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ひもろぎ逍遥

忖度なんかしないぞ 『癒しの万葉集』-人生の四季を歌うー

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梅花の宴
 大宰府(だざいふ)で正月に催される宴に九州の各地から官人達が集まりました。この日は歌を披露する日でもありました。新春の庭に出て梅の花や柳の小枝を冠に挿して興じた後、宴が始まります。いよいよ御題が出される時が来ました。

 主催した長官は漢詩や漢文の中の美しい光景を語って雅(みやび)な世界に誘い、語り終わると、おもむろに歌の御題を出しました。

それは「落梅」でした。

 出席していた男達は驚きました。正月なので目出度い題が出るだろうと心づもりにしていたのです。取り澄ました歌の席はざわつき、「うっそー」「まじか」という反応であふれました。長官は出席者が新春の歌を準備しているのを承知で、期待を裏切る御題を出したのです。予想通りの反応を見た長官は、心の中でにやりとしました。

 この長官とは大伴旅人(おおとものたびと)のことです。この日、旅人が引用した漢詩文の中から「令和」の元号が生まれました。

 参加者は題に応えて「落梅」を詠もうと頭をひねりましたが、困難でした。ほんの今、盛りの梅を見たばかりだったのですから。

 とりあえず「梅」を読みこんだ歌が次々と披露されていきましたが、散る梅とは言えないものばかりでした。

 梅は盛りじゃないか

反旗を翻す人が出てきました。                    葛井(ふじい)廣成(ひろなり) 820番

梅の花 今盛りなり 思ふどち 挿頭にしてな 今盛りなり 

うめのはな いまさかりなり おもうどち かざしにしてな いまさかりなり       

梅の花は今が盛りだ 気が合う同士 冠に挿したさ 
梅は今が盛りだぞ
〔梅の花は今盛りじゃないか 梅を挿したばかりだぞ〕

✿「挿頭(かざし)」とは冠に着ける花などの飾りのことです。ほんの今、盛りの梅の花を冠に挿したばかりなので、ほのかな甘い香りも漂っています。

第二句と第五句で「今盛りなり」を二度も詠み込んで現状をさらし、「落梅」という御題に抵抗しました。

これを詠んだのは筑後国守の葛井(ふじい)廣成(ひろなり)です。葛井廣成は大宰府に通う時には大伴旅人に会えるのを楽しみにしていました。御題に抵抗して「盛り」を強調できたのは、二人が遠慮のいらない間柄だったからでしょう。

『癒しの万葉集』-人生の四季を歌うー より


by lunabura | 2026-04-12 09:47 | 万葉・日本書紀の風景 | Comments(0)

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