2020年 09月 18日
脇巫女Ⅱ58 香月実篤4 第二タケルに付いた
代わって琴音が香月実篤に尋ねた。
「サンジカネモチが、ヤマトタケルを殺したの、ご存知でしたか?
その後に、ご自分が斬られたという事ですか?」
香月篤盛はうなずきながら答えた。
「もう私は第2ヤマトタケルがいる事は知っていた。私達一行には知らされていた。
私たちは1代目のヤマトタケルではなく2代目の方に付けというふうに話が来ていた。
初代ヤマトタケルが病に臥せていた事は知っていた。
でも、今進軍を止める訳にはいかない。
まずはあの大きく固まっている物部を散り散りバラバラにしなければというところ」
「自分も物部の一族だったですよね。それがみんなが散り散りバラバラになって…」
「サンジカネモチには付いて行かなかった。あいつは途中で変わったのだ。それまでは、民の為、国の為、と言いながら、途中で何故か変わったのだ」
「で、ご自分も少し考えられて」
「もちろん揺れた。もちろん揺れたが、あのヤマトタケルを見た時に理屈ではない、光だった」
「それは2代目のタケルですか? 2代目のタケルと会って、光と思ったのですか」
こう琴音が尋ねた。
ここで菊如が尋ねた。
「余談ですけど、良いです? 香月物部は、杉森神社への香月(地名)でヤマトタケルとよく話をしてましたよね。で、そこから畑(はた・地名)の方にも行って製鉄の何かを開かれたんですかね、香月は。
で、今現在、岡垣町に高倉神社っていう所があって、そこでは、草薙剣を7本ほど複製して作ったっていう伝承があって、そことの関係は何かあるんですか?」
「香月物部は、その頃サンジカネモチに嫌気がさした者達が皆我々の香月の方になってきた。それである種、以前の香月物部よりも大きな一族になった。
それからは、香月物部は香月物部で分散していき、それぞれの土地を増やしていた。タケルが進軍して行くと共に香月物部は大きくなり、その中から分散して色んな地域に行き、ヤマトタケルの軍勢として、そう、あの軍勢に入ったのは50人ばかり」
「それでお聞きしたいんですけど。製鉄をやりましたよね。それは、畑の上の方でされたんですか? 鞍手で出来ないから」
「人手が多く要るから」
「そしてそのあと、その鉄を持って高倉の方に、岡垣町の、今は高倉神社になってますけど、そこで7本複製してる、いろんな事をしてるんですけど」
「それはそうであろう。神功皇后の御一行は、ずーーっと走り抜けていくだけ。我々はそのあとの土地を暮らしやすく、また固めなければならない。そうやって、物部の軍勢が神功皇后のあとを、きちんとしたものに戻るまで面倒をみる。その地に住んだものもいる」
菊如は製鉄技術が岡垣町にあるのは、この時代からもたらされたのかを確認したかったようだ。岡垣町の高倉神社で草薙剣を複製したのは、これより500年ほど後の話になる。しかし、この高倉神社のみならず、響灘(ひびきなだ)沿岸では製鉄や製銅技術が栄え、錆びない毘沙門天が高倉神社には奉納されている。芦屋の釜は江戸時代では全国的に著名だった。
菊如はさらに尋ねた。
「もう一つ、その中で ほうり家、ほうり家とはご存知ですか? 物部ほうり。今現在も調べたら古門(ふるもん)には「ほうり」がやっぱり地名として残っています」
「神事をしていた者たちだ」
「そうですね」
「石占いの婆様も元はそこだ」
「あーっ、そうなんですね。ふーん、あのー、ヤマトタケルと宿禰が出会ったあの、あれとはまた違うんですか?」
「元はそう、ほうり」
「おぉ、あそこは、ほうり、だったんですか、ほうり物部。なるほどですね。
ところで、その時代にお稲荷さんって、きつねを祀るという事はあったんですか?」
「きつねは多くを観る。きつねは殆どの家屋が祀っておるではないか」
「やっぱり、その時代から」
「一家に一尾。狐は当たり前のように祀られておった。どこの家にも」
「畑のダムにもちゃんと祀ってたでしょ? 赤い色のきつねさん。そうですね、・・ そうなるとやっぱり、ほうり家とも手を組んだんですか?」
それを聞いて、香月実篤はニヤリとして、
「ふっ、あの石占いの女がヤマトタケルに惚れ込んだ」
と答えた。
「そうね! あれはびっくりでしたねぇ! あの時私に入ったその石占いの女の人が…。不思議な感覚ですね」
「理屈でもないのだ。結果は結果ではないか」
「宿禰様とは、あなたはお話をされたりとかはあったんですか?」
「もちろん。一つの軍勢だ」
「同じ組織で動かれてたんですね」
「宿禰は交渉事」
「それぞれの能力がありますものね。交渉事・・で、貴方は収め」
「先に行き、心を開かし、そして、後始末」
ここで、再び琴音が尋ねた。
「戦の最中は、どうされていたんですか? どこかに退避してました?軍勢が来ますよね」
「多くの者との交渉事、交渉して会うのは ー会う段取りまでは私の仕事だからー 会うのは私ではない。それから、私はもう軍勢の後ろに回る。戦いの表には出ない。ある意味、戦いが上手くいかなければあとは頼んだと言われておる。戦いとは、結果は分からぬではないか。
たまたま上手くいっただけで。もし、その戦いが上手くいかなければ、その土地で普通の民として暮らせよと。
だから、私たちは戦いを進めながらも、いつでもその土地の民たちと共に暮らす覚悟が出来ておった。ただ、私達の知識、タケルや宿禰や神功が様々な者達から学んだ知識というのは、私の頭に入っておる。どこでも生きていけると。
ただ、その後ろに行った時に、私はあの出雲の地(アルゴラ)でどういう交渉事が行われ、その先どうなったかは私は知らない。その前に私は討たれてしまった。その先を見たかった。
<20200918>
パラレルワールド 異世界小説
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