2024年 04月 02日
ことのかたり 田油津姫 運命の歯車が回り出す時
田油津姫は鷹羽の香春岳の麓に兄の夏羽と住んでいた。
母は神夏磯姫だ。母はもともと周防の婆麼に住む美貌の首長だったが、景行天皇に抵抗かなわず、配下になり、香春岳の銅の開発を命じられた。
田油津姫は物心つく頃、周囲の人の態度がどことなくよそよそしいのに気づいた。
ある日、幼馴染たちから、父親は景行天皇だという噂を聞かされた。
幼馴染たちは親が神夏磯姫に付いて鷹羽に来ており、銅山開発で苦労しているのを見ていた。その原因が景行天皇だったため、恨んでいた。
出生の秘密を知った田油津姫は顔も知らぬ景行天皇を恨むようになった。
成人すると、その秘密を抱えたまま、その霊能力から山門県に嫁いだ。
嫁いでみると、そこの首長・葛地女は景行天皇と戦って殺されていた。
その後継ぎとして期待された田油津姫は自分の立場に苦悩しながらも巫女としてその国を守った。
景行天皇も崩御して、その孫の仲哀天皇の代になった。
鷹羽では神夏磯姫が亡くなり、夏羽が跡を継ぐことになった。
母の葬儀と兄の祝いのために田油津姫が里帰りした時だった。仲哀天皇が神功皇后を連れてやってきた。仲哀天皇は自分の甥かもしれなかった。
仲哀天皇は首長の夏羽に、これまでの朝貢に加え、朝鮮出兵の負担を迫った。
夏羽は苦渋しながらも、それを受け入れざるを得なかった。意外な事に、田油津姫は香椎宮についてくるように命じられた。名目は仲哀天皇の叔母なので、その霊能力を生かすためということだったが、実質は質だった。冬の峠道を歩いて行列について行った。
田油津姫は表面上は従順な巫女として神仕えをしたが、一方で天皇と皇后を呪った。
一年後、仲哀天皇が崩御したため、神功皇后は小山田斎宮で秘密の審神者を行った。この時、同行した田油津姫は神功皇后を暗殺しようとして失敗した。
そのまま山門県に逃げて帰ったが、皇后軍が朝倉の羽白熊鷲を討ち取り、その足で自分を討ちに来ていることを知った。
山門軍は葛地女の敵討ちだと、田油津姫を守って皇后軍と戦ったが、敗戦色が濃厚になった。田油津姫は女山に逃げ込んだが、敵兵に見つかって殺された。
兄の夏羽が田油津姫妹を助けようと救援に向かったが、妹が討たれたことを知ると引き返した。
しかし、皇后軍が追って来たため、近くの鍾乳洞に隠れたところを焼かれて亡くなった。この時からその地は夏焼と呼ばれるようになった。
「たぶら」とは過去の北極星、竜座のツバンを祀る祠のことだ。北極星に祈る巫女だったのか。
参照 拙著『神功皇后伝承を歩く』59 老松神社 みやま市 60 若八幡神社 田川市
儺の国の星』p56
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