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ひもろぎ逍遥

11 九寶龍王2 天が新たな道を創る


前回の続きだ。


神功皇后は弘法院の磐座に来て、神々に祈ったという。


神功皇后は国内外で複数戦っている。この時は何の戦いだったのか九寶龍王に更に尋ねた。


「戦いとはどの戦いですか」


「船に乗って旅立つのに必要な物資、やられかけた時に助けを呼ぶ手立てとして後押しを頼んだ。


かなり大掛かりな戦になると言って、皇后は陣や宮を廻って軍備を依頼し、祈願をしていた」


――そうなると、三韓討伐の事前準備ということか。


神功皇后は下関市の豊浦宮に居た数年間、各地に出向いて兵の派遣、造船などの交渉をしている。この田川では山の東側、鏡山大神社に神功皇后が来て、鏡を奉納して祈った話が伝わっている。


「田川では、仲哀天皇と共に来た話がありますが。そしてのちに夏羽と田油津姫の兄妹が皇后軍に殺された話がありますが」


「それは裏の山の方での出来事だ。香春の事ではない。裏というのは、夏吉のことだ」


それなら夏吉の若八幡神社に記録がある。


「兄妹の祖である神夏磯姫がここを開発したといいますが、銅山を開発したのでしょうか」


「そう。神功皇后も鉱物に詳しかった。神功皇后を取り巻く者たちも鉱山に詳しく、神功皇后ではないが、お付き者が岩や土を調べたり、他の国の言葉をしゃべりながら土をなめたりしていた。


その兄妹はその地を乗っ取られるのではないかと思って抵抗したのだ。兄妹に加勢する者もいた。


山の者というのはよそ者に対して警戒心が強く、連帯心が普通の村より強い土地なので、神功皇后が大々的に祭祀をして雨を降らせたりする光景を見ると、受け入れがたい心情、嫉妬に近い心情が暴れ出す。


兄妹の女の方はなまじ霊感があったから、余計に気分が悪かったのではないか。我々には分からぬ、人間独特の感情だ」


田油津姫が討伐された話は日本書紀にまで記されている。

討伐した場所は旧山門郡(みやま市)だった。田川では、田油津姫が古賀市の小山田斎宮で神功皇后を暗殺しようとして失敗したために討たれたと伝えていた。


ところで、九寶は鏡山の奥に行って龍王の岩に会ったというが、その岩は弘法院の横にある磨崖仏が彫られた岩だというので、位置関係が合わない。それについて確認した。


「九寶龍王があの石に居たのはどのような由来ですか」


「あの辺りに昔大きな池があった。その池に私の住む大きな岩があった。その池が埋め立てられることになり、その岩を移動させることになった。私の岩を水の湧く場所に移動させた。そこに九寶(くぼう)が這って行った」


 古代に池を埋め立てるような話があるのだろうか。私は尋ねた。


「池を埋め立てたのですか?あの時代に」


「山が崩れ、池に土砂が入った。掘って池として残すかどうか話し合いになり、そのまま池の土砂をなじませた方が土地が広がるという知恵を出す者がいた。


結果、土を入れて土地にした。池があるということは、元、在ったということ。その時私の岩を移し、私を祀(まつ)った」

 


「先立石ですか」


「ああ、ワシの岩。あの場所にあったのが、それから562年、あの岩、弘法院の岩にはめられた。

あの岩はもともと私の住んでいた岩。


龍神の寺として、岩に龍神が浮かび上がるのが人づてに知られるようになった。だが、歴史と共に、あの岩の奥で眠りについた」


 これで納得できた。もともと池の辺に龍王の岩があり、そこから泉の辺に移されて、九寶上人がやって来た。そして岩は西暦562年に現在地に移されたということだ。


あの巨大な岩も古墳時代ならやすやすと動かせただろう。宮地嶽古墳の場合、岩の一つは五メートルもある。


「あそこは焼かれたんですか」


「戦があり、また争い事もあり、沢山の命が落とされた。平和な世が来たのはいいが、見えざる戦いが…」


その時、鈍い青色が目に浮かんだ。

「九寶龍王の色は青色ですか」


すると、菊如と崋山が青空のような青だと、口々に言った。胡麻供養の時に下げられた青い札の色がまさしく龍王の色だという。

龍王は

「あの色は九寶の色。光の香春。土地土地に色が違う。思いや手を合わせることで、色が変わる」

と言った。


菊如が

「あの時は清涼感のあるエネルギーをいただきました」

と頭を下げた。


香春岳が削られたが、これよりタケイカヅチが降臨するとヒイラギが話をしていたので、それを確認した。


「タケイカヅチの神が、再び降臨するということですか」


「私も今初めて聞いた。準備段階で、それぞれの神が動く前に、その地域の龍神たちは準備に入る。それが今。眠っている龍もいれば、封印されし龍もいる。人間の力で落ちてしまった龍も。


人のために尽くしている龍は様々なところにいる。それが一気に力を集結するであろう」


「それには人間も関わるのですか」


「準備段階では、あるべきものをあるべき所に返す。降臨しやすいようにする。その準備段階では、すべて龍神が整える」


菊如が「龍王祭は集会のようでした」と言うと、


「土の中、水の中、岩の中、海の中で眠っておられる龍神を今一度目覚めさせ、すべきことを思い出し、各々の役目を果たす時。

あれは、その火付けの儀式である。狼煙(のろし)を挙げたのを同じだ」

と龍王は答えた。


「浄化、再生の始まりなのですね。人間の罪をお許し下さい」


「今一度ということ。天はまた新たな道を創り、それを人間が許しを請えば、天は新たなる道を創る。


禊(みそぎ)とは心からわびること。

痛い目に遭うことではない。

禊で心からわびる。

さすれば、見放した神も手を差し伸べるというもの。


遠い昔より、人間と神々は共に生きて来た。

今一度、その本質を思い出さなければならない。

道筋を直す。

それが禊。


禊をし、悔い改め、新たなる一歩を踏み出す。

そうやって人間は進化していく。


そこを、今一度、神々の贈り物を受け取らんのは人間たち。

悔い改めぬ者に神々の贈り物は無いということ。


あとは上手く事柄が動く。

そなたらのおかげで世に出て、存在が日の光を浴びたこと、ここに感謝し、私の役目を果たすこととする」


「そうすると、宮地岳の田力男神を鞍手の剣岳に移したことも関係があったのですか」

龍王はうなずいた。


もう一点確認しておくべきことがあった。

「ハジムコウとは何か、ご存知ですか」

「いや、私は知らぬ」


別れの時が来た。

「今日はありがとうございました」

そういうと、龍王は崋山から去って行った。


崋山は「知らない、ということは、言葉にはしない、という意味」と言った。

何か、まだ秘められたものがあるようだ。


沢山の人たちが出て来たので、私達は整理してみた。


もともとこの地に龍神がいた。

そこに神功皇后が来て、香春岳に向かって祈った。

それから九寶上人が来た。

九寶上人は龍神に出会い、自分の名を龍神につけた。


それから最澄と伝導上人が来た。

そして、九寶上人が現在の住職に転生した。

という流れだった。


香春岳のことは「かわる」と呼んでいた。


香春岳が削られて、神がいなくなったが、再びタケイカヅチの神が近くの山に降臨するという。


神が降臨する前には龍神たちが準備を整える。

弘法院で行われた護摩供養は龍神たちを呼ぶ狼煙になったという。



20210801




by lunabura | 2021-08-01 13:56 | ヒカリ | Comments(0)

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