾りを欲しかった魔物はアズールだ。あの頃はアズールがトップに立っていた。ルシファーはあとだ」

――エジプトでウーナが殉死する直前に救い出したサマルがウーナを殺した。しかし、それをさせたのは魔物のアズールという。

「では、儀式が出来なかったのではないですか」

「首飾りを持って行って石板を降ろした。ウーナと私の心は一つ。魂を呼び、どうかこの地のために我が仲間として力を貸してくれ、と祈りを共に捧げると、十刻の石板が降りて来た。その場で上に返した。
上から稲光がして、雨が降り、私は倒れ、土を掘り、杖を埋めた。
左手にウーナの首飾りを持っていたかもしれない」


ここで菊如が尋ねた。
「シナイ山が低くなったのを知っていますか」
「大地震が起きて崩れた」

――いつのことだ。時代が知りたかった。いったいどうやったら分かるのだろうか。
西暦の無い時代に、時代をどう尋ねたらいいのだ。それでも私は尋ねずにはいられなかった。

「それはいつのことですか。何か分かりませんか」
ダメ元で尋ねると、崋山が見えているものをそのまま書いてみよう、と言った。

  「Ⅵ」
  「Ⅲ」
  「Ⅹ」
横並びに「ⅥⅢⅩ」と書いた。ローマ文字だった。

「どっちから読むのですか」
「右からだ」

そうすると「1036」となる。もし、鏡文字だとしたら、ⅥはⅣと入れ替わり、「1034」となる。

どうしたものか、悩むと、菊如が1から10までの数字を紙に書いて崋山に指させた。

ところが、それを見て、崋山は1から10までを指文字で示し始めた。

右手でイイねマークのように親指を出すと「1」
   小指を立てると「2」
   中指を立てると「3」
   薬指を立てると「4」
   人差し指を立てると「5」

左手で親指と小指を立てると「6」
   小指を立てると「7」
   中指を立てると「8」
   薬指を立てると「9」
   ゲンコツで「10」

「ウーナから習った」と言った。

たしかに指文字や手文字は船乗りたちが風の中で声が届かない時には有効だ。
しかし、まさか、ここでそれを見るとは思いもしなかった。

それから崋山が指文字で示したのは「1034」年だった。

確認しなかったが、これは紀元前のことだろう。
紀元前1034年となる。

何故か、この時、私とアリサは指文字をすぐに覚えて、二人で楽しんだ。菊如と崋山はあきれて見ていた。今では全く覚えていないが。


さて、もう一つ聞きたい事があった。ヤコブの杖は埋められたあとどうなったのか。
「杖はどうなったのですか」

「杖は、陥没の時、山の中心が崩れ、外から覆い隠すようになった。中心は下に崩れて行った。その杖と12人が集まって次の試みが始まる。この試練を超えないとヤコブより運ばれて来ぬ」

「杖でなく別の物が降りてくる?」
「杖を浮き上がらせる」
良く分からない。

「崎門(さきと)山に下見に行った、あの日に始まりを告げたのですか」

「また試みる、と、また始まる、と、繰り返す中で心は疲弊していた。傷つくことがいやになり、他の人に任せたかったが、神々が私を選ぶ。

譲ってやってもいいが、神々は私を見つける。私にはまだその答えは分からない。決して望んではおらぬ。
何かがあるかもしれないという期待は持てるように心を向けて行こうと思う。
どこまでやれるかは分からんが」

崎門山とは六ケ岳の一峰。三女神が降臨したと言われる山のことだ。

ガードゥは転生しながら、再びこの課題に取り組まねばならないようだった。

<20200121>



「ウーナⅡ」を始めから読む
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ウーナⅡ8 ガードゥ3 何が起きた_c0222861_15441632.jpg

by lunabura | 2020-01-21 21:15 | 「ウーナⅡ」 | Comments(0)

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