2021年 08月 18日
17 如月2 村をまもる
如月は一人で語り出した。大勢を前にして話している様子だった。
「争い事はやめなさい。なぜそのような。
皆で一緒に、共に生きて行くことが出来ぬのですか?
なぜ敵味方に分かれねばならないのです。
共に生きていこうとされぬのですか?
金や鉄など、関係ないではありませぬか。
言葉の通じぬ者に乗せられて、どうするのですか?
これまで守ってきた大事なものがあります。
恐れてはなりませぬ。
強さというのは力や声の大きさとは関係ありません。
自分の心に何があるか、それが強さです。
私が話に行きましょう。誰も行かなくてよろしい。私が行きます」
如月は言葉が通じぬ者たちが金と鉄の採掘の話を持って来て、戸隠れの里は受け入れ派と反対派に分裂したようだ。
如月はこれまで築き上げた信頼関係を失わぬために、自ら交渉すると言った。
そして、言葉の通じぬ者に向かって話し出した。
「あなたは?どこの国から来た人ですか?
言葉が通じません。
この地に?私たちの地に?静かに穏やかに暮らしていた私たちに。
戦いたいのではありません。
そんな大きな物を振り上げて。どうするのですか?
私を斬るというのですか?
この地に誰か、言葉が通じる者は居ないのですか?」
如月は渡来人に刀で脅されているようだった。しかし脅しに屈しなかった。
誰か、通訳が名乗ったようだ。
「あなたは言葉が通じるのですね。
船でやってきた?何処からですか?
この山は鉄が採れるというのですか?
私たちはそのようなものは知りません。田畑を耕して暮らしています。
この山の鉄が欲しいというのですか?
私の一存では決められません。みなで話したいと思います。
私たちは戦いなどすれば、男たちにひとたまりもありませんから」
続けて村人に話していた。
「この者たちはこの地で暮らしたいと言っています。
鉄が有り、それを使って生活を豊かにしたいと。
土の中にそのような物があるのですか?」
如月は改めて私達に語り出した。
「その男たちはぐんぐんと生活に入ってきました。毛むくじゃらで、大きくて。
でも様子を見ていると、案外、大木を動かして橋を作ってくれたりして、村人たちも『悪い人たちではないのかなあ』と思い始めました。
自分たちに危害を加えるのでは無いと感じていました。田を耕すはしで、山を削り、その土を竹で造ったショウケで何かを探っていました。
石の塊にキラキラしたものが出てくると、喜んでいました。そんなもので良ければ、どれだけでもあげます。
船でやって来て、船にそれを積み、ある程度溜まると帰って行き、戻って来た時には沢山の物、食べ物、器、綺麗な細工の物を持ち帰ったので、皆喜びました。
私たちの暮らしの横で土を掘り、水で洗い、持って帰り、物をくれ、豊かになっていきました。
村人たちは自分たちの土地を豊かにしてくれるこの者たちを受け入れ始めました。異国の地の者と家庭を築く者もいました。村は生活が豊かになって行き、それを良く思わない隣の村の者たちもいました。
堺では争いが絶えず、ひどい戦いになりました。大男たちが楯になってくれました。
ただ、私の思いとはほど遠く、なぜ皆共に生きていけぬかと。まるで同じ国で同じ言語を話す人たちを異国の人のように感じました。
ある夜、襲撃に会いました。家や村人に火が放たれました。
あの大切にしていた祠も燃やされました。私はその時に足が3本の黒い羽を持つ奇妙な鳥を見たのです。山の方から。大群で押し寄せてきました」
「それは本当の鳥ですか?」
「私にはそう見えました。森から大群がやってきたように見えるんです。私はあの山にどんな神様がいるかも分かります。山には神様が居るんです。山は神聖な場所なんです。
あの地を開いた時に風が吹いて、砂がどかされたように、神はいるんです。
戦が起こり、村一面火で覆われた時、その神は山にお隠れになられたんです。人々に嘆き、人々が争い合うのに嫌気が差して、山にお隠れになったのです。三足烏、あのカラスが山の神様を封じ込めたのです。
かつて大きな岩をどかし、砂を払い、入ることを許した神が封じ込められました。
その風を感じなくなって、それをお隠れになったと考えたのです。
その神が何というかは知らないですが、私たちを受け入れた山の神です」
宮地岳の山に神がいて、如月が祈ると麓に住むことを許してくれた。
田畑を耕す暮らしをしているときに、毛むくじゃらの渡来人が船でやって来て、金や鉄を採掘させてくれと言った。
村は二つに分かれたが、村を襲う気が無い事が分かると、受け入れることにした。橋を作ってくれ、金や鉄が溜まると船で帰って来て、戻って来る時には沢山の土産物を持ってくれたので、村は次第に豊かになった。
それを快く思わぬ隣村が襲撃してきた。その時、八咫烏の群れが飛んできて、宮地岳の神を封印したという。
先程の如月の話の続きだったが、念のために名を確認した。
「あなたのお名前は?」
「如月といいます」
「烙印を押されましたか?」
「焼き討ちがあった時に連れていかれました」
「烙印はその家の印ですか」
「ええ。藤の紋です。木や持ち物に烙印を押すもので。馬の尻、自分の家の者に」
「それが宗像の場所ですか。その人の名前は分かりますか?」
「ええ。宗像です。名前は今藤両国。1382年。木を扱うかたわら、侍で、大きな白い壁の家に住んでいて、中には材木を扱う奉公人や、侍やらがいる大きなおうちでした」
これでだいだい状況が分かった。時間も経ったので、終わることにした。
「ありがとうございます」
と言って戻ってもらうと、崋山が、如月は「両国の妾になった」と言った。
如月の話は時代が錯綜しているように思えた。
中世時代の如月が金や鉄を知らないのは変だった。三足烏による封印も中世時代の話とは思えない。
恐らく、弥生時代と中世時代と、二度転生し、同じ戸隠れ里が舞台となり、名前も同じ「きさらぎ」がついて、記憶が混乱しているように思われた。
そんなケースもあるのだろう。意味があるかもしれないし、単なる記録の混在かもしれない。必要なら、また明確にする時がくるのだろう。
如月が宗像を離れられない理由はこの地と両国との深い縁があったからだった。
この日のリーディングから、宮地嶽神社の「光の道」の裏に「陰の道」ができることが分かった。これを頼りに封印を解くことになる。
そして、宮地岳と六ケ岳の間に神の通る道を作る。
田力男は岩に鎖で封印されている。
それを解くには崋山が香春神社で貰ったスサノオの剣を日の光に当てて岩に刺せばいい。
私は家に帰って、何時これを行ったら良いのか考えた。
この日は2021年2月20日だった。「光の道」が出現する日だ。
いつまで「光の道」は出るのか。慌ててネットで調べると、今日から1週間、2月28日までがその期間だった。
これは急がねば。
私はすぐに菊如に連絡した。2月28日は日曜日だ。この日に「光の道」に行こうと提案した。しかし二人とも日程が合わなかった。
そこで話し合うと、明日の2月21日なら二人とも空いているという。いきなり宮地嶽神社に行くことになった。如月も琴音も参加するという。
急展開だった。
<20210818>








