2023年 04月 14日
脊翁律の名を継ぐ者 の言の葉
糸島市 綿積神社にて
珊瑚の前で崋山に懸かった女性に私は尋ねた。
「どなた様ですか」
「よくぞ来られました。この時を待っておりました。
三つに分かれた私の魂は、今、臍の緒と共に一つにまとまります。
そして、一体となり、今、この国を覆おうとしている大きな力を打ち祓うべく、八百万の神々、海の神、山の神、すべての神々が立ち上がり、今一つとなる。その最後の神が、生け贄となった私を救い出す。
この国の様々な者たち、ワダツミの血を引く者が私を探しております。
私の姿を。
私が蘇ることを待ちわびている者たちは、すべてワダツミの者たちです。
長い長い時の流れの中で様々なことが起こりました。
しかしすべての事が思い出となり、様々なことがありながらも、今、この時を経て、また一つとなる。今その時を迎えたのです。
今、私がこの地に一神となって戻り、闇の者と戦う神々が立ち上がり、剣の輝きを取り戻して立ち上がるのです。この私の臍の緒と共に。
この臍の緒、三つの分霊を六角形の箱に入れて、私は一つとなりましょうぞ。そして、ワダツミの神の元へ。
私の力とワダツミの神の力とが一つになる時、この地球全体の灰色の雲と取り除くことが出来ましょうぞ。そして、私はその事が終われば、また大海原に戻って行きます」
名前が出ていない。私は念を押した。
「あなたはセオリツ姫ですか」
「セオリツの名を継ぐ者、と言った方がよろしいでしょう。
セオリツというものは、この地球全体を覆う音のこと。
名前の由来はセイ・オウ・リツの三つの漢字からなっています。脊翁律と書いて、セイ・オウ・リツ。
脊翁律という名前は空と海をつなぐ宇宙の神。
この世は大半が海、そして空。その後に地というものが出来上がっているのです。
その古来の、まだ陸地が出来ていない時、海と空とそのすべてのものをつなぐ宇宙の神の名、それがセイ・オウ・リツ。
この国の者たちが私という宇宙神を、国津神、天津神よりも古来の、この宇宙全体がまだ空と海の時に、空と海を培う、その宇宙神として、セイ・オウ・リツと呼んだのです。
人間が出来てきてセイ・オウ・リツ。
この国に来た時、セ・オウ・リツ。
宇宙の言葉を聞ける者が出て来て、セ・オ・リツ。
漢字で名前を付けた人が出て、「瀬織津」に変わって、まるで女神を司る形に変化しました。
私の存在は個ではなく、自然、災害、自然の成り立ち。それがセイ・オウ・リツ。
リツとは川の流れのように自然が移り行く旋律。
森羅万象がリツ。
私の始まり。
人の祈る所に神は神を造ります。
人の祈る所に神は宿る。
ひとしづくの祈りでも神は宿ります。
すべての天変地異もリツ。
まるで旋律のような、時の流れとしてすべての流れをリツと。
また、始めないといけない時が来たのです。
創りなおさねばなりません。
天変地異も世の人々は受け入れなければなりません。
何故なら、この地球は人間のためだけの物ではないからです。
災害で多くの人が亡くなって人間は悲しく泣きわめく。そこから立ち上がる。未来を目指す。すべて過ぎて行く。
そして、またそこから流れて、八百万の神たちはそれぞれの役割を果たし、人間に力を与え、人間を育てる。すべての流れの中で、元の位置に戻す。
それはまるで天の旋律。
天津太祝詞の旋律。
すべて過ぎて行く。
セイ・オウ・リツとは、すべての流れ。
宇宙の流れ。
元の位置に戻すのです。元の姿に戻り、ワダツミと」
私はセオリツに尋ねた。
「造り固めについて、ワダツミの神と話し合いをされるのですか」
「私はワダツミの神とは話をしません。この先々の結果がどうなるか分かりません」
「ワダツミの神は大島に封印されていましたが、七つの珠で封印を解きました。それで終わりではないのですか」
「終わりではなく、最終章です。ワダツミの話を復活させることがメインではなく、私を出すことが最終章です。
代々、八百万の神を名乗る者、あるいは人間で八百万の神となる者がいるのも間違いではありません。
神降ろしをする者は多々あります。巫女の役目として神降ろしの出来る子、それがいつしかセオリツ姫と呼ばれるようになる。そして、今使われている瀬織津という文字になることも。
本当のセオリツとは男でも女でもありません。この宇宙、地球そのものなのです。
ワダツミの神が封印され、私も三方に別れました。
私は封印では無く、身を隠しました。
三つに分かれた分霊として、最後のひとしずくを分けました。ただ、私の本体はあの山の奥へ」
「あの山とは六ケ岳のことですね」
「ええ。あの山に巣食う者を排除しなければなりません。それにはワダツミの力が。
人間の力も要りましょうぞ。腕っぷしではなく、自分が何かを知り、力強く生き抜こうとする力。
その、すべてのもの、自分をも、きちんとした眼で見れる心、それが人間の強さです。
どういう状況であれ、生き抜こうとする者。魂の輝きが力になるのです。
私を三体集め、ワダツミの神の元へ。あとは、私達に任せればよい。
その後、私の本体は大海原の沖ノ島に帰ります。あとは三体集めた時、話をしましょうぞ」
「三体とは、一つは波折神社、そしてあなた様ともう一つ、となりますが、もう一か所は何処ですか。
年毛神社ではありませんか。以前、夕陽が沈む、ワダツミが祀られる所と言われましたが、年毛神社の北にあるアヂメの宮ではありませんか」
「アヂメですね。アヂメと聞こえます」
「そこにはワダツミの宮は無いんですけれど、目の前が海です。
勝島があって、その先に大島が見えていますが、アヂメで良いですね。
じゃあ今日行けます。今は神社がないけれど、行けば分かりますね。
ところで、六角形の箱の中には、もうすでに応神天皇のへその緒が入ってるんですよね。それに加えていいですか」
「応神のへその緒は取り出して、私のへその緒を入れてください。そのまま、ワダツミの所へ。
応神のへその緒は依代に入れて、時が来たら、ジングウの宮へ」
神功皇后を祀る宮は百社以上ある。その中で香椎宮が思い浮かんだ。
「香椎宮でよろしいですか」
「ええ。香椎の宮は神功皇后が唯一、心やすらかに、穏やかに過ごせた場所でした。香椎の宮へ。
ジングウの魂と共に、応神のへその緒を持っていけばよろしい。応神は静かに眠っておられます。
箱には私のものを入れて竜宮へ。大島の全てが終わりし時、私は沖ノ島へ帰ります」
「もともと沖ノ島におられたのですか」
「長い年月をかけて変化をしました。私もそこにずっといる訳ではありません。
ある意味、沖ノ島は宇宙の始まりと繋がっているような場所。
今度はほんとに神宿る島になりましょうぞ。今は空き殿があるだけです。
形で表した、空と海が重なる場所。ラセンの階段がある」
沖ノ島の南にある海底の四本の柱のことだ。
「遠い昔話、そこはワダツミの神の妻の宮殿と聞いたんですけど、それは本当ですか」
「ええ。ワダツミの神の一族が住む屋敷でした。
ワダツミの宮殿とは、人間の意識が一つの頃、一族で一つの国で、とてつもない広さの国が当たり前の頃の、海の中で暮らす者たちの宮殿。
陸地で生きて過ごす者よりも長い年月、人間は海の中で暮らしていたのです。そこから分かれて行った。
そこから分かれて地面で過ごすようになりました。海の底が先なのです。
あなた方は私を見つけました。
一つ一つ。一つ一つ。
君が代のように、小さなさざれ石が岩になるまで、それぞれの分野で、それぞれの輝きを放つのです」
「今あなたが出て来られたのは、また造り固めがあるという事ですか」
「もちろん、様々な神々たちの中には立ち上がる神もいれば、表に出て、あなたたちが頑張っているように動き出している神もいます。
そして、それが最終段階に来たと言うことではないでしょうか。
私は、私の役割を果たすだけです。
私は、そこは他の神々と話をしてません。どういう意向かは存じ上げません。
造り直しがあるかどうか。
その前に、まず人間が人間である事を知る事が大事です。
挑む事も大事ですが、人間である事を知るのが大事です。
人間がどのように頑張っても神とは違う。祈る時は祈る。それぞれの力を発揮する事。
すべて神頼みでは動きません。
もちろん、人間ができることは、神々に比べれば小さなことかもしれません。
小さな一歩が神を、大きな絶大な力を動かすと言うこともあります。
人間が人間というものを知るということ。
そして今、自分ができる事を精一杯やって、今の自分の魂を輝かせること。
逆に言えば、それしかできないのです。
後は、天命を待てばよい。それでは、参りましょう」
と言うと、セオリツは口を閉じ、ゆったりと待つ風情になった。
私は尋ねた。
「この話を書いて、人に伝える必要がありますか」
「これが完結すれば、思いも芽生えるもの。耳から聞いた事はすぐに忘れるでしょう?
心を輝かせればその時でよいのです。
今ここで話したことを、もしあなたの内から、魂から知らせたいと思えばそれはそれでよし。このまま己の心の中だけで、と思うなら、それもよし」
「ヒカリ」 二〇二二年四月九日
<20230414>









