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ひもろぎ逍遥

13 橘奈良麿 藤原仲麻呂に敵を討たれたのか




三度目の正直はあるまい。
そう思って、万葉集を開くと、またもや関連者の歌が出て来た。
それは橘諸兄の息子「橘奈良麿」だった。

奈良麿の乱。

名前だけ知っている。
広嗣の乱の後に起きた乱。
今度は橘家が追い詰められた。

複雑なのでスルーしたかったが、どうせ当てのない逍遥だ。
ちょっと寄り道しよう。





橘奈良麿の歌は葛城王が母の橘姓を賜(たまわる)時に出てきた。

「7 橘諸兄と聖武天皇 諸兄は皇族を離れて「橘氏」となった」


しかし、この時は私は省略していた。

葛城王は弟たちと共に橘姓を名乗る請願をしたのは橘三千代の死後、三年目だった。


13 橘奈良麿 藤原仲麻呂に敵を討たれたのか_c0222861_1446534.jpg

結果、天皇から橘姓が許可された。
その日、光明皇后の屋敷で祝宴が開かれ、聖武天皇が自ら歌を授けた。


天平八年冬十一月、左大弁葛城王たちに姓・橘氏を授ける時の聖武天皇の御製の歌一首
1009番
橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜降れど いや常葉の樹
(たちばなは みさえはなさえ そのはさえ えにしもふれど いやとこはのき)
【橘は 実さえ花さえ その葉さえ 枝に霜がおりても ますます緑が栄える目出度い樹だ】




この時、応えて歌を詠んだのが今回の奈良麿だった。

1010
奥山の 真木の葉凌ぎ 降る雪の 降りは益すとも 地に落ちめやも
(おくやまの まきのはしのぎ ふるゆきの ふりはますとも ちにおちめやも)
【奥山の 真木の葉を押さえて 降り積もる雪が ますます降っても 橘のように地に落ちはしません】

「真木」とはヒノキ、杉、松などを指す。その葉がしなうほど雪が積もっても落果しない橘の実の強さを歌った。

この日、聖武天皇と光明皇后は36歳。橘諸兄53歳。奈良麿25歳。
奈良麿は父の後継ぎとしてしっかりと振る舞える人物だったようだ。

その四年後、藤原広嗣の乱が起きて広嗣は死んだ。

橘氏は繁栄し、橘奈良麿は出世コースを歩んだ。

橘諸兄の邸宅ではよく宴が行われ、その折の歌が多く収録されている。

そんな中に、橘奈良麿が宴を結ぶ歌が二首、載っている。

1581
手折らずて 散りなば惜しと わが思ひし 秋の黄葉を かざしつるかも
(たおらずて ちりなばおしと わがおもいし あきのもみぢを かざしつるかも)
【手折らずに 散ってしまったら惜しいと 思っていた 秋の黄葉を 冠に挿したことよ】

1582
めづらしき 人に見せむと 黄葉を 手折りそわが来し 雨の降らくに
(めづらしき ひとにみせんと もみぢばを たおりそわがこし あめのふらくに)
【めったに会えない 人に見せようと思って 黄葉を 手折って来た 雨が降るのに】

宴を主催する立場だ。
せっかくなら黄葉が見頃の時に客人に喜んで欲しいと思う。黄葉が間に合うか、ハラハラしながら準備をしたことだろう。あいにくの雨模様だが、黄葉が見頃で安堵した喜びを素直に詠んでいる。


天平勝宝5年(753)に橘諸兄が70歳になった時、奈良麿の屋敷に父が来て宴を催している。
喜寿のお祝いだろうか。

奈良麿自身の歌は残っていないが、大伴家持も参加していた。


13 橘奈良麿 藤原仲麻呂に敵を討たれたのか_c0222861_1449136.jpg



一方、聖武天皇と光明皇后の間の皇子が生まれてすぐに亡くなってしまい、皇位継承者の問題が生じていた。
橘奈良麿藤原仲麻呂はそれぞれ違う皇子を推して対立した。
仲麻呂の方が優勢だった。


父が74歳で薨去した年、橘奈良麿は仲麻呂に対抗し、天皇を廃位させるためにクーデターを計画したが、事前にもれて仲麻呂に粛清された。

多くの仲間たちは杖刑で死んだ。奈良麿の刑罰は記録されていないが、やはり杖刑だったのではないかと言われている。46歳だった。


橘諸兄が藤原広嗣を死に追いやったのは天平12年(740)。(藤原広嗣の乱)

この時、橘氏と藤原氏に深い対立が生まれた。

橘奈良麿が藤原仲麻呂に殺されたのは天平勝宝9年(757)のことだった。(橘奈良麿の乱)



<20200815>




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by lunabura | 2020-08-16 10:19 | 万葉と広嗣の乱 | Comments(0)

綾杉るなのブログ 神社伝承を求めてぶらぶら歩き 『神功皇后伝承を歩く』『豊玉』『星の迷宮へのいざない』   Since2009.10.25
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