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ひもろぎ逍遥

14 田心姫 如月 宮地岳の封印を解いて神々を呼び起こしてほしい

 

八咫烏を押しのけて現れたのは女性だった。


「私が全部お話しします。


遠い昔、宗像の地はそなたが言う、宮地嶽という神社はありませんでした。

祠が点在し、大きな山の神が守り神として降臨していました。


大地震が起こり、地面に亀裂が入り、私はこの一帯を守る姫として祀られていました。


今は宮地嶽となっていますが、昔は小さな祠だけで、そこに姫として祀られていました。


ある時、見たこともないような黒い者たちがここを襲って来ました。

農作物は枯れ、病が流行り、日は輝くことなく、大洪水と地震、と天変地異が起こりました。

地震は止まらず、山崩れ、がけ崩れ、洪水、と災害が続きました。


人々は皆私達に祈りを捧げていましたが、見たことのない者たちは鎮まる気配はありません。


私はこの地震を鎮めるためにその山に登りました。

私は生け贄となりました。地震を鎮めるために。


今もなお、助けて…

今もなお、私の魂は…

今もなお、あの山の奥へ


あの地震の日に身を投げた時、分霊としてこの地に。

でも、私の本体はまだあの地に。


あの地には大きな黒い化け物が…。八つの頭を持つ化け物が…

まだ眠っております」


「あの地とは宮地岳ですか?六ケ岳ですか?」

「六ケ岳と言われている所です」


この女性の話では、まだ宮地嶽神社が出来る前の時代、六ケ岳の地震を鎮めるために山に登り、生け贄となったという。その後、宮地岳一帯を守る姫として分霊が祀られたらしい。その魂はまだ六嶽に在るという。


これはウーナの時代の話ではないか。いや、ウーナの時代と、分霊として祀られた時代となるのか。


その女性は言った。


「宮地岳の封印を解き、宮地岳の神々を呼び起こしてください」


「宮地岳の封印を解くとはどういうことですか」


「宮地岳の封印を解けば宮地岳の神々が解き放たれ、六ケ岳の力も弱まります」


「あなたは六ケ岳の人なのですか」


「そうです。私はこの地から離れません。

宮地岳の封印を解き、宮地岳の神々を解き放ち、最後にあの山へ。八つの頭を持つあの山へ。


また歴史は繰り返されるのです。


あなたが知っている八岐大蛇(やまたのおろち)の話。あれは六ケ岳の話なんです」


この女性が言うには、六ケ岳の歴史は繰り返される。これを弱めるためには宮地岳に封印されている神々を解き放つ必要があるらしい。


ここで菊如が何かを感知したようで、私に声をかけた。


「『戸隠れ』が出てくるんだけど」


女性は言った。

「戸隠れの里です」


私は尋ねた。

「どのあたりですか?」

「戸隠れ。宮地岳と六ケ岳を結ぶ線の上になります」


「宮若市?千石峡?」


「川が流れています。そこが一つの線です。

地響きが起こり、出来たのがその川。今そこは繋がれていますか。

神々が渡れるように道は繋がっていますか」


女性は質問に応じてくれているが、何処の話かさっぱり分からない。

六ケ岳の近くにそんな名の産直があったようだが、はっきりしない。


あとで地図を見ると、千石峡はそのラインより南の方で、対象外のようだった。


何か、該当しそうな川…と、戸隠れの里。う~ん、難問だ。



女性は話を続けた。


「あなたたちが私の話を信じるのなら、宮地岳、六ケ岳 綿津見の神々が通る道。

結界をつなぎ直してください。


宮地岳の神がこの地に戻り、必ず落ち着きます。

人間がしたことは人間しか出来ない。

分かる方々がやるべきことをしていただいたら、神々が動きます」


宮地岳と六ケ岳を結ぶワダツミの神が通る道があり、結界をつなぎ直せば、宮地岳の神が宮地岳に戻ってくるということか。もっと具体的に分からないと動けない。


「宮地岳では大地震があったのですか」


「地震で封印を掛けられています。中にめりこむように、上から押し崩すように、山々が。


八岐大蛇の伝説は天変地異を指しています。

六ケ岳のオロチが眠っている間に、あの伝説のように八岐大蛇をやっつけるスサノオが降臨します。


ただ、この地域の人たちを守らなければなりません。

六ケ岳の神々が大事です。


私の話を信ずれば、このお願い。とらわれの身の我らを解き放してください」


改めて私は尋ねた。


「お名前は何といわれるのですか」


「今呼ばれている名前ですか」


「はい」


崋山にペンを渡すと、紙に字を書いた。

「田 心 媛」

――たごり姫だ!三女神の一人ではないか。


「肉体を持っている時の名前は何ですか」


「巫女の時の名は、如月(きさらぎ)という名をいただきました。


あの地で少し不思議な力をある巫女として、人の死や誕生が分かったり。幼いころから。


農民の暮らしは大変で、すがるものが欲しかったのでしょう。

私は巫女として崇められました。


病を治すことはできませんでした。

地域の人たちを幸せにしたかった。

苦しい生活の中で生きている。


皆が集うようになり、話し合うようなりました。

私には拝むものはありません。

天を仰ぎ、皆の暮らしが楽になるように星に願っていました。


暮らしは苦しかったのですが、穏やかな時間でした」


「あなたが暮らした所とは、何処ですか」


「六ケ岳、宮地岳、六ケ岳。

宮地嶽神社の境内をだんだん広げて行き、あの山に入る時に土砂崩れが襲いました。やはり山の神がいる所に無断で入ってしまったのでそうなったのです。


宮地岳の、ある場所に石の祠を作り、土砂崩れのあった所から、

『仲良く暮らすためにこの地域に入らせてください』

と十日間祈りました。毎日、先頭になって祈りました。


十日目に、風が吹き、砂煙が起き、土砂の砂もすっと空きました。

許しをいただいたと思いました。


そのことを忘れてはいけぬ、と祠を立てました。

私には力はありませんが、巫女として他の地域から集まって来るようになりました」


――ウーナで探していた三姫の一人がこの人だったのだろうか。


20210812



by lunabura | 2021-08-12 20:32 | ヒカリ | Comments(0)

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