2020年 04月 29日
ウーナⅡ27 イマソラ・ガジュ 旅の目的は
ガードゥは失敗したという。
しかし、そもそも旅の目的は何だったのか。
ガードゥは誰にもそれを語らずに人々を船に乗せている。
どうやったら、旅の目的が分かるのか。
想いを巡らすと、ガジュが浮かんだ。
ガジュは日本に上陸して間もなく病死したが、最初からいた人物だ。
ガジュは最長老だった。といっても30代だ。
ガジュは琴音に転生していた。
ガジュを呼び出して話を聞くことにした。
20191130
「お名前は?」
「私の名はイマソラ・ガジュ」
咳をしていた。病気になってからのガジュだった。
私は早速尋ねた。
「あなたはガードゥと出会ってシナイ山に行きましたか?」
「出会ったというか、小さい頃から共に育ちました」
「何族ですか。ユダヤ人ですか」
「私たちの時代は何族という名前はついていませんでした」
「お父さんの名前は何ですか」
「イワンです」
「どうして船に乗ることになったのですか」
「私は船に乗るガードゥに、共にいくと言いました。ガードゥの危うい所を止められるのは私しかいませんでした」
「何歳の時に船に乗ったのですか」
「私とガードゥは二人でした。私は31歳の時です」
「何をしに行ったんですか」
「最初は壺を探しに行かねばなりませんでした。特別の壺らしいです」
「水が湧くという壺ですか」
「ええ。私たちは船に乗って、東の方へ。湾になっている所があり、その奥に滝があり、その奥に洞窟がありました。そこに壺がありました。一つはそこ。もう一つは別の所にあって、手に入りませんでした。必要なのは一つを探しに行って手に入れることでした。重要なものは二つあります」
「誰から壺を探せと言われたのですか」
「ガードゥの父親から言われました。
洗礼をガードゥが受け、ガードゥに神の啓示を直接伝えたりし、見えたりすると次の指示がありました。
父の話は聞けません。
スタートの壺を探すのは父の試しです。すべての兄弟に同じことを言い、見つけ出した者に次なる神の指示が下りるとか。それを見つけ出したのがガードゥです」
「神の啓示とは父親でなく、黄金の壺を見つけたガードゥに直接下りるのですか」
「ええ。首飾りを探すように啓示がありました。三連の首飾りを。
何処にあるのかもわからなかったのですが、ある村に着いたとき、三連の首飾りを見たことがあるという人がいました。
ある姫が付けていると。それを見に行こうと思いましたが、その姫はこの地にはいないと言われました」
「で、どうしたのですか」
「聞きました。その姫は何処にいるのかと。すると、エジプトの方に婚礼の為に行ったと言いました」
「それであなたたちはエジプトに行ったのですか」
「私は止めました。どういう役割をするのかも分かっていなかったから。嫁入りした姫の首飾りを手に入れるなど、二人では無理だと。
ただ、ガードゥは深い事は話しません。旅先では私の方が人々とコンタクトを取りました。すると、村の老人から聞いたのです。決して望んだ婚礼ではないと。
その国は巨大で兵隊も大きい。二人で乗り込むことを止めました。
何か方法がないかと、遠回りをしていくうちに、港で話し合いました。
ガードゥと私たちに足りないものは何かと。
まず、私にしてもガードゥにしても見かけは良くない。人に威圧感を与える。柔らかい者がいる。女性でもいれば紛れこまれる。まず女性を仲間にしようと。
ガードゥは乗り気ではなかったのですが、水を得るために寄った港に大きな透明の玉と火を使う双子の占い師がいると聞いて、そこに行きました。
そこには双子の男と女がいました。女の方が占いが出来ると聞きました。
「私たちは何をしに行くのか」
と聞くと、占い師は
「首飾りを探しに行っている」と言いました。私は驚きました。それで旅の目的を話しました。
「ある姫が囚われている。あの大きな国に。迎えに行きたいが、力を貸してくれ」と。すると、双子は
「実は夢に見るんです。夢で船で旅立つと。旅に誘う人物が来たら共に行きなさい、と」
私たちは意気投合しました。双子の兄が
「私たちは昔から伝わる二つの鏡を手に入れる必要があるのです。見てみたい。秘密のドアの開く鏡を。私は半信半疑でしたが、船に乗るなら共に探しに行きましょうと言いました。
その前に姫を探そうということになりました。どうしても姫の力が要ると。
そこで、次の日の朝、出発しました。
まず巨大な砂漠の地に着きました。その双子のおかげですんなりと上陸できました。
大きな町がありました。
どこかで怒鳴り声がして、行ってみると、一人の男が捕まっていました。その男は泣いて詫びていますが、亭主は許しませんでした。
詫びる男のお尻に引っ掛かっている金色に輝くナイフのようなランプのような物が目につきました。そのナイフが欲しくてたまらなくなりました。
宝石のついているナイフです。
捕まっている男のことが気になったガードゥは双子に通訳を頼み、亭主に、『盗みをしたらしいが、私が金を払うから、男を解放してくれないか』と頼みました。それで解放された男は私に礼を言いました。
『自分は本当は盗人はしない。兵士だ。戦いに長けている。軍隊から追い出されたが、力がある。味方にすれば役に立つ。船に乗せてくれ』と男の方から言ってきました。
確かにその男は、何が何処にあるか、一度言えば覚えるような才能があり、街を見れば出るのに掛かる時間、通路が何処に出るか、見抜く力がありました。
その男を仲間に入れました。その後の話は知っておろう」
――助けた男はサマール・ルガニだ。双子の兄妹はカミラとアミラだ。アミラは水晶占いが出来ていた。双子は鏡を探すのが目的だった。例の石の扉を開ける鏡はまだ手に入っていないようだ。
「石板についてガードゥから何か聞いていませんか」
「最初は聞いてはおらんが、シュメールの姫が寝ている時、聞いたことのない言葉を話していました。起きている時はあどけない少女だが、寝ているときには長い言葉を話していました。
私はガードゥに、『あの娘は妙だ、今まで聞かずにお前に付いてきたが、もういい加減話してもいいのではないか』と言ったら、ガードゥは夜空を見ながら話してくれました。
『他の者には言うな。生きるか死ぬかの危険な旅だ。これをやらなければならない訳は、この地球自体が闇に包まれないためにだ。それをやるのは自分だ。だから心配するな。シュメールの姫にこれを伝えてはならぬ。自分がしなければならぬこと以外は伝える必要はない。それまでは、あどけないままでよい』と。
インドの国に着いたとき、船を二艘にしました。女や子供は後の船に私と共に乗りました。
これはウーナを送り届ける旅です。石板を手に入れるため」
「あなたは旅の目的は分かっていたのですか」
「私は知らなかった。地図も無い。太陽、星、風を読む者が集まっていました。
神に導かれているからと言って。
時々、港によって水や食べ物を調達しました。みんなも地面に足をつけないと疲弊する。
七回夜が来て、三日地面に足を降ろす、を繰り返していました。
その旅を続ける内に、ガードゥの人相が変わって行きました。私には良いのか悪いのか分からないが、何かに取り憑かれたように周りの者と話さず、飲み食いもろくにしなかった。
最後の地に着いて、二艘はそれぞれ浜に降りました。片方は村に行きました。私はその頃から咳が止まらぬようになっていました。
呼吸が苦しくなっていきました。下りた時、船に残りました。片方の者たちは村に溶け込み、仲良くなっていきました。
ガードゥは村には近寄らずにそのまま目的の山を探しにいきました。
その頃、私は旅に付いていけなくなっていました。自分の終わりが近づいたのを感じていました。星空を見上げながら考えました。
面白半分で出かけたが、大それた旅になった。意識がもうろうとする中で星空を見上げました。私はもうここまで。ここでお別れだと思いました。
その頃、何かに取り憑かれたようになったガードゥは私に見向きもしなかった。
それから、私の記憶は終わりました。
ガードゥからは聞いていないが、あの地に降りてくる…」
ガジュの言葉が途切れた。
「何が降りてくるのですか」
「石板を見つけ、それを合わせると言葉が浮き上がる。シュメールの姫しか読めない。他の人は読めない。
石板を合わせて読めると、何かが降りてくる。復活する。危険を伴うと。
一つ間違えば古代の魔物が蘇ると。我々はシュメールの姫を手に入れて必ず成功すると。
しかし、私はここで終わらねばならない。最後まで付いていけなかった。
皆と喜び合うことを夢見た。ここまで来れた。付いて行きたかった。最後まで。私も。心は無念だった」
――やはり、古代の魔物と戦うためのものではないようだ。石板を降ろし、何かの復活を果たす目的だ。
「壺、鏡、首飾りについては?」
「私が持った黄金の剣。これは普通は手に載る大きさですが、何かがある時、使う者が来た時に大きくなる剣です。それはガードゥがイシスの村で手に入れたと聞きました。心が惹かれた。何か役に立つのではないかと思いました」
「それは誰かに渡しましたか」
「いいえ。私の記憶には無いが、ガードゥが最後の戦いの時に持って行ったでしょう。大きくなったら青い光を放つ剣。魔物相手に。
コウモリのようなカラスのような、口はオウムのような者が襲ってきていました。すると剣が青く光り出した。この剣をガードゥが持って行ったでしょう。多分、彼は自分が侵食されているのに気づいていたでしょう。死ぬ気だったのでしょう。
それが私の旅でした」
――剣の話は錯綜しているが、先に現れた青い剣のことだろうか。
琴音が尋ねた。
「船で肺を患った時に、引き返そうと相談しなかったのですか。魔が来ているのに」
「引き戻せるか。これほどの者が関わって。戻る気はなかった。戻る事は許されぬ。先頭に立っているガードゥがいる。後戻りはできぬ」
私が尋ねた。
「船はインドから二艘になったのですね」
「最後に二人。ガードゥが勝手に二人を乗せました」
「この中にいますか」
「オーソク。人相も体つきも違うが、大きなペラペラの本を持っていました。ガードゥが一人で探索に行って、2~3日経って、戻って来た時連れて来た者です。大きな本を持っていました。右腕に。前の船に乗せました。小さな男がガードゥに引きずられるように」
「エボルスキーはどちらの船に乗ったのですか」
「漂流していた男は前の船です。新しく乗せた者が前の船に。古い者が後ろの船に。女、子供がいるので」
かなり時間が経った。
「ありがとうございます」
と言って戻ってもらった。
崋山は石板について話した。
二枚の石板を並べてくっつけると、二枚は自分で重なる。そうすると金の文字が浮かび上がるようになっていた。ウーナだけがそれを読める、と。
<20191214>
「ウーナⅡ」を始めから読む
https://lunabura.exblog.jp/i260/