2025年 03月 13日
創作神楽「玉垂」安曇磯良と神功皇后の物語
創作神楽「玉垂」の演奏を収録した「枯野」(からの)のCDが出ると聞いて、再びその世界に浸っています。
「玉垂」はちょうど二年前に初演を迎えました。
脚本は私が書きました。今日は、あらためてその内容を思い起こしています。
万葉集の歌で構成するという条件があったので、ストーリーを考え、万葉集と古事記の中から適した歌を選びました。
作曲は藤枝守氏です。
「玉垂」は安曇磯良と神功皇后の物語です。
三幕構成になっています。
第一幕 志賀島の沖津宮の前の渚。波の音が静かに聞こえてくる。
男が石笛を拾いました。男が笛を鳴らすと、その音色に魅かれて黄泉の世界から神功皇后が姿を現しました。
神功皇后は海を渡って戦うために志賀島に来て安曇磯良を呼び出しましたが、磯良は来ませんでした。
<神功皇后の歌>
天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ
(万葉集1068番)
あめのうみに くものなみたち つきのふね ほしのはやしに こぎかくるみゆ
(空の海に雲の波が立ち 月の船が 星の林の中を漕いで 見え隠れしている)
第二幕 志賀島の沖津宮の前の渚。波の音が静かに聞こえてくる。
ある男が阿知女作法(御神楽)を歌うと、黄泉の世界から安曇磯良が現れました。阿知女作法とは安曇磯良を呼び出す神楽のことです。
<男の歌>(阿知女作法)
あぢめ~ おお~
安曇磯良は神功皇后の願いを聞いて、干珠満珠を海神(わだつみ)から受け取ると、皇后に渡しました。
<安曇磯良の歌>
妹がため われ玉拾りふ 沖辺なる 玉寄せ持ち来 沖つ白波
(万葉集1665番)
いもがため われたまひりふ おきへなる たまよせもちこ おきつしらなみ
(あなたのために 私は珠を拾おう 沖辺の玉よ 打ち寄せて来い 沖の白波よ)
磯良は神功皇后と共に龍船に乗り、「北を示す星よ」と祝詞(のりと)を唱え、船を出しました。
<安曇磯良の歌>
あへのかたの よみのほし あへのかたの よみのほし
(あへ=北 阿曇星)
(北の方角を教えてくれる星よ 北の方角を教えてくれる星よ)
大海の 波は畏し 然れども 神を祈りて 船出せばいかに
(万葉集1232番)
おおわだの なみはかしこし しかれども かみをいのりて ふなでせばいかに
(大海の波は恐ろしい それでも海神に祈って船出すればどうだ きっと大丈夫だ)
第三幕 大善寺玉垂宮
男が阿知女作法で再び安曇磯良を呼び出すと、磯良が現れましたが、すっかり年老いていました。
<男の歌>
あぢめ~ おお~
磯良は死期を悟ると輿に乗って大善寺玉垂宮にやって来てました。置いたままにしていた龍船を調べ、自分より先に亡くなってしまった神功皇后を悼(いた)み、船を燃やさせました。
<安曇磯良の歌>
天地と 共に終へむと 思ひつつ 仕へ奉まつりし 情違たがひぬ
(万葉集176番)
あめつちと ともにおえんと おもいつつ つかえたてまつりし こころたがいぬ
(天地がある限り 終生共に生きようと思って お仕えしたが、その思いとは違って あなたは先に亡くなってしまった)
燃え残った木材で琴を作り、鳴らすとサヤサヤと響きを立てました。
船がかつて海を渡ったとき、海底の海藻がサヤサヤと立てた、その音が琴の調べに乗って響きました。
<安曇磯良の歌>
枯野を 塩に焼き しが余り 琴に作り かき弾くや
由良の門の 門中の海石に 触れ立つ ナヅの木の さやさや
(古事記 仁徳天皇記)
からぬを しおにやき しがあまり ことにつくり かきひくや
ゆらのとの となかのいくりに ふれたつ なづのきの さやさや
(枯野という舟が壊れたので 燃やして塩を作り、焼け残った木で琴を作った。その琴を弾くとさやさやと響く。由良の門の海の底の岩に立つ 海藻がさやさやと揺れるように)
安曇磯良は神功皇后に導かれて黄泉の世界へと向かいました。
こんなストーリーです。
この時の演奏が「枯野」というタイトルでCDになりました。
<20250313>









