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ひもろぎ逍遥

2018年 10月 31日 ( 1 )

ワダツミ32 ワダツミの神2 セオリツ




 ワダツミ32 
 
ワダツミの神2 セオリツ
 
  
 
複数のウガヤと二人の玉依、庸(よう)と和葉(わよう)。

志登神社では豊玉姫は双子を生んだと言ったが、
庸の証言では豊玉姫は子供を生めなかったという。

豊玉姫の言葉は嘘だったのか。

神話で豊玉姫の子と言われたウガヤフキアエズは庸の子。

建前を語る女神と隠された真実。
幾重にも謎が残る。

それを見極めるのが審神者(さにわ)なのか。

「誰が一番知っている?」
「ワダツミの神やろ」

二人は早くから水の気配を感じていた。
すでに部屋は海の底と重なり合っていたのだ。

「海の中に話に来いやろ」
と崋山は決心して、海の底の宮殿に入って行った。
「海の底の宮殿にワダツミの神が帰って来ている。奥にいる」


崋山にワダツミの神が懸かった。
アグラをかき、右手のこぶしで膝を叩いて上機嫌だ。

「おお、よう来た。よう来た。そして我に何をお尋ねか」

身を乗り出して話を聞こうとした。
既に私たちの話を聞いていたのだろう。

ワダツミの神は語り出した。
「一人は我が手元においた。我の力を受け継ぐもの。
この竜宮と共に我が命を狙う者、現れり。

その時、我は豊玉姫を陸に上げ、我が孫をこの竜宮と共に海に隠し、我はこの海を守らんとした。
この海を汚す者、我が物とする者と戦い、時は流れ、人間の力で封印されし」


「ウガヤフキアエズのもう一人はどうなったのですか」
「豊玉姫が二人、子を生んだ。
その二人の内、一人が我が手元にあることを恐れ、二人を西と東に分け、まるで人々に追われるように見せかけて逃がした。それもすべて我が手元にいる子を守るため。わが血を絶やさぬため」

ワダツミの神はいまだに豊玉姫が双子を生んだと言っていた。
玉依が生んだ子なら、ワダツミの神の血統ではなくなる。

話が良く理解できなかった。
とりあえず西と東について聞いた。

「西と東とは九州内のことですか」
「ああ。わが地は、この場所は変わらぬ。この竜宮の地は変わらぬ。
入り口は様々あるが」

「竜宮の地は志賀島の元宮ですか」
「ああ。我が封印されし時、陸上にも宮殿があったが、人との戦いを決めた時、つぶしてしまった。海底の分しか残っておらぬ」

ここで菊如が見えていたビジョンについて尋ねた。
ビジョンとは元宮の浜に白い衣を来た人が打ち上げられている姿だった。
ウガヤフキアエズではないかと噂していたのだ。

「打ち上げられた白い衣の人はウガヤフキアエズですか」
「あの場所ではウガヤは死んではおらぬ。あの遺体は男か?」

「女?」はっとして言った。「庸の?」
「白い着物。覆いかぶさるようになった死体。ウガヤはあの地では死んではおらぬ」

しかし、庸は辛子色の衣だった。
すると、庸は姉にウガヤを渡したが、その場で二人諸共に殺されたのかもしれない。

庸は砂浜に埋められたと言ったが、人間を埋めるには道具がいるし、時間が掛かる。

嬰児を置いて逃げるような状況でそのような時間は無いだろうと思っていたが、二人とも死んだというのが案外真実に近いのかもしれない。


「赤坂で死んだのは?誰ですか?」
「赤坂で死んだのはウガヤフキアエズ。我が孫は三人」

―え?話が違う。さっき二人と言った!

菊如は言った。
「女の子が一人」
「三人とも男である」

「一人は男の子として育てた」
「おお、それを表に出すか」

ワダツミの神は隠していた。大事なものを。子供は三人でそのうち一人は女子。

「どういう意味ですか」
「我の血に豊玉姫。我らの種族を増やす方法の違いは、我らは今のそなたらと違う。
我らは卵、そう、鮭という魚と同じように卵を産む。女が卵を産む。

我がその卵に我の力を降り注がせる。すると卵がかえる。
ただし玉依はその機能が退化しておる。人間の子のように。

豊玉姫は人間の女性のように形は出来たが、中身までは出来なかった。
それでも子を生むことを望んだ。

この海と地をどうしても結ばねばならなかった。
我らの時代は子を成すことが唯一の力を結ぶ方法だった。
愛だの恋だの、この時代にはない」

ワダツミの一族は卵生だったという。いったいどれだけの進化の時を要するか。
これはなかなか受け入れ難かった。

しかし、それよりも、今日のテーマは複数のウガヤのことだった。
話がそれないように、スルーした。

「豊玉姫は子供を生まなかったのですよね」
「庸の子は三人だ。そのうちの一人をもちろんウガヤフキアエズとして育てた。
庸の子は我の血筋。直接我の血ではないにしろ、ワダツミの血。
豊玉姫のように純血とはいかぬまでも。
本当のウガヤフキアエズは、我の手元に戻って来た」

―三人?話が分からない。私は念を押した。

「豊玉姫と山幸彦の子ではないんですよね。では、ウガヤの本当の父と母は誰ですか」
「豊玉姫は子は生んではおらぬ。

三人のウガヤはワシの子。母はそなたではない。
豊玉姫と三人のウガヤフキアエズ」

ついに隠していた事が出て来た。
「そなた」とは私、すなわち「ナグム」
三人はワダツミの子なのだ。それなら直系となる。

すると、ウガヤの名が付く者が何人も、何世代もいたのだろう。
一人だと思っていた私がこだわり過ぎでいたのだ。


菊如が
「『セオリツ』が聞こえるのですが」
と言った。それを聞いてワダツミの神が答えた。
「我が隠した子、そなたセオリツ、とよく分かったな」

「そういうことですか」
「原始セオリツ」

「その子をセオリツと言うのですか」
「そうだ。海を守る者」
しかし、これもまだ隠し事があった。

(つづく)


20181031




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by lunabura | 2018-10-31 22:59 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

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