2023年 03月 23日
ワダツミ42 相島 立岩 海亀の記憶

私たちは立岩の海岸に降りようと、道に迷いながら剣神社の前の急な山道を降りて、ようやく海岸に出た。
丸い人頭大の石がゴロゴロとずっと続く。
歩きにくくて仕方がない。
累々たる石の向こうにある立岩は近くから見ても海亀に見えた。
石の浜に座って対岸を見ると、照葉のマンション群や糸島など、福岡市内がよく見えた。
そして、先ほどまでいた若宮神社の前の港もよく見えた。
崋山が言った。
「豊玉姫は若宮神社からこの立岩に来ていたんよ」
私は尋ねた。
「それは、海亀を弔うため?」
「そう」
「船に乗って?」
「海亀に乗って」
「年に一度とか?」
「そう」
だから、崋山はずっとこの立岩を見ていたんだ。
豊玉姫は干珠満珠を司る女神。海亀もまた司っていたのだろう。
役目を終えた海亀の終焉の地がここだという。
また、崋山は、
「この島は優しい。豊玉姫がいつくしんでいた」
と何度も繰り返した。

立岩の右手に回って見上げると、こちらからも優しい目をした海亀に見えた。
そして、アリサが岩に登るためのロープを見つけた。
ロープの強度を確かめている様子だったが、どんどん登って頂上から顔を覗かせた。
崋山も、登って行った。
私も……と思ったが、頂上は狭そうだったので、二人が降りてから登ろうと思ったが、機を逸した。
崋山が
「ここから夕陽を眺めたい」と言う。
「そうね、冬なら夕陽を見て、フェリーに間に合いそうね」
と、返事しながら、「冬は寒かっぺ」と考えていた。
帰りもゴロゴロ石に足を取られながら苦戦した。
バスハイクでは、みんな行きたがるかな。
でも、大変過ぎる。
どうしよう。ま、その時のみんなの気分で決めようと考えながら道路に戻った。
(みんな、どうする? フェリーの時間があるからね……)
<20230323>








