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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ56 香月実篤2 アルゴラは不思議な国だった




香月実篤はアルゴラの地について語った。

「あの土地は昔から雨が降らず、水に困っていた。そこで、雨乞いの巫女が代々継いで、雨を降らせていた。
我々が他を進軍していた時、あの土地を調べるように、と話があった。
そして私は神功より命じられ、先に山を越えて話しに行った。

あの地は特別な地。
様々な目の色の違う者達が集まっていた。
不思議なところ。
刀や武器を持った我々には向かって来ん。
あの地を治めている姫は会うてはくれん。

そこで私は姫巫女(王妃)の部下に話をした。
我々の部隊のトップも女性である事。我々はこの地を攻めて我々のものにする気は無いと。
ただ、国が一つに纏まらねば、様々な地域―外からの者達がこの地域を狙っていると。

我々は武力では戦わないと。
この地は我々側が、動く者が、知恵を出し合えば、全てのものが備わる。
それを共に語らおうではないか。
現実にこの地を守るために、この国の民を守るために、共に力を合わせよう、
と、その姫巫女の部下たちに伝えた。

私たちはあの村に5日間滞在した。
なかなか会わせてもらえず、私は道を歩いて回った。
あの地の者達は、馬に乗って回るとみな怖がった。それを感じ取った私は、歩いて回った。

土はカラカラ。その土を触ると雨が無いのが分かった。
この国がこんなに水に困っているのなら、神に頼むだけではない、現実にどうにかして川を来させれば何とかなる。
川の方向を変える。
それをやってみるのが、相手を信頼させる一番の近道ではないか。
そう思った。

私は神などは信じていない。

ただ自分が相手に信じてもらうには、言葉ではなく行動ではないか。
小さな川でも良い。
あの地の者達には、自然を受け入れるという知恵はあったが、もうひとひねりすれば自分たちも住みやすく、自然を壊さずに共に生きていく道がたくさんあるという事を教えようと思った。

何故、私がこういう考えを持ったか。

私は沢山の戦を見てきた。
力で力を捻じ伏せ、多くの者が血を流し、そしてその血によって草木が生えぬ土地になる。
何年も何年も人間が田畑を切り拓こうとも、血の浸み込んだ土は元には戻らん。
そんな戦を沢山見て来た。

我々はどんどん戦を進めていく。それから、その残った道を元に戻す。
そこで生活をする者達は何も考えなかった。その姿を見て来た。

新たな所に、先に行くのは私の役目だが、タケルたちの一行が通り過ぎて行ったあとの処理も私たちの仕事だった」

ここで、菊如が言った。
「すべて整えてたんですね。戦のあと」

すると、香月実篤は顔を上げて言った。
「整える?なかなか整えることは出来ん。整えることなど出来ん。あの時代は、あのやり方しか出来んかった。ただ、あの惨劇を見てやはり他の方法があるのではないかと。ただ、私の力ではどうもできん」

「それをずっと考えられてたんですね」
菊如にそう言われると、香月実篤はうなずいた。

「あの土地に行った時、あの姫巫女が治めている土地に来た時、様々な国、様々な目の色、様々な知恵を持った者達が集まったこの土地を見た時、私は違う物を感じた。

まだまだ知恵を使わねばならん。
まだまだ知らなければならない事がある。

私はタケルに頼んでいた。
この戦が収まれば、船に乗り世界を巡ってみたいと。そして、必ず貴方の元に戻ります。もっと知恵を付け、貴方の進軍が無益なものと、暴力と、押さえつけによるものではない事を証明するためには、私は後を整えなければなりません。

多くの者が血を流し、生き延びさせなかった状態でも、後始末まできちんと出来れば、我々の戦いは間違いでは無かったという事。私はそれを求めます。

私はこれがこの世を治める人としてのかたちではないかと。
そのために、学ぶために、様々な国を見て学び、大きな国にしたい。
大国の者達がどのようにして、その国を築いたのか、その方法を模索したいと言った。

だが、私の願いは叶わず、タケルの死したのち、戦いのおりに事故がおきた。

当然の事といえば当然の事だが、あの地にさけずの信号をうつし、私はまた戻った。

クラージュに戻った。まだあの戦いの爪痕は大きかった。
私の役割は残っていた。

その時に、私はカネモチの残党に斬られた。
もちろん、私も大勢の者を殺した。殺されるのは当たり前だと。
ただ、私はやりたい事が見つかった矢先の出来事で。

もっと世界を見たかった」


<20200914>








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by lunabura | 2020-09-14 12:50 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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