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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ59 香月実篤5  鉄で農具を造った




菊如が香月実篤に尋ねた。

「古物神社の手前にね、道中(どうちゅう・地名)があるんですけど、そこと古門(ふるもん・地名)の窯との間で亡くなりました? もしかして」
「今、風景は変わっておるけどな」

「変わってますよね。1本大きな杉の木と三角形の山みたいなのが一瞬観えたんですが、その下で亡くなられました?そこに行ったら石碑があったんですよ」
「私の石碑か?」

「たぶん。そんな奇妙な山ありましたね。今は無いですよ」
「私の名は、ヤマトタケルや物部の物語には出てこん」

「でも誰がそれを造ったんですかね。誰かがちゃんとね。造られた後ずっと守ってこられている何かがあるんかな。

香月の方にはね、香月っていう地域にはね、ちゃんと杉森神社が残ってます。
月夜の晩に月が出て、花の良い香りがしたと。それで香月って地前がそこについているんですね。そちらにあなたが鞍手から出ていったあとでしょうね。

あなたは、何か貢献なさっているんじゃないのかな。なんとなく、そうやって何かが残っている。わかりませんよ。今その情景が見えるだけだから。

2、3年前、観せられたところに石碑があって。ちっちゃいですよ。風化してるから誰のか分からないですけど。そこで何かが起きて、そこで亡くなられました?解らない?」

「私達はサンジカネモチから鉄という物の作り方を習った。鉄という物は、特に大きな場所がいるわけじゃなく、火と土と水があれば出来る。鎌や自分たちの使いたい道具はいくらでも作る事が出来る。技術があれば。私たちはそれを拡げていった。

鉄というものは武器だけ作るものではない。人間の生活をより楽に出来るようにする為にもある」

「あの辺のね、古い地図を見せてもらった時にね、不思議なんですけど、あの地域一帯の地名がね、鋤とか鍬とか、そういうものばかりでしたよ」

「私たちは後始末が役割だから、武器とか作るものではない。どうしても戦いのさなかには武器が必要。防具が必要。ただ、その後は、鉄というものは色々な物に化ける事が出来る。

要は使い方。同じ物があってもどう使うか。それが私達で変わる。私の役目は武器ではなく、使い方」

「それは実践されたんですか?そこにあれだけ地名が残っているという事は。素晴らしい」
「そうしなければこの土地でどうやって民は生きていく?戦いなど必要ないではないか。戦いは我々に任せれば良い」

「あの一帯で作っていたんですね。要所要所で。で、あそこの窯?」
「窯は普通の窯で作れるではないか」

「そう、それは貴方がもしかしたら亡くなっているであろう近くにあるんですね。
この前、古物の神社までは行ったんです。ここですよという話はしたんですけど。あれだけ残っているところは今はないんですね」
「あの土地はその辺を掘れば鉄はいくらでも出てくる」

「水銀も多いですもんね」
「私は後始末が多い。後にどうやって民たちが暮らしていくか。逆に言えば我々の子孫が生きる土地ではないか」

「それからまた盛り返したんですね、去って行ったあとに。すごいですよ、鞍手全域が、鋤とか鍬とかいう地名が有ったね。これはすごいなぁと思って。鉄製の道具の名前が土地の名前になってますよ、今でも。あ、今は無いけど。古い地図では」
「いくらでも民たちの暮らしを楽に出来る。その材料が揃っているのだから」

「そして活性化されていったんですね。その貢献でしょうね、多分、その石碑があるのはね」
「私は知らない」

「私はなんでそれを見せられたんかなぁっと思って。1代目のタケルの亡骸がある所も見せられましたけど、不思議だったんですよね」

「タケルが砦を作っていた所を知っているか?」
「砦、あ、剣岳ですか?はい」

「あそこに一度、行ってみたかった」

「行ったこと無い?それでは行きましょう!タケルの亡くなった場所にも行けるけど…あ、それちょっと違うか。一番目のタケルか。
ん…、いやそうそう2番目のタケルも陣地張ってるので、剣岳の上から行きましょ。あなたは行った事、無かったんですかね」
「私は行けなかった」

「表立っては行けなかった?」
そこで琴音が代わりに答えた。「その前に斬られてるから」

鞍手町の剣岳の頂上にヤマトタケルの仮殿を造った伝承が地元に伝わっている。また、初代ヤマトタケルの墓所は「脇巫女」では剣岳の麓付近となっている。

香月実篤は当時を思い起こして言った。
「あの山から一面見える、この辺り。こちらから剣岳が見えるといつも、あの砦の上で戦略を練っていると思った。あそこには決まった者しか行けなかった」

「あっそっか、陣地だからね。下の武器庫は行った事あるんですか?」
「あの山には…」

「頂上には上がったことがない?武器庫には行った事あるんですか?」
「いいや。頂上に登ってあの辺り一帯を見下ろしたかった」

「そうね、色々頑張ってこられたからね。うん、行きましょう!今日、行きましょう!貴方がね、地名を作った場所、上から見下ろしてください」



<20200920>






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「脇巫女Ⅱ」を始めから読む⇒コチラ


脇巫女Ⅱ59 香月実篤5  鉄で農具を造った_c0222861_18414040.jpg

by lunabura | 2020-09-20 10:07 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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