2022年 05月 11日
27 脊翁律(せおりつ)4 今できる事を精一杯やること
私は、ふと『ワダツミ』の所で、セオリツ姫とハヤアキツ姫の話が出たことを思い出した。
何故、その名が出て来たのか分からないままだった。
今、分かるかもしれないと思って尋ねた。
「ハヤアキツ姫とは関係あるんですか」
「特に会ったことはありません。古代の神です」
「ワダツミの神が男にして隠していると聞いたのですが」
「隠している?ワダツミの神はまだ心底人間を信じているのではないのでしょう。人間は試されている状態なのでしょうね」
「ハヤアキツ姫は、今やってる事とは関わりはないんですか」
「ワダツミの神の手中にあるのでしょう。
あなた方は私を見つけました。
一つ一つ。一つ一つ。
君が代のように、小さなさざれ石が岩になるまで、それぞれの分野で、それぞれの輝きを放つのです」
「今あなたが出て来られたのは、また造り固めがあるという事ですか」
「もちろん、様々な神々たちの中には立ち上がる神もいれば、表に出て、あなたたちが頑張っているように動き出している神もいます。
そして、それが最終段階に来たと言うことではないでしょうか。
私は、私の役割を果たすだけです。
私は、そこは他の神々と話をしてません。
どういう意向かは存じ上げません。
造り直しがあるかどうか。
その前に、まず人間が人間である事を知る事が大事です。
挑む事も大事ですが、人間である事を知るのが大事です。
人間がどのように頑張っても神とは違う。
祈る時は祈る。
それぞれの力を発揮する事。
すべて神頼みでは動きません。
もちろん、人間ができることは、神々に比べれば小さなことかもしれません。
小さな一歩が神を、大きな絶大な力を動かすと言うこともあります。
人間が人間というものを知るということ。
そして今自分ができる事を精一杯やって、今の自分の魂を輝かせること。
逆に言えば、それしかできないのです。
後は、天命を待てばよい。
それでは、参りましょう」
と言って、セオリツは口を閉じ、ゆったりと待つ風情になった。
菊如は依代になる石を探しに行った。
え…。
今…。
宇宙神と私だけ…。
この場は何とも尊いものではあるが、いやあ、間が持たない…。
私は何か質問をせねば、と焦った。
そうだ。
最近の悩みについて聞いてもらおう。
実は、この聞き取りを書くためにかなりの時間と気力を費やす事に悩んでいたのだ。
しかも、研究したいことと方向性が違って葛藤していた。私は尋ねた。
「この話を書いて、人に伝える必要がありますか」
「これが完結すれば、思いも芽生えるもの。
耳から聞いた事はすぐに忘れるでしょう。
心を輝かせればその時でよいのです
。今ここで話したことを、もしあなたの内から、魂から知らせたいと思えばそれはそれでよし。このまま己の心の中だけで、と思うなら、それもよし」
やはり、答えは想定内だった。
このように高い存在は決して人間に強制したり、強要したりしない。
あるのは、私の思いだけなのだ。
いつも自問自答して出す結論と同じだった。
しかし、この話は私が記録せねば、胡散霧消してしまうのは明らかだった。
私だけが知っている話なのだ。
書けるときに、少しずつ記録しておくしかない。
これも、いつもの結論だった。
まもなくして、菊如が小石を持ってきた。
「応神のかけらを小石にしまおう」
と言って、六角の箱から応神のヘソの緒を移した。
セオリツが「できれば私もその六角の箱の中に三体を入れたいんですが」と言う。
もちろん、その為に私たちは動いている。
セオリツのへその緒を六角の箱に入れた。
「波折のセオリツの分はどうする?」
波折神社に再び出かけなければならないのだろうか。
しかし、崋山は一度懸かった者には、いつでもアクセスが出来た。
崋山はすぐに波折神社のセオリツと繋がった。
すると、波折のセオリツが現れて微笑んだ。
ニコッとした表情は本当に愛苦しい。
先程の綿積のセオリツとは別人だった。
それから、波折のセオリツの物も六角の箱に入れた。
応神の依代については、崋山が香椎宮まで持っていくことになった。
時計を見ると、既に1時半を回っていた。
さあ、福津市のアチメ浦に行こう。
西から東へ。
例の如く、昼食はコンビニで軽食を買って、車中でつまみ食いしながらの強行軍だった。
<20220510>
