2021年 08月 14日
16 タゴール媛 封印された田力男を解放してください
「いよいよ行かれますか。
あなたですか。遠い異国からやって来られたのは。あの地を収めるために。
参りましょう。
船は二艘ですか。旅の者たちもくたびれておるでしょう。
この地でゆっくりしてください。
明日、出発するとしましょう」
――明らかにウーナの世界だった。私は尋ねた。
「あなたのお名前は?」
「タゴール媛です」
「何処に行かれるのですか」
「まずは、あの山に登る前に行かねばならない所があります。あの山を取り囲む、 ギ、イシ …。
登る場所を探さねばなりません。
古来より魔物が住むと言われています。
私一人の力では駄目なのです。
地の私、天の姫君を迎え、天と地が手を取り合う時、魔物を封印できます。
天の者を呼ばなくてはなりません。
天女二人に願いをかけます。
あの山の登り口、池のそばから上がります。大きな池があります。
その左から登って行きます。
ガードゥ、あなたは魔物に入られていますね。
あなたの力では魔を打ち消すことはできません。
自分でも分かっていらっしゃる。
いいのです。
そのために私達がいます。
いつか、その時が巡り、あなたたちがまた目覚める時、その時まで待ちましょう。
私達がしっかりと守ります。
くたびれた仲間たちが集まり…。
私達が上がるまで。
わたしたち三人でこの地で魔を封じます。
泣かなくていいのです。恥じなくていいのです。
今、この時ではない。すべての時に意味があるということです。
失敗したからではない。
今、その時ではない。
心配しなくていい。
犠牲になるのではない。
いつかその時が来ます。
その時、また会いましょう。
ここからは私たちの仕事。
仲間たちを守らねばならない。
もうすぐ大きな地震が来ます。
私が一人で山に入ります。
あの火口で天女が待っています。
私ひとりで参ります」
「もうすぐ地震が起きると言われましたが、2021年のことですか」
「違います。
山の上に登り、天女が降りて来たら、火口が開きます。
魔への入り口が開きます。
ガードゥは3分の2を魔物に捕らわれ、3分の1で自我を保ち、後悔と申し訳無さ、無力さに打ちひしがれています。
その者を連れて行くわけには行きません。
私たち3人では魔物を消すことはできませんが、時間を稼ぐことはできます。
歴史は繰り返されます。
またその時が来たのです。
過ちを犯さぬように生まれ変わるのです。
人の力を信じております。
自分の困難に立ち向かい、大切なものに気づき、何をしたいか、何をすれば己の魂が喜ぶか、その時が来るまで待ちます」
もうすぐ来る地震とはウーナの時代の地震のことだった。
「六ケ岳と宮地岳は関係があるのですか」
「神々は仲が良くなく、力を合わせませんでした。
まるで自分達の土地に入るな、という気持ちがありました。男性神はそれが強い。
名を残す、知らしめることが大事でした。男性神はそれが強い。
私達にはそれがありません。
時が過ぎ、現代はそのような時代ではありません。
女性神の方が強く、心深く先を見つめ、すべての人間が分かるまで、あるかごとく受け入れます。
今はそういう時代になりました。
男性神を活かすも、われら女性神なのです。
私は人間に期待しています。
長い年月がかかったとしても、かならず成し遂げると」
「宮地岳の神とは誰のことですか」
「男神のことは聞いた事がないですか。力の強い田力男ではないですか。戸隠れの里のあの山の中に眠っている田力男を知りませんか」
――田力男と言えば、北九州市若松区の戸明神社ではなかったか。
私が菊如たちと出会った頃、何度か「田力男を探せ、と言われた」と言っていたような記憶がある記憶がある。その神は宮地岳にいた?
「宮地岳の麓の里を『戸隠れの里』と言うのですか」
「そうです。田力男は眠っています。起こさねばなりません。あの山の岩に鎖をかけて封印されています。その下に眠っております。目覚めさせねばなりません」
「山頂にある、朝日を浴びる磐座のことですか」
「そうです」
「封印はどうやって解くのですか」
「崋山が剣を持っているではありませんか。あの剣は石で出来ていて、使う時には七色に輝くのです。日の光が照った時、光に当てて石に刺せば封印が解けます。この時のために神が与えたのです」
「それは崋山が田川市の香春神社で貰ったという剣ですか」
「ええ。アマテラスが岩に隠れた時、戸を開けたのは彼です。
あのまま、戸を開けなければこの地は闇のままでした。
彼がいなければ、アマテラスが隠れた岩を開けることは出来なかった。
あなたたちの知る物語ではありません。
アマテラスとスサノオは仲が悪いことになっていますが、本当は違います。
そうしなければならない理由があって、あのような話になったのです。
スサノオは闇で動くもの。
アマテラスは象徴。
象徴の動きは皆が注目するので、輝いていなければならないのです。
スサノオが裏で動きやすいように、それが二人の計画。
姉弟ですもの。
あの剣はアマテラスがスサノオに授けたものです。
それが、こちらにあるものです。
表立ててはいけぬ剣、それで良いのです。皆、自分がしたこと、名声はどうでもいい。
何も知らない国の民を守るために各々が働けばいいのです。
私は私の役目を果たします」
「八咫烏の言う鎖と、田力男を封印する鎖とは同じものですか」
「同じものです」
「鎖をつないだ人が八咫烏ですか」
「私が繋がれた六ケ岳の魔物と田力男の鎖は同じように見えますが、同じかどうかは定かではありません。
私の役割がバトンタッチされるように、闇の方もバトンタッチされるのではないかと考えます。
今も私の見えるものは、田力男が眠る姿です」
こうして、タゴール媛の話は終わった。
タゴール媛はガードゥたちが二艘の船で来るのを迎えた。
ガードゥは既に魔に三分の二を侵されていて、魔を封じる力は残っていなかった。
タゴール媛は地の姫で、天の二姫と共に魔を封印するための時間稼ぎをするという。
そして、私達が生まれ変わるのを待っていた。
六ケ岳の岩に封印された田力男の封印を解く方法は、崋山が香春神社で貰った剣を朝日に当て、突き刺せばよいと言う。
崋山によると、香春神社では剣と楯を貰ったという。剣はこの時のために与えられたらしい。
菊如に聞こえた「戸隠れの里」とは宮地岳の麓の集落を指していた。
封印の解き方は大体分かった。
今、この世に生きる私たちが乗り越える課題は、
「自分の困難に立ち向かい、大切なものに気づき、何をしたいか、何をすれば己の魂が喜ぶか、その時が来るまで待ちます」
と言っている。
それぞれの人生に与えられた課題に取り組み、自分の魂が喜ぶことに気づいて、それを行うこと。
自分の人生に取り組んでいれば、その延長上に三姫と手を結ぶ時が来ると言うのだろう。
<20210814>
今度は字が濃くなりました。この方がいいけど、何故こうなったのか、システムが不明。








