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2018年 10月 06日 ( 1 )

ワダツミ18 桜谷若宮神社2 繁栄の種 イワナガ姫



 ワダツミ18  

桜谷若宮神社2 

繁栄の種 イワナガ姫

 
  
 
私たちは北九州を離れ、糸島に向かった。
菊如も途中で合流して、四人になった。

細石神社で預かった「繁栄の種」を納めるのは船越桜谷の若宮神社だ。





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今年は桜の開花がかなり早いが、それでも3月24日なので谷あいの桜に花が開いているのか、心もとない。






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しかも、桜の木があるのかどうかも分からなかった。
神社には桜はつきものだが。








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しかし、それはすぐに見つかった。
薄暗い谷の中、光を求めて横に横にと伸びていった一本の桜。
その枝先に花が咲いていた。







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その幹の表皮は桜とは思えぬ様相をしている。

私は宝箱から「繁栄の種」を両手で受け取った。
「あれ?暖かい」
細石神社では涼しかったエネルギーはほんのりと暖かくなっていた。

それを桜の根元に納めた。
すると、太陽の光が急に強く差し込んできた。






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役目を果たせた印だ。そう思った。




そのあと、私たちは本殿に行って改めて参拝をした。

崋山が裏手の崖をずっと見ている。
そして何者かが懸かった。それはイナリだった。

菊如が尋ねる。
「いつからここに?」
「1872年から。
ここを建て直し、われらは要らぬ存在。川べりに御社があった」
そう言うと、山に向かって狼のように遠吠えをした。

「ここの事を教えてくださいな。
どなたかいらっしゃる?
もともとどなたが居られたの?」

そう尋ねると、イナリは去り、代わりに女人が懸かった。
それを見て、菊如が挨拶をした。

「はじめまして。菊如と申します。どなた様ですか」
「わたくしはこの祠の地に休むイワナガでございます。
あのイナリたちはこの奥に入らぬように守っている者でございます」

次に私が尋ねた。
「桜の木に納めた繁栄の種について教えてくれませんか」
「わたくしの思いと神々の思いと暗い森の中。
その中に一厘の花が咲く思い。

コノハナサクヤ姫と共にこの地に舞い降り、あの木に始まるのでございます。
全国に回り、この地に戻り、再びあの木から始まるのです。
暗い世に花を咲かすコノハナサクヤ姫。

花が咲くことを、この地よりコノハナサクヤ姫が始めるのでございます。

すべてが始まり、暖かい日が始まり、寒くて花の咲かぬところに花が咲き始めます。日本の暮らし。
この地を守り、日本の国が乗り越え、また花を咲かせるのでございます。

必ず、どんな花も、その花を咲かせます。
この周期をここからすべて見守っているのでございます。

今日植えた種はさまざまな人と共に、暖かな空気と共に日本に広がっていきます。
わたくしはここに眠ります」

イワナガ姫はコノハナサクヤ姫と共にこの地に舞い降り、あの桜の木から花を開かせていくのだと言う。

この谷は薄暗くて寂しい。
その暗さに意味があった。

陰から陽へ。
冬から春へ。

自然の周期には陰も必要なのだ。


陽極まって陰に転ず。
夏が極まると冬に向かっていく。
来る年、来る年、イワナガ姫とコノハナサクヤ姫はこの木から始めるというのだ。

桜谷の持つ意義は人間の想像を超えていた。


菊如はかつて一粒万倍(いちりゅうまんばい)の日に
ここに来るように告げられて祈祷をしたことがあるという。
その時の物語もここから始まった。






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さて、この若宮神社には古計牟須姫命と木花開耶姫命が祀られている。

崋山に懸かっているイワナガ姫に、この女神たちのことを尋ねた。
「ここには古計牟須姫と木花開耶姫が祀られていますが」
「コノハナサクヤ姫はこの地にはおられません」

「富士山ですか」
「この糸島のサクヤ姫はわれらの思いの集合体でございます。
桜の花が、桜前線が、少しずつ北の方に上っていく、まるで天女のように上っていく、暖かい空気、それらを含んだものがサクヤ姫でございます。

また、コケムス姫とイワナガ姫はこの地では同じものと言われますが、違います。
コケムス姫は762年(あるいは762年前)、小さな祠に祀られてからでございます。

元はこの国ではございません。
今で言えば、ここより海を渡り、半島の左下、姿は目も髪も黒い。
怒っているような言葉を話す所にいました。

ある人が石に御魂を封印して、ここに連れてきたのです。
イワナガと似ていると思って。
いつしか同一視され、イワナガ姫となり、ここに祀られ、山の奥におります」

「厭な思いはしてはおりません。
神々の思い。
私はこの地の者ではございませんから、ひっそりとしております」

最後はコケムス姫の言葉のようだった。

木花開耶姫と並んで祀られているからだろう、古計牟須姫はいつしかイワナガ姫と同一化されていったという。
確かに名前からして、働きは別のものだ。

古計牟須姫について尋ねた。
「コケムス姫とは?」
「苔はどんな所にも緑を生やし、増えていきます。
何も無い所から生え、どんどん子孫を増やす、それがコケムス姫でございます。

子孫繁栄。
この地には、子を生めない方が多くいたので、石に願をかけました。

子を欲しいという人々の思いが、漁師の子が生まれてほしいという思いが、詰まった石でございます。

それが一つの形になって、子を生めない人が他所からも、ここに祈りに来るようになったのでございます。私の力ではございません」

ここには陰陽石が祀られている。この石のことだろう。
「子が生す(むす)」という意味に変化したようだ。

しばらくしてイワナガ姫が語った。
「コノハナサクヤ姫は人々に春を呼び込む神でございます」

これを聞いたとき、「春」には時代的に一度冬を迎える意味が隠されているのではないか、そんな疑問が生じた。
北からのミサイル実験が連続して、不穏な空気が漂っている日々だった。

「その前に日本の冬が来るのですか」

「いつも危険と隣り合わせでした。
そのために神々が動き、今までは安泰だったのです。
新しい時代に新しい考えがある人たちがこの国を動かします」

「どうにか安泰だったということは、これからどうなるのですか。
戦いがあるのですか」

「表向きで騒ぎ、奥で脅威を振るう者、陰でひっそりとねらう者、この地を狙う者がいます。
が、案ずることではありませぬ。
日本はいざという時はしっかりと立ち上がります。
神々が動き、しっかりと守ります。

あなたたちのように、神々の思いを受け取る者たちがひっそりと、この地を守ろうと現れるのです。
代々そうして来ましたから。
静かなこの地でそれを願っております。
永遠に続くように」

そう言ってイワナガ姫は去っていった。




20181006



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by lunabura | 2018-10-06 19:22 | 「ワダツミ」 | Comments(0)
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