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ひもろぎ逍遥

2018年 11月 12日 ( 1 )

ワダツミ34 ワダツミの神3 ハヤアキツ姫



 ワダツミ34  

ワダツミの神3

ハヤアキツ姫

 
  
 


新しい状況になったが、元の問題に戻らねばならない。
ワダツミの神が封印された事情を明らかにしたかった。

サワラビメのミコトは「ウガヤを殺したためにワダツミの神の怒りに遭って全滅した。そのためにワダツミの神を封印した」と言っていたが、実際どうなのか尋ねることにした。

「サワラビメのミコトはあなたによって船が沈められたと言っていましたが」

これを聞くと、ワダツミの神は急に強い口調になった。
「たまたま嵐が来たのだ。我の力ではない。勝手に我の力のせいにしているのだ。この地は島国。嵐もくれば大雨も降る。それを全部我のせいにしているのだ」
と言った。

「あなたを封印したのは誰ですか」と尋ねると
「サワラビメの一族だ。巫女がいる。七人の巫女と祝(はふり)だ。
そのうち3人は男、4人は女だった。

白い装束を着て、我らの竜宮、すなわち志賀島の入り口に立ち、我の力を封じるため、すべての門を閉じ、我を海底から引きずり出し、あの大島の祠に封印した。その7人の封印を使う者、大島におる。今でも」
と答えた。


「その7人は封印が解けたのは知っているのですか」
「あの封印が解かれるのを快よく思わぬ者もいるし、知らない者も多い。ただ、封印を掛けた者の子孫は今もなおあの地で生きている。

竜宮の入り口は沢山ある。海から入って来られぬというだけだ。
我が復活したからといって全て盤石とは言えぬ。
天の神、地の神、海の神が揃い、力を合わせなければならない。
それほど日本が危険だということだ」

私は話を原点に戻した。
「赤坂で死んだのは誰ですか」
「我ら一族は地に上がる必要があった」
とワダツミの神はまた、はぐらかした。

「西に行った人はどうなったのですか?」
「うまく安曇と合流し、生き長らえた」

「子供はいたのですか?」
「玉依との子を望んだが、安定の時代ではなかった。自分が生きるのに精一杯だった。戦う力を持たぬ安曇。しかし我の血筋が一人は確実に要る」

― 赤坂のウガヤも宇土に逃げたウガヤも子がいない。するとワダツミの直系は絶えたことになるではないか。謎がどうしても解けない。

この時、菊如が、
「あなたの手元の子の名は、本当にセオリツですか?」
と尋ねた。これに対してワダツミの神は答えなかった。菊如は
「本当の名はハヤアキツ姫ですね」
と言うと、ワダツミの神は「そこまで観えるか」と驚いた。

「男として育てられたのですね。ハヤアキツ姫は」と菊如が言うと、
「ああ。海を守る姫だ。今、我はハヤアキツ姫と共に竜宮におる。そなたは姫が観えておったか」と観念した。

「セオリツ姫とは?」と菊如が尋ねると、
「セオリツ姫とは固有名詞ではない。人の名前でもない。物の名前でもない。現象の名のことだ」

私は尋ねた。
「何の現象ですか」
「入ってはならぬ島に船が入ろうとして沈没したり嵐が来たりすると、それをセオリツ姫が守ったと人々は言った。
セオリツ姫はこの大海原すべてだ。
大海原すべてがセオリツ姫だ。

水平線がうすいピンクに染まる時がある。あれがセオリツ姫だと人々は言う。
ピンクに染まると嵐が来る。空もピンクに染まると雨が降る。あれをセオリツ姫の衣と言っている」

「ハヤアキツ姫とは?」
「隠す必要があった。我の命も狙われている。豊玉姫と我の命を狙うやつがいる。この子は守らねばならない」

「狙う者とは誰ですか」
「目の黒い者とこの地の者。我がいなくなれば思い通りに魚が採れると思う者。
巫女の言うことを信じた。戦うことを好きな者は自分たちで考えることも忘れ、うわべでは神の声を聴くと言って、占いをさせて踊らされ、戦いを仕掛けてくる」

「それは物部ですか」
「ああ、すべて戦いで片付ける。どうして我らが安全に生きて行けようか」


こうしてワダツミの神がハヤアキツ姫を隠していたことが出て来た。そのために幾重にも嘘を語り、辻褄が合わなくなっていたのだった。

話を聞いていると、段々逸れて行ってしまう。

想像を絶する興味深い話ではあるが、謎の原点に常に立ち戻らねば膨大な異世界の情報の海に漂う事になる。

問題は何か。
それはこの物語の始まりである大国主神社の豊玉姫だ。
何故、そこにいたのか。
何故、崋山に懸かり大島経由で帰っていったのか。
その辺りに絞られよう。

豊玉姫は干珠満珠を守るため、代々生まれているという。
そうすると、大国主神社にいた豊玉姫が何代目なのか、明らかにせねば状況が分からないことになる。

また、突然出て来たクグマは「豊玉姫らしき女人がヌタと共に来た」と言ったが、それが豊玉姫だったのかどうかは確定していない。勘違いの可能性もある。

面白いが、踏み込むことに躊躇する世界でもあった。



(つづく)


20181112

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by lunabura | 2018-11-12 21:01 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

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