2020年 03月 28日
脇巫女Ⅱ52 初代ヤマトタケル4
私は初代タケルに尋ねた。
「そうすると第二タケルも一緒に育ったんですね」
「ああ。私より若かった。成長している姿を知っている。タケルとして、というよりは、育っていく中で選ばれていくものだ。どういう思いで育っているのかは分からぬが、剣の強い者、神託のある者、風、星を読む者など能力の違いがあり、それぞれの力を伸ばした。
第二タケルは、身なり、話しぶりや目を見て、後継ぎになるだろうと思った。
私があの地を出発した後は知らない。
私は私の任務を果たすだけだ。
神功皇后が来やすいようにお膳立てをする。
勢いのある物部たちを黙らせるのが目的だった。
『お前たちは古い。もっと世界を見よ』と」
「そうすると、壺探しはもうやめたのですか」
「いつの間にか私の中では消えたが、父にとっては主なことであった。遠征していく中で不思議な壺や鏡、剣がこの地に沢山あるのを耳にした。やはり黄金の島だと思った。
地域の者たちが良く知っていた。
私が鎮圧した民には物部よりも楽な暮らしにさせた。私と居た方が生活がいいと思わせるようにした」
――歴史上はヤマトタケルの父は十二代景行天皇ということになっている。それは違うのだろうか。
「あなたのお父さんは天皇だと歴史ではなっているんですが、そうなんですか」
「父はミツヨシと出雲に居て、オサダというより朝廷の方と関わりを持った。
発端はオサダの物部が、クラージュの増長し出した物部を危ぶみ、抑え込まねばならぬと思い、父の壺探しと一致したことからだった」
「ということは、お父さんは天皇ではないという事ですね。間違いないですか」
タケルはいったん肯定したが、直後に意外な言葉を付け加えた。
「もし、刷り替わっていたとしたら?」
――なるほど。わざわざそんな言葉を付け足すということは、それが本当なのだろう。
天皇という言葉を私は使ったが、当時はまだ「大王」という称号しかなかった時代だ。統一国家などはなく、各地に女王や大王がいたに過ぎない。系譜は後付けでどうにでもなる時代だった。ヴェベル・エンコアが天皇とすり替わったとしても、誰にも分からない。
「途中で、ですね」と私は応じて言った。「結局、オサダ・ヒコが勝利を収めたけど、仲哀天皇が病弱だったので、朝廷といっても実質的には動かしていたのはオサダ・ヒコという事ですね」というと、タケルは「仲哀天皇が戦乱の世を動かすことはない」と答えた。
――仲哀天皇は歴史上はヤマトタケルの子となっているが、これも違うと言うのだろう。
私は尋ねた。
「仲哀天皇は何者と聞いていましたか。倭人ですか」
「ああ倭人だ。幼少の頃、床に臥せっている時にしか会ったことはない」
「オサダ・ヒコが実際は朝廷を動かしていたのですね。代々世襲でしたか。その時代はミツヨシとかオサダ・ヒコ・ミツヨシとかいう名で」
「ああ。世襲だ」
「結局、物部は島根出雲とクラージュに分かれていて、これは実質、物部同士が戦う物語なのですね」
と私は結論づけて言った。
ここで琴音とバトンタッチした。
琴音が聞いた。
「ミツヨシは何代目でしたか」
「私はその頃、オサダ・ヒコは何代あるかは知らなかった。タケルから後に聞いた。三代目と聞いた」
――三代目か…。意外に近いな。
それというのもワダツミの神を封印した物部氏の名にオサダ・ヒコの名が別の日に上がって来たのだ。「脇巫女」の時代が三代目だとすると、初代が活躍したのはわずか数十年程度前の話になる。
「ワダツミ」の時代が分からず、いくつか問題を抱えていたが、オサダ・ヒコを基準とすると、「ワダツミ」と「脇巫女」の時代は二~三世代しか差がないことになる。
この話をタケルが知っているかどうかは分からないが、一応尋ねてみることにした。
「オサダ・ヒコとワダツミの戦いみたいなものは聞いたことがありますか」
「同じような力を持ったものが封印したと聞いた。神をも敵に回すとは。
神をも封印できる者たちがいることを初めて知った。
あの頃は海が荒れていた。仲間を失うことは多かった。
ワダツミには二面性があった。荒ぶる顔と穏やかな顔とを持っていた。
海は脅威だった。
当然、ワダツミは言う事を聞かぬ神だから、操るにはどうしたら良いか。人間が考えることは、ワダツミの娘を自分の妻として迎えることか、あるいは浅はかな考えで封印することか、だ。
私は興味はない」
「ミツヨシはワダツミを封印していないのですね」
「していない」
「初代オサダ・ヒコが封印したことは?」
「知らない」
話が終わると、タケルは私をじっと見た。
<20200328>
パラレルワールド 異世界小説
「脇巫女」はコチラ
「脇巫女Ⅱ」を始めから読む⇒コチラ










