2026年 02月 01日
豊玉姫と山幸彦 ① わたつみのいろこのみや 『古事記』より

『古事記』を訳しました。超訳です。
順番を変えて、豊玉姫の立場からのストーリーに仕立てました。
豊玉姫と山幸彦 ① わたつみのいろこのみや
豊玉姫は海神(わたつみ)の娘で、綿津見(わたつみ)の宮に住んでいました。
ある日、侍女が美しい器を持って水を汲もうと井戸に行くと、井戸に光が差し込んでいました。上を見ると、湯津香木(ゆつかつら)に美しい男が登っていました。
侍女が怪しく思うと、男は「水を下さい」と言いました。侍女は水を汲んで、玉器に入れて男に差し上げましたが、男は水を飲まず、首飾りを外して珠を抜くと口に含んで、唾と一緒に器に吐き出しました。珠は器にくっついて、離れません。
侍女は仕方なく、珠がついたままの器を豊玉姫に差し出しました。
姫は珠を見て侍女に尋ねました。
「もしかしたら、宮の門の外に誰かいるの?」
「はい。井戸のそばの湯津香木の上に男の人がいます。とても綺麗な人です。王様の大綿津見神よりも貴いお方のようです。
その人が水を下さいと言うので差し上げたら、水は飲まないで、この珠を吐き出したのです。取れないので、そのまま持って帰りました」
と侍女は答えました。
豊玉姫は変だと思って門の外に出て、その男を見ると、一目惚れしました。二人はお互いに見つめ合いました。
豊玉姫は戻って父神に言いました。
「門の所に綺麗な男の人がいるの」
それを聞いて大綿津見神が自ら出て見ると、
「おお、この方は天津日高(アマツヒコ)の御子、虚空津日高(ソラツヒコ)ではないか」
と言って、すぐに門の中に案内しました。
ソラツヒコにはホオリノミコトという名前もあります。
大綿津見神はアシカの皮の敷物を八重に敷いて、その上に絹の敷物を八重に敷き、ホオリノミコトを座らせました。
そして沢山の机に品物を置き、ごちそうを並べて、娘の豊玉姫と結婚式を挙げました。こうして三年の間、二人は一緒に暮らしました。
ある日、ホオリノミコトが大きな溜息をつきました。豊玉姫は父神に相談しました。
「三年間、嘆くようなことは無かったのに、ゆうべ大きなタメ息をついたの。何か訳があるのかしら」
父神が婿(むこ)に尋ねました。
「今朝、娘から聞いたが、ゆうべ大きな溜息をついたとか。何か訳が有るのでは? もともと、この宮に来た理由は何だったのか話してくれまいか」
ホオリノミコトは詳しく説明しました。
「私は3人兄弟で一番下です。一番上の兄はホデリノミコトと言います。兄は海幸彦として魚を取り、私は山幸彦として狩りをして毛皮を取っていました。
ある時、私は兄に『お互いの道具を換えてみないか』と持ちかけました。
三回頼んで、三回とも断られたけど、ようやく『ちょっとだけなら』と、交換してくれました。
早速それで釣りをしたのですが、全く釣れなかった上に、釣り針を失くしてしまいました。
その後、兄が
『山サチはお前の道具。海サチは私の道具。さあ、元通りにしよう』
と言って来ました。でも、「一匹も釣れない上に、失くした」と言うと「返してくれ」と言って聞きません。
どうしようもないので、私の十拳剣(とつかのつるぎ)で500本の釣り針を作って、償ったのですが、受け取ってくれませんでした。さらに1000本作って償ったのですが、受け取らずに『元の釣り針を返せ』と言います。
私は困って海辺で泣いていたら、塩椎神(しおつちのかみ)が来て、
『どうして虚空津日高(そらつひこ)さまが泣いていらっしゃるのですか。』と聞いたので事情を話すと、塩椎神は
『よい考えがあります。』と言って无間勝間(まなしかつま)の小船を作って、私を乗せて言いました。
『私がこの船を押し流します。虚空津日高さまはそのまま潮の流れに乗って下さい。すると綿津見神の立派な宮殿に着くでしょう。
その宮殿の門の所に井戸があって、湯津香木が生えています。その木の上で待っていると、海神の娘が出て来て、相談に乗ってくれるでしょう。』と。
言われたままにしたら、この宮殿に着いたのです」
話を聞いた大綿津見神は海中の大小の魚を呼び集めて、尋ねました。
「誰か、釣り針を取った者はいないか」
すると、答える者がいました。
「前に、鯛が喉に何かが刺さって物が食べられないと困っていました。そいつでしょう」と。
そこで鯛の喉を調べると、釣り針が見つかりました。すぐに取り出して、良く洗ってホオリノミコトに返しました。
その時に大綿津見神はこう教えました。
「この釣り針を兄上に返す時に、『この釣り針はオボチ、ススチ、マヂチ、ウルヂ』とまじないを言って後ろ手で返しなさい。
それから、兄上が高い所に田んぼを作るなら、あなたは低い所に田んぼを作りなさい。兄上が低い所に作るなら、あなたは高い所に作りなさい。
私は水を支配しているので、三年間で、兄上が米がとれずに貧しくなるようにしてみせよう。
もし、兄上がこれを恨んであなたに攻めて来たら、潮満珠(しおみつたま)を出して溺れさせ、もし困らせ過ぎたら潮乾珠(しおひるたま)を出して、生かして懲らしめなさい」
そう言って、潮満珠と潮乾珠を授けると、すぐに和邇(ワニ=海亀)たちを呼び集めて、尋ねました。
「今から虚空津日高さまが上つ国(葦原の中つ国)にお帰りになる。それぞれ何日で送り届けられるか申せ」
それを聞いて、めいめいが自分の背丈から計算して言うと、一尋和邇(ひとひろわに)が答えました。
「私は一日で送って還って来られます。」
「それなら、お前が送るように。海の中を渡るときは、御子さまに怖い思いをさせてはならぬぞ」
と言って、ホオリノミコトを亀の背に乗せて、送り出しました。
亀は約束通りに、一日で送りました。
ホオリノミコトは亀を返す時、身に付けていた紐のついた小刀をはずして、お礼に亀の首に付けて返しました。
それからは、その一尋和邇は刀を持っている神という意味で、サヒモチノ神と呼ばれるようになりました。
さて、ホオリノミコトは大綿津見の神が詳しく教えてくれた通りにまじないを言って、釣り針を兄のホデリノミコトに返しました。
そのために兄のホデリノミコトはだんだんと貧しくなって、心がすさんでホオリノミコトを攻めようとしました。そうすると、ホオリノミコトは潮満珠を出して兄を溺れさせ、助けを求めると、潮乾珠を出して救いました。
こうして悩ませ、苦しめた後、ついにホデリノミコトは頭を地につけて、ホオリノミコトに言いました。
「私はこれからは、あなたの昼夜の守り人となって、お仕えします」と。
こう言う訳で、ホデリノミコトは隼人の祖となって仕えるようになりました。そして隼人の舞という形で溺れた時の様子を今に伝えています。
(つづく)
う~ん。大人になって読む神話ってなんだかなあ。
<20260201>









