2020年 08月 26日
16 佐為王の侍女 勤務状況 宿直が続いて夫に逢えない!
万葉集を開くと、前回の「志賀の荒雄」の三首前に「佐為王」の名が出てくる。
知っている名が出てくると嬉しい。
佐為王は橘三千代の次男、すなわち橘諸兄の弟だ。
そこに載っている歌は佐為王ではなく、その侍女の歌だった。
夫の君(せのきみ)に恋ふる歌一首
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飯喫めど 甘くもあらず 寝ぬれども 安くもあらず 茜さす 君が情し 忘れかねつも
(いいはめど うまくもあらず いぬれども やすくもあらず あかねさす きみがこころし わすれかねつも)
【ご飯を食べても おいしくない 寝ても ぐっすり眠れない あなたの情愛が 忘れられない】
※「茜さす」は君にかかる枕詞なので訳さない。
右の歌一首は伝えて言うには、佐為王の近習(きんじゅう)の侍女のものである。
この時には宿直が続いて暇(いとま)なく、夫君には逢えず、感情が高まって逢いたい思いが深かった。
ある当直の夜、夢の中で夫が出てきて愛し合い、はっと目が覚めて手探りで抱こうとすると、何も手に触れなかった。女はすすり泣いて嘆き、この歌を声高に吟詠した。
佐為王がこれを聞いて哀しみ嘆き、侍女の宿直を長く免じたという。
侍女は宿直(とのゐ)が続き、なかなか家に帰れなかった。
侍女長に「しばらく宿直につけ」と言われれば、「帰ってよろしい」と言われるまで、ずっと泊まり続けなければならなかったのだろう。
侍女は夫に逢いたくて、夢にまで出て来た。どうにもならない哀しさに歌を詠み、大きな声で吟唱すると、佐為王の耳に届いた。
佐為王は侍女の勤務状態など知る由もなく、改めて侍女長に尋ねたのだろう。
そして、侍女の哀しみをおもんばかり、「しばらく宿直から外すように」と命じた。
この歌は佐為王の優しさもさることながら、昔の過酷な勤務体制に思いが及んだ。
<20200826>










