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ひもろぎ逍遥

脇巫女Ⅱ61 ヒイラギ アルゴラから英彦山へ セオリツを知っていた



202163日。


この日の歴史結願のテーマは田川市の大岩山弘法院の龍神に関するものだった。


ところが、その途中でヒイラギが出て来た。話を聞いている内に「脇巫女」の時代の人だったことが分かったので、あらためて「脇巫女Ⅱ」に記すことにした。


休憩に入った時、菊如が言った。

「ねえ。るなさん。大丈夫?今日はまるで100歳のお婆さんみたいだけど」

「やめて。やめてくれ」


「お婆さんが憑いてるみたい」

「やめて。そりゃあ、さっさと取らなきゃ」


――今日、この日に私に憑くお婆さんって、何よ。きっと何か用事があるんだろう。

私の体調は問題なかったが、先にお婆さんから話を聞くことにした。


崋山に取り入れると、背を丸めて、しわくちゃの顔をしてみせた。

「さあ、何を聞きたい。なんでも答えようぞ」


――て、何だよ。何でも答えようなんて、大風呂敷を広げて。勝手に私に憑いて来て。それにしても、志村けんの演じるお婆さんにそっくり過ぎて、笑いそうじゃん。崋山、志村けんのビデオを見たんじゃない?


お婆さん、何でもいいなら、まずはこれを聞こう。笑いをこらえつつ、私は尋ねた。

「何故、私に憑いてきたの?」

「ここに来るには、そうしないと、のう」


婆さんは後ろめたそうに小さくなって答えた。

――ほら、本音はこれだ。


「何か用があったのですか」と菊如が尋ねると、

「どうせ、その話になるじゃろうて。タラシの姫の話に、のう。もともと、英彦山は女の神様。みんな綺麗な人を想像するけど、タラシの姫はちと、違う。身体は大きくてのう。顔は…、ちと、のう。それで修験の山に隠れてしまってのう」


どうしても、志村けんと重ねてしまう。私は笑いをこらえながら尋ねた。

「英彦山にはアメノオシホミミが降臨したという話がありますが。

神話ではアマテラスが最初、子供のアメノオシホミミに降臨しなさいと言ったけど、オシホミミは子供が生まれたからと、ニニギノミコトを降臨させた。でも、自分もいつのまにか英彦山に降臨していたんです」


「そうではない。険しい山を登ってきたワシを、タラシ姫は使(つこ)うておられた」


「英彦山の始まりですか」


「英彦山の山頂にだけ咲く白い花があってのう。1800年前の頃。今から1832年前じゃのう」


――脇巫女の時代か。


「で、お名前は?」

「ヒイラギと申すが」


「あれ?ヒイラギさん?ヒイラギ・ミクマナルさん?」

「昔はそう呼ばれておったかのう。よ~くは覚えておらぬが…。いやいや、それを話すと逸れるからのう」


――ヒイラギ・ミクマナルなら、王塚装飾古墳のある所にあったアルゴラの国の人だ。その王妃オービラージュが後継者に選んだ巫女だ。

でも、1832年前なら、時代がもっと前だ。一世代前か。別人か、先代か。


ヒイラギは自分の話より、話したい事があるようだ。話を逸れないようにしていたのは、意外にもしっかりとした人なのだ。


そう考えているうちに、ヒイラギは話を続けた。


「ワシも神様の声を聞く力があってのう。右の耳から、違う人の声が聞こえるんじゃ。いくさがあって、国が荒れてのう。神の声が聞こえるもんで、いろんな所に行かされてのう。人の世界がいやになってのう。


ある時、大きな神様がワシの前に来て、『この山に来い』と言ってのう。人の世がいやになっていた時だったのう。


神の声を伝えるために、右往左往するばかりで、心も疲れ果て、結局はひとりぼっち。


そんな時に「英彦山に来い」と言われたのが、始まりじゃのう。行きとうて行ったわけじゃないでの。


幼い時、ワシを鍛えて巫女にしようとしたものがいてのう。成長が遅かったのだろうて。


いくさが始まる前じゃの。

その国はとてもいい国じゃった。刃物を振り回す男どももいなかった。いろんな色の目と肌の色が違う。みんなで暮らしていた。


それを治めているオオヒメさんがのう、こういう力は持ったままでは死ねぬ。代々受け継いでいかねばならない。むやみに渡す物ではない。最終的には天が決める。誘導するのは我々の仕事と言われてのう。


ワシは観えていたので、人に連れて行かれて、ある家に住むようになったでの。


ワシはもともと戦の孤児での。この力を自分たちの為に使うどころか、どこまでも世は男の世でのう。


ワシたちは男が右に行けば右に、左に行けば左に付いて行かねばならんかった。男たちには戦があり、負ければ別の者たちに連れて行かれ、と留まることはできなんだ。そういう人生よ。


誰かに付いたとか、こうした、とか、何も選べぬ。神の声を聞く力を持って右往左往するだけ。それが定めなのかと。


そんな時に大きな姫神が現れた。夢うつつで。男のような姫で、巻き上げ髪をばらっと落として、私の名を呼んでのう。

『わらわは、オービラビメ。そなたは英彦山に来い。お前もわらわと一緒で、醜い。醜い者は山に隠れねばならぬ』と言われてのう。いや、タラシビメじゃった。


それがのう。山を登るのは大変じゃ。それで頼んた。麓の方に住まわしてくれんかのうと。


タラシの姫は許してくれた。一人じゃやはり寂しんじゃのう。ワシの力を使って、タラシ姫の言葉を伝えたんじゃ。


霊峰に修験者たちが登り、登る間に自分を知るという修行をしておった。修験者たちが大勢現れた。


一人来るとどんどん来るようになって。


ワシはの、タラシビメの声が聞こえるが、『むやみやたらに言うてはいかん。山頂の白い花を持ってきた者だけにわらわの声を伝えよ。』と言われての。


麓でそういうことをしておった。

そして亡くなった。


麓の神社、正面の右側に池があって、その奥にワシの小屋があった。最期までそこで暮らしたじゃて」


ヒイラギの国は目の色も肌の色もさまざまで良い国だったというので、やはりアルゴラの巫女のようだ。


しかし、後継者のヒイラギ・ミクマナルはアルゴラのホウケントウ古墳の地下に埋葬されているはずだ。この古墳については、私たちが訪問した時には発掘中だったので、詳細を述べることが出来なかった。発掘も終わって現地説明会も終わったので、これで記すことができる。


目の前のヒイラギお婆は英彦山の麓で死んだというので、やはり別人だろうか。

ヒイラギとはこれまた世襲的な名前だろうか。


そんな事を考えていると、ヒイラギは小声でヒソヒソと話しかけた。


「タラシビメがの、一度だけ、恋に落ちたことがある。名前が覚えられんでのうホネがどうのこうのと


「アメノオシホネミミですか」


「そうそう、そんなんじゃ。その何とかホネと一緒に一ケ月か、暮らしたことがある。

ただの、ホネ何チャラが、あまり気が強くないんじゃ。


タラシビメは身体のごとく、強いんじゃ。激しい喧嘩があったようで、ホネなんとかは逃げていった。ここだけの話じゃがの。


ひと月か、ふた月か、この山に降臨したでの。


ホネなんとかは降臨する山を探しとったんじゃないかの。何処かの山を拠点として何をしようとしたかは分からぬ。タラシビメとか、よう嫁にせんわ」


もう、私は笑いをこらえることは出来なかった。

爆笑。

私の頭の中はずっと志村劇場と重なっていた…。


ヒイラギに大笑いさせられて、ようやく気持ちが落ち着いた。

私は尋ねた。


「で、あなたがここに来た本題は何ですか」


「あの神話の記述は好きではないけど、言うても仕方ないのう。ま、いいか。

お前が言われたら困るがの…。


ワシが言いたかったのはじゃ。英彦山の山の神は男でも、ホネ何とかでもなく、タラシビメだということじゃ。


数か月おったが、ホネは逃げた。表はタラシビメ、裏はオオキヅチ。高住と英彦山は空気が違う。


それから田川の山に続いている。山の神がそれぞれにいる。


カワルダケは崩されてぐたぐたになったが、タケイカヅチが再び降臨するでの。

一ノ岳には降臨できぬが、別の山に降臨するで。


遠い山には降臨せず、山が連なっている所、近くの山じゃ」


ヒイラギはこれを伝えるために私に憑いてきたのか。

これは神仕組みの一部だ。


香春岳の一ノ岳が崩されて、神々が隠れたが、再びタケイカヅチが降臨して、結界を造り直すのだ。


タケミカヅチが降臨するのは一ノ岳の近くの山だという。

それは、あの山か。


そう、今話題にしている磐座の山。それは大岩山という。

あるいは、三ノ岳か。


これを私達は見届けることになるのだろうか。

それは未知数だ。


さて、ヒイラギがアルゴラに居たとなると、あのセオリツの行方を知っているかもしれない。

私は尋ねた。


「セオリツはどうなりましたか」


「龍の舘の子か。あそこには大きな池があってのう。あの子は幼き頃はそこにいたが、素性は詳しくは知らぬでの。


一つの場所に長くはおられなかった。6~7歳までは龍の舘におったがの。

馬に乗った者たちが来て何処かに連れて行ったの。

一つの所に留まる事はできんと聞いた。


愛くるしゅうてのう。

神の声を聞く子だった。


大きなものを背負って生きていくのだろうよ。

男の世だからの。


人の持たぬ力を持つことは幸であり、不幸でもある。

定めじゃ。


ワシも最後は白い花を届けてくれる者に言葉を伝えた。それを聞いた行者は涙を流し、キラキラと目を輝かせて山を下りていった。

この力を持って悪いとは思わなんだ。終わり良ければすべて良いでの」


セオリツが居たのは飯塚市平塚の八大龍王宮だという。


これまでは飯塚市の出雲付近の事は余り書かなかったが、少しずつ公開していこう。

その八大龍王宮は往時、「龍の舘」と言われていて、セオリツが6~7歳まで育てられたという。


セオリツとは神功皇后が生んだ双子の一人だ。

セオリツは重要人物だが、まだ断片しか分かっていない。

恐らく、これから明らかになっていくのだろう。


私は英彦山(ひこさん)のタラシビメのことも確認しておくことにした。

「英彦山のタラシビメは出て来られるのですか」


「時期を見たら出てくるであろうよ。

龍体で動く。

アクセスをしてくるだろうの。

姿を現す。


タケイカヅチが降臨したら、龍神や神々が思い通りになるでのう。

忙しくなるでな」


神々がまた動き出す。そうすると、宮地岳から剣岳に移した田力男神もそうだろうか。


「タヂカラオも働かれるのですか」

「お隠れになった戸を開けるのはタヂカラオじゃ」


これまで私達の右往左往の謎が少し解けた。

そして何を明らかにすれば、終盤に向かうかも。


私たちはヒイラギにお礼を言って戻ってもらった。


20210826




脇巫女Ⅱ
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by lunabura | 2021-08-26 10:46 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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