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ひもろぎ逍遥

2019年 07月 04日 ( 1 )

松浦川1 大伴旅人のあからさまな嘘に山上憶良は何と答えるのか…

松浦川

大伴旅人のあからさまな嘘に山上憶良は何と答えるのか…






大伴旅人は唐津の松浦川まで出かけていった。

松浦川の鮎釣りと言えば神功皇后の鮎占いで知られている。
衣の裾から糸を引き抜いて米粒を付けて川に垂らすと鮎が掛かったという。

この後、地元では女性は釣れるが男性は釣れないという伝説が出来た。
そのほとりにある玉島神社の岩に干珠満珠を置いたことから、神社の社号を「玉島」というようになった。


旅人がここにやって来ると、美しい娘たちが鮎釣りをしていた。家や名を尋ねても「家も無い漁夫の子です」と笑って答えるだけだったので、歌を詠んで贈ると、思いがけず返歌があって、その素養に驚いた。

しかも、「あなたと共寝をしたい」と詠めば「並みの方でないので、私も恋しく思います」と大人の対応をしてくれる。



このエピソードを、仙女が「夫婦になって共に年を取るまで過ごしましょう」と求婚してきたという「あからさまな嘘」の話に作り替えて、旅人は憶良に送り付けた。

長々と記した序文には中国の神仙の話を織り交ぜ、「憶良よ、どれほど背景の漢籍が分かるか」、という挑戦状のようにも見える。

海人の娘たちとの問答歌も、最後まで読んでいくと、旅人はホントに松浦に行ったのか疑わしくなって来るほど、歌のトーンが下がっていく。



今日はその問答歌の一部を。 皆さん、どう思う?


松浦川に遊ぶ序

折があって松浦縣に往って逍遥し、たまたま玉島の澤に臨んで遊覧していると、魚を釣る女子(おとめ)らに会った。

花のような顔の美しさは比類なく、光り輝く姿は比べる者がなかった。

眉は柳の葉を描いたようで、頬は桃の花が開いたようだ。

心意気は雲をしのぐほど高く、雅(みやび)さは格別だ。僕(われ)は尋ねた。

「どの郷(さと)の誰の家の方ですか、もしかしたら仙女ですか」と。娘らは皆微笑んで

「わたしたちは漁師の家の子、草庵に住むいやしき者で、郷もなく家もありません。お答えするほどのこともありません。ただ水に親しみ、山を楽しむだけです。

ある時には洛浦(らくほ)(ここでは松浦川)で魚をうらやみ、ある時には巫峡(ふきょう)(ここでは玉嶋峡)で寝転んで霞を眺めます。

今、偶然に貴い方に出会い、感激して真心を伝えております。
これよりどうして夫婦の契りを結んで共に老いるまで過ごさずにおられましょうか」と言った。

下官である私は「おお、つつしんで芳命を承ります」と答えた。

この時、日は山の西に落ち、黒馬は去ろうとした。ついに思いを述べて歌を詠んで贈った。


853番
漁する 海人の児どもと 人は言へど 見るに知らえぬ 良人の子と  
あさりする あまのこどもと ひとはいえど みるにしらえぬ うまひとのこと
 (漁をする海人の子と あなたがたは言うけれど、 見れば分かります 貴人の子だと)

答える歌
854番
玉島の この川上に 家はあれど 君をやさしみ あらはさずありき
 (玉島のこの川上に家はありますが あなたには気恥ずかしくて明かしませんでした)


蓬客(よもぎのように彷徨う自分)が更に贈る歌三首(のうちの一首)

857番
遠つ人 松浦の川に 若鮎釣る 妹が手本を われこそ巻かめ
とおつひと まつらのかわに わかゆつる いもがたもとを われこそまかめ
 (松浦の川で若鮎を釣る あなたの手本を われこそ巻きたいものだ)
 遠つ人:枕詞 

 
娘(おとめ)らが更に応えた歌三首

858番
若鮎釣る 松浦の川の 川波の 並にし思はば われ恋ひめやも
(若鮎を釣る松浦川の川の波のナミではないが、並みの方だと思うなら恋しく思わないでしょうが)

後の人の追ひて和ふる詩三首 帥の老(おきな)  「後の人:旅人のこと」
862番
人皆の 見らむ松浦の 玉島を 見ずてやわれは 恋ひつつ居(お)らむ
(人が皆見ている松浦の玉島を見ずに私は恋しているのだろうか)


11首のうち、5首を紹介。
どこから、どこまでがホントか分からない。ちなみに旅人は66歳。

こんな困った手紙を送られた憶良はどう返事をするのか。

明日、訳してみようっと。
<20190704>





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by lunabura | 2019-07-04 22:46 | 万葉・日本書紀の風景 | Comments(0)

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