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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ54 仲哀天皇 



それから時が経って、仲哀天皇を呼び出すことにした。

病弱だった仲哀天皇は島根出雲にあった朝廷で即位したという。
それから福岡の香椎宮に遷宮したが、その最期は側近のスクネに毒を盛られたというものだった。

すぐに仲哀天皇が現れて、語り出した。

「これが私の終わり。私のこの世に生を受けた因果。
私は何の意味を持ってこの世に生まれ、時を過ごし、生命を閉じる。
私の生に何の意味があった。
人として生きる中で、何者かの考えですべての事柄が進む。自分の意味とは関係なく、一つのコマのように物事が進んでいく。私の生きる意味は何だった?
未だに分からぬ。

私は長く床に臥せ、考える時間が沢山あった。私の想い描いていた私の世界は、今のこの私を取り巻く周辺とは違った。ふと現実に戻る。身体は言うことを聞かず、意見を問う者もおらぬ。すべては
まるで人形のように、こんな世に生まれたくはなかった。
私は生を恨んだ。周りからは崇め奉られ、当の本人は…。

私は一つ思った。
本を読んだ。輪廻転生というものがあって様々な人生を歩むことを。
次には誰にも頼らずに切り開いてみせよう、誰かの策略には乗らず、自分で切り開こう、そう決めた。

私の名を見てみよ。哀しみしか無い名前だ。その私の名はすべてが現れておるではないか。
何か言いたいことはないのか」

菊如が言った。
「天皇の家系に生まれた方々は皆複雑な背景の中におられ、そこに生まれただけで大変な思いをされていますが、食べる事もままならぬ人生に生まれた者もいます」

「天皇になりたくて生まれたわけではない。
何をするにも一人では出来ず、三、四人がいつもついて歩いた。それが幸せか。
私の自由の時間などはない。
事ある毎に、天皇の意味、この国の長たる姿、心得、そればかり重んじる。自分の心と周りの状況はどんどん、ずれていった。自由に山、海を…いいや海など見たことは無い。この意味が分かるか」

「どういう意味ですか」
「この国に伝わる伝承とは違う」
「駕籠の中にいたのですか」
「私は幼い頃から持病を持ち、身体は強くなかった。私の影武者が三人作られた。私は名前が生きておった。私ではなく、私という名前が大切であった。この国ではそういうこと。
私の名。私という家系が大切だった。

そなたとの話は後に。政治的な流れを聞きたい者がおる」

そう言うと、仲哀天皇は私を見た。
ここからは私が尋ねた。
「あなたの名前を教えてください。本当の名前です」
「私の名は栄天(えいてん)」

「仲哀天皇になられたのですね」
「私はその名は好かん。哀しい、つらい、寂しい、空しいが詰まった名だ」

「慈恩さんではなかったですか」
「慈恩だ。我らの時代は位が進むうちに名前が変わる。慈恩から七歳の時に栄天となった」

「天皇になったのはいくつの時ですか」
「十五の時だ」

「お父さんはどなたですか」
「父親?私の中では父親と共に触れ合ったことはない」

「お父さんは天皇だったのですか。お名前は?」
「神武だ」

「あなたの前の天皇はどなたですか」
「前の天皇は女性と聞いた。私は天皇らしきことは何もしていない。床に臥せってばかりで」

「景行天皇の名前は知っていますか」
「会ったことは無いが、名前は聞いている」

「あなたの一つ前の天皇は女性だということですが、成務天皇ですか」
「女性なのに方々を動き回った。先頭に立って各地を回って行脚したと聞いている。
ある日、次の天皇が私だと知らせが来た。どうにか排除することはできないかと言ったが駄目だった」

「天皇になった時、妃はいたのですか」
「十七歳の年にある女性と知りあった。いや、勝手な縁組よ」

「どなたですか」
「夫婦になった時の名か」

「はい」
「神納(じんのう)。そういう者に興味はなかった。生命が尽きるのを待った。書物で魂は生まれ変わることを知って、早くこの生命が尽き、普通の思いのままに生きていけるように願った。この国にはとらわれず、もっと広い地、狭い国でなくて、生まれ変わりたいと思った。
この国には何の未練もない。恩恵を感じたことも、血筋に捉われたこともない」

この神納という人が神功皇后のことだ。

仲哀天皇自身が言うように、この話は日本の歴史とは全く系譜が違っていた。

歴史では12代景行天皇の子供にヤマトタケルや後の13代成務天皇がいた。ヤマトタケルの子供が14代仲哀天皇だ。ヤマトタケルが若死にしたので、13代は弟の成務天皇が即位したが、成務天皇が死ぬと甥の14代仲哀天皇が即位した。仲哀天皇には妃がいたが、即位して神功皇后を皇后として迎えた。


これに対して、異世界の仲哀天皇は次のように答えた。
仲哀天皇の幼少の名は慈恩。7歳の時に栄天となり、15歳で即位した。17歳の時、神功皇后を后とした。
父は神武。(これが初代神武天皇かどうかは未確認)
仲哀天皇の前の天皇は女性天皇。これが成務天皇の時代に当たる人となろう。

景行天皇は存在しているが、ヴェベル・エンコアがすり替わったかもしれない。
ヤマトタケルはヴェベル・エンコアの子。

経歴を書き変えれば、何となく歴史と対応する印象を受けた。

さて、この後、「脇巫女」がどのように展開するのか、あるいはしないのか、誰も知らない。


<20200331>





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by lunabura | 2020-03-31 20:02 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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